マガ9レビュー

川村康文 編・高橋真樹 写真・文/大月書店

 先日、小型風力発電機の製造・販売を行っている開発型ベンチャー企業の方と話をする機会があった。同社の垂直軸型発電機の発電量は、水平軸型の大型風力発電機のそれに比べたら小さいものだが、風向きに関係なく360度の方向から風に対し安定した発電を行い、場所をとらず、景観も損ねない。しかもリニアモーターの応用による非接触型ゆえに騒音も低周波も出ないので町中での設置が可能なのである。将来的なエネルギーの地産地消が夢物語ではないことを実感させる技術だった。

 こうした再生可能エネルギーの研究開発に感心していた矢先に手に取ったのが本書である。タイトルのとおり、親子が一緒に夏休みの課題に取り組む感覚でできる風力発電機の作り方を写真と文で説明したものだ。

 上述の垂直軸型の風力発電機の基本原理は、本書の「工作4 ジャイロミル型風車・つばさ発電機」と同じなのだろう。これは色画用紙でつくったつばさを4つ組み合わせて風を受けて、コイル(単2電池大のものにエナメル線を1000回巻き付けてつくる)に通した金ぐしの両側にネオジム磁石を3個ずつつけたものが回転することで電気を生むのである。

 本書はそのほか、うちわを使ったプロペラ型風車や紙コップを吹いて回すもの、半円形のアルミ板や半分に切ったバケツを使ったサボニウス型風車など5つのモデルを紹介する(最初に風力と風向きがわかる簡単な風速計の作り方も教えてくれる)。

 細かい作業に四苦八苦しながら完成させた発電機がLEDのライトに光を灯すときのうれしさは格別だろう。編者である川村康文・東京理科大学教授、制作者の井筒理・同大学大学院・川村研究室研究員、そして写真と文の高橋真樹氏らが楽しく本書をつくった様子がうかがえる。読者を愉快な気持ちにさせてくれるのは、同じく大月書店から刊行された高橋氏の『自然エネルギー革命をはじめよう』と変わらない。

 本書で紹介される発電機、実用からは遠いが、自分で電気がつくれると思える人と、そうでない人とでは、心の持ちように少なからぬ差が生まれると思う。これからの人生でじたばたしないで済む能力のひとつを本書が授けてくれる、というと、少々オーバーかもしれないが。

 この素敵な企画は、2太陽光発電、3小水力発電、4太陽熱・バイオ発電と続く。どんな作り方を私たちに教えてくれるのか、楽しみに待ちたい。

(芳地隆之)

 

  

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