双葉社
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FIFAワールドカップ(W杯)ブラジル大会もいよいよ来週金曜日に迫ってきた。日本は果たして予選を突破できるか、下馬評もかまびすしい。書店にもそうした特集記事の雑誌が並んでいる。
『サッカー批評』68号も本田圭佑の横顔が表紙。「日本は強くない」と挑戦的な特集の見出しが大書されているが、この号の第二特集は「差別問題を考える」。3月8日のJ1浦和-鳥栖戦での差別横断幕事件を受けての特集だ。
大仁邦彌日本サッカー協会(JFA)会長と森哲也編集長の特別対談では、タイトルにもあるように「日本サッカー界から差別をなくすために」何をすべきかを語り合っている。大仁会長によると、何が差別なのか具体例を挙げて認識させるマニュアルをJFAで作ろうとしているそうだ。
木村元彦「差別横断幕問題の本質を問う」では、「JAPANESE ONLY」の文言が誰に向けたものなのかを、厳しく問う。「なぜ報道は厳罰を招いた最も重要な『意図』について触れずに『日本人専用』という文言の一般論に矮小化して問題の原液を薄めようとするのだろうか?」
森雅史「ピッチ上で起きた問題から考えること」では選手間に存在する差別をレポートし、同じ著者の「サッカーは憎しみを生み出すのか? ~在日本朝鮮人蹴球協会の取り組み」では、イギョラカップなど日本と朝鮮の高校生によるサッカー対戦から生み出されるものを取り上げている。
竹田聡一郎「『We Were REDS』と『We Are REDS!』 ~『JAPANESE ONLY』の横断幕から考えるサポーターとクラブの適正距離」では、今回の事件を機に、逆に統制されるサッカーへの疑問が呈される。
この特集ではないが、差別を明確に拒絶する村井満Jリーグチェアマンへのインタビューや、小田嶋隆の連載「サッカー星人」などでも、今回の事件への言及があった。
2006年W杯ドイツ大会で、フランスのジダンがイタリアのマテラッツィに頭突きした事件も、トラッシュトークと呼ばれる言葉による挑発ということで落着したが、当初は人種差別かと問題になった。
人種、民族、宗教…世界のさまざまな人々が集まるW杯開催というタイミングで提示された、日本のサッカーと差別問題を考える好企画だ。
(仲松亨徳)