(カルロス・アイエスタ + ギョーム・ブレッション/@ CHANEL NEXUS HALL)
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7月3日、選挙戦真っ只中の日曜日、銀座はさまざまな候補者の街宣で実に賑やかだった。私も数人の候補者の演説を聞いていたのだが、そこで会った友人に強く薦められたのが、シャネル銀座店4階のCHANEL NEXUS HALLで開かれている、東京電力福島第一原子力発電所事故によって無人地帯となってしまった被災地を収めた写真展「Retrace our Steps ある日人々が消えた街」だった。
この日は気温もうなぎ上り。涼みたい気分もあって軽く足を向けたのだが、圧倒される展覧会だった。誘ってくれたその友人は、この展覧会を見た後、食事が喉を通らなくなったという。
撮影したのはカルロス・アイエスタとギョーム・ブレッションという2人の写真家のユニット。彼らは、被災地である福島県相双地域に何度も足を運び、撮影を行ってきた。
展覧会は5部で構成されている。
「光影」:ある日80,000人が消えた街に残されたものとは
「悪夢」:無味無臭で目にも見えない放射線という脅威との共存
「不穏な自然」:時の経過とともに建物をも覆い尽くしていくもの
「パックショット」:現代のポンペイの遺物とでも言うべき取り残された品々
「回顧」:我が家に帰ることへの思い
その写真は独特だ。「ドキュメンタリーとアートの融合」とでも言うべきか。
「回顧」では、かつてその場に住んだり慣れ親しんだ――しかし今は打ち捨てられた場所に帰った被災者の姿が写されている。混乱した状況と続いていく日常の落差が一枚の写真に収められている。
また、「不穏な自然」では、際限なく 繁茂する 雑草に、自然を制御する試みである核技術の破綻によっての、自然からの復讐のように思えた。
起こってしまった原発事故の「不可逆性」を痛感せざるを得ない。もう戻れないのだ。
印刷されたもののほか、会場を暗くしてカラーポジの後ろから投光する展示だったり、その地で収められた「音」が流れたり、数々の写真展示に臨場感を高める工夫がなされている。
長く被災地に通い取材を続ける日本人ジャーナリストや写真家もいるが、被写体へのリクエストなどで、撮影者が外国人であるが故の“距離感”が功を奏しているようだった。また、銀座のど真ん中で「フクシマ」の展覧会を実現させた、シャネル株式会社のリシャール・コラス社長の物心両面での支援も特筆すべきだろう。
原発事故は終わっていない。そして、忘れてはいけない。――そう心から実感させられる展覧会だった。私が百万言を費やすより、ぜひ足をお運びいただきたい。
(仲松亨徳)
※ 「Retrace our Steps – ある日人々が消えた街 カルロス アイエスタ+ギョーム ブレッション 写真展」は、東京都中央区銀座3-5-3シャネル銀座ビルディング4階のシャネル・ネクサス・ホールで、7月24日(日)まで開催。入場無料。無休。
本当に「フクシマ」のことを思うと、胸が掻きむしられる想いです。現在の日本の欺瞞と矛盾がこの「フクシマ」と「オキナワ」に、特に凝縮されています。こんなことまでして世界経済第3位でドヤ顔してていいのでしょうか?