- 特別企画 -

『SEALDs 民主主義ってこれだ!』(大月書店)
出版記念トークイベント・特別レポート
〜その2〜

11月28日、『SEALDs 民主主義ってこれだ!』(大月書店)出版記念として、西荻窪の書店兼コミュニティスペース「信愛書店en=gawa」にて、トークイベントが行われた。出演は『SEALDs 民主主義ってこれだ!』を制作したSEALDs出版班と選書プロジェクトのメンバー、ゲストにSEALDs KANSAIの野間陸さん。司会は選書班のかりんさんが務めた。書籍の出版選書プロジェクトから、大阪ダブル選、音楽のことまで、さまざまな話題があがったトークイベントのレポートを2回に分けてお届けする。

かりん(是恒香琳)日本女子大大学院2年、SEALDs選書プロジェクト・デモ班・コールセンター
のまりく(野間陸)同志社大学2年、SEALDs KANSAI
ちあき(植田千晶)日本大学2年、SEALDs出版班
杏珠(須川杏珠)獨協大学1年、SEALDs出版班・選書プロジェクト
さち(今村幸子)日本大学3年、SEALDs出版班・選書プロジェクト・コールセンター
内山(内山望)武蔵野美術大学2年、SEALDs出版班・デザイン班・選書プロジェクト・コールセンター
さくら(安倍さくら)明治学院大学3年、SEALDs出版班・DOMMUNE班

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〜話題はいよいよ、本づくりのことへ

●メンバー自身の手で作った『民主主義ってこれだ!』

かりん ここからは出版班のメンバーに本づくりのことを聞いてみたいと思います。この本は、SEALDsの出版班が中心になって、執筆もそうだし、編集とかデザインも学生が主体でやったんですよね。収録するスピーチはどうやって選んだんですか?

ちあき SEALDsの理念って、一人ひとり個人が自分で考えて判断して、行動しろってことなんですけど。その象徴が、SASPL時代の栗栖由喜さんのスピーチの「作られた言葉ではなく、刷り込まれた意味でもなく、他人の声ではない私の意思を、私の言葉で、私の声で主張することにこそ、意味があると思っています。私は私の自由と権利を守るために、意思表示することを恥じません。そして、そのことこそが私の不断の努力であることを信じます」っていうフレーズで。これをまず入れるということと、SEALDsのメンバーのいろんな個性が見えるようにしたい、安保だけじゃなくて貧困問題とかにふれたスピーチも、関西や沖縄のも入れたいとか。本当はもっと入れたいスピーチがたくさんあったんですけど、ページの制約もあったのでこうなりました。

かりん 確かに、これは外せないよねっていうスピーチばかりだよね。

のまりく 俺、奥田くんの中央公聴会(9月15日)のスピーチ聞いて、初めてSEALDsやっててよかったと思ったの。始めて半年後にようやく(笑)。っていうのは、彼があそこで話した言葉っていうのは奥田くんだけの言葉じゃないんだよね。あの中にはたくさんの人の言葉、過去のスピーチとかで語られた言葉が散りばめられていて、そういう路上で語られた言葉を彼があそこで語っている。

かりん そうなんですよね。ヒップホップのサンプリングにも似てて、元ネタがある。誰かの言葉を借り物にするんじゃなくて、自分の中で消化して自分の言葉にして口にする。そういうのが見えるから私は、みんなのスピーチを聞くのがすごく好きなんですよ。SEALDsに入る前は音楽でノッてるだけのイメージだったんだけど、むしろスピーチで度肝を抜かれた。先週の誰かが言った言葉を、別の場で織り込んでいたりして、言葉って公共財だよねっていうのが実感できる。この本でもそういうのがすごく見えて、いいスピーチが選ばれてるなと思います。

●タイムカプセルとして残せる本に

かりん 本を作る上で、苦労したこととかは?

ちあき 現実の政局とあわせてどんどん内容が変わっていったから、すごく大変だった。

内山 もともと2014年の末から企画はあって、SASPLの記録を作ろうって話だったのが、安保国会が始まって、進行中の現実を記録する本になってしまった。台割(ページ配分を決める表)も作っては直し、作っては直しみたいな感じで。

ちあき 同時進行で新しい出来事がどんどん起こるし。8月30日の国会前占拠の後、みんなが打ち上げしてるお店の隅で内山さんがノートパソコンでデザイン作業やっていたり。

内山 おかげで臨場感ある本になったとは思います(笑)。

ちあき 最後の高橋源一郎さんとの対談も、7月に一度収録したのに、それじゃダメだってことになって強行採決の後に録り直したんだよね。

かりん でも録り直してよかったよ。この対談が最後にあることで、いっそう価値のある本になった。

ちあき 本を作るなんて初めてだったから手探り状態で、相当無茶もしたと思います。今から思うとこうすればよかったという部分もあるんですけど、やっぱりこの2015年の出来事を、その年のうちにまとめて出せたことはよかったなって。この本がひとつの記憶装置みたいになって、将来いつでも思い出せるというか。上の世代の人たちがずっとやってきた運動をSEALDsが受け継いで、未来に伝えるタイムカプセルみたいなもの。本に収録されてる千葉(泰真)くんのスピーチにもあるんですが、特攻隊員を目指す元予科練(海軍飛行予科練習生)だったおじいさんがSEALDsのデモを見て「死んでいった仲間たちが蘇ったようだ」と投書した。それもタイムカプセルみたいだなって思った。

のまりく あの投書は泣けたよね。うれしかった。

さち これから先、安保だけじゃなくていろんなテーマで行動しようと思う人が参照できるものにしようっていうのは最初の企画のときからあったよね。ハウツーではないし、固まったイデオロギーでもないんだけど、考え方を伝えるっていうか。

ちあき そう。希望というか、行動する勇気を、未来の誰かに伝える記憶装置になればいいなって。形のある紙媒体になったことで、受け継がれていくんじゃないかって思います。

杏珠 『民主主義ってこれだ!』ってタイトルなんですけど、別に正解が書いてあるわけじゃないんですよね。自分たちの頭で、民主主義ってなんなんだろうって考え続ける、そのきっかけを提示しているだけで。

かりん 私たちは「民主主義ってなんだ?」って考えて、実際に行動して、「これだ!」と思ったものをこの本で示してみた。だけどそれが唯一の正解だとは思わない。じゃあ、あなたはどう考える? っていう問いかけになっていると思う。

●「SEALDs選書プロジェクト」でめざしたもの

かりん 「SEALDs選書プロジェクト」のことも話してもらえますか。

内山 メンバーが強く影響を受けた本を選んで、基本15冊というブックレットを作って、本屋さんや大学生協に置いてもらっています。SEALDsっていうとデモのイメージが強くて、あいつらは騒いでるだけだって思ってる人もいると思いますが、実はすごく勉強して、本もたくさん読んだ上で路上に立つことを選んでるんだってことを知ってもらうのと、民主主義や立憲主義ってなんなのかを考えるきっかけにしてもらえたらと思って始めました。

かりん 本屋さんの風景を変えたいっていうのもあったよね。これまでずっと、韓国とか中国をヘイトする本とかばかり並んでいたから。大学の友達でもそういう本読んでいる子がいて、それはお店にたくさん並んでいれば手にとっちゃうわけですよね。そんなもの読むくらいならもっといい本読もうよ、これなんかお薦めだよっていう。
8月の終わりくらいから動き始めたんですけど、9月の怒涛の日々でリーダーだった子がいなくなってしまって、なぜか私がリーダーに。だから、私が選んだ本はないんですけど…。

さち 最初は、中心メンバーと選書メンバーで何冊かを挙げて、そこから基本15冊に絞りました。SEALDsは安保法制に反対してるだけの組織じゃなくて、他の問題にも関心を払ってるとわかるようにバランスを考えて。

内山 メンバーが路上に出るきっかけになった本みたいのもあるよね。

かりん 今後は、個々人の志向やバックグラウンドがわかる個人選書とか、ある共通のテーマについてそれぞれが選ぶ選書もやってみたいと思っています。ブックレットは1万部作ったんですけど、あっという間になくなってしまって。今はウェブサイトからダウンロードできるようにもしています。新年早々に増刷も予定しています。ページも増やします。

(SEALDs選書プロジェクト)

●クールに、淡々と、やるべきことを

(会場から質問)参院選に向けて、今後どう訴えていくべきか。安保法のことを選挙民に忘れないでいてもらうためには?

さち ちあきちゃんがTwitterで書いてたけど、戦争のことでも辺野古の基地問題でも、いつその悲劇の当事者に自分がなってもおかしくなかった、だから個人の問題じゃなくて公共、みんなの問題なんだって。いま自分のまわりに苦しんでいる人がいなくても、次に知り合う友達がその当事者かもしれない。そういう感覚を共有できたらいいのになって思う。

かりん SEALDsって別にすごいエリートの集団じゃないし、ごくごく普通の学生の集まりで、だけどそういう普通の学生たちが頭寄せ集めて、必死で考えてここまでやってきたってことは自信持っていいと思う。

さち すごくポジティブっていうわけでもなくて、やるべきことを毎日淡々とやってるだけなんだよね。嫌な未来が見えて、それが現実化するのが嫌なら、やるしかないよねっていう。大学の単位とか就職の心配するのと同じレベルで、政治のことも考えているだけ。

かりん そうだね。トイレが汚くなったら掃除するし、お風呂に入る前にはきれいにする。そういう日常の一部として。

さくら 聞いてて、もっとクールにやるのが大事だなって思った。「こんなに頑張ってるのにわかってくれない」とかじゃなくて、最終的にめざすものをきちんと見据えて、そのために必要な行動をとっていく。そのために伝わるデザインにすることもすごく重要だし、身近な人間関係の中で伝えていくことも大事で。友達とか職場の人にこういう政治の話をするのが一番ハードル高いんだけど、それを越える勇気を一人ひとりがもつ。キレイ事に聞こえるかもしれないけど、それが必要なことだって思います。

 

  

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『SEALDs 民主主義ってこれだ!』(大月書店)
出版記念トークイベント・特別レポート[その2]
」 に2件のコメント

  1. @kazenosaburou より:

    買います!
    源一郎さんとの本は読みましたよ!

  2. 宮坂亨 より:

    「民主主義ってなんだ?」「俺だ!」の気概で自立した存在で連帯と運動をすすんでいきたいと思う、ミドルズの特攻隊長(自称)です。若いと目立つけどミドルズもオールズも他にもいっぱい「謀反人」は居ますからねー。

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