- 特別企画 -

【スタッフコラム】

福島原発さいたま訴訟報告(3)

福島原発さいたま訴訟を支援する会
北浦恵美

 福島原発さいたま訴訟の第6回目となる次回口頭弁論期日は、7月1日(水)午後2時半からとなります。

 自主避難者に対する住宅の無償提供の打ち切り方針、「帰宅困難区域」を除く地域の避難指示解除方針、避難慰謝料の打ち切り方針…。ここにきて、政府と福島県が相次ぐ“被害者切り捨て方針”を発表しています。決して許されることではありません。未曾有の福島原発事故の放射能汚染によって避難を強いられている皆さんは、怒りと悲しみと、これからの生活への不安・困窮に襲われています。

 彼らに対して、「そろそろ自立を」という言葉が投げかけられていると聞き、耳を疑いました。「自立」という言葉がこんな場面でも使われるとは。避難者の方々は、事故前までは地域でそれぞれの生活を営んでおられました。その生活をある日突然、根こそぎ奪われたのです。生活を奪った張本人が補償もせず「4年も経ったのだから」と自立を促す。それが今、行われていることです。

 4年が経ち、なんら被害は補償されず、ますます生活に困窮している方々がおられます。自主避難者への無償の住宅提供は、自主避難者へのほぼ唯一の支援策ですので、この支援がなくなってしまうと、自主避難者は生活に困窮してしまいます。このことは、自主避難者に帰宅を強制させることになります。
 2012年に成立した「原発事故子ども・被災者支援法」で、国は、避難先での住居の確保に関する施策を行うこととされています。「被ばくをする危険のない生活」を選択することができるよう、国や福島県はこの法の規定に従って支援を継続すべきなのです(福島原発さいたま訴訟を支援する会ニュース第5号より)。

 『ママレボ』という「福島原発事故による放射能汚染から子どもたちを守ろう!」と立ち上がった母親たちの活動を伝える冊子のブログに、お母さんたちの声が載っています。ぜひご覧ください。

 さて、4月に行われた福島原発さいたま訴訟第5回期日においては、書面のやりとりの確認ののち、代理人陳述が行われ、国が一般の津波対策指針よりも低い東電らの津波設定をそのまま認めてきた責任を追及しました。
 1997年に策定された地域防災計画における津波対策の手引きでは、「将来想定しうる最大規模の地震・津波を想定して防災対策を行うこと」とされていましたが、電気事業連合会(電事連)は、その想定を緩和させる修正を求めました。そして、2002年に発表された「原子力発電所の津波評価技術」では、記録に残っている既往津波を想定の基本とし、福島沖については、過去に大規模な津波が発生した記録がないとして、津波波源を想定しなかったのです。これは上記の国の省庁指針から大きく後退するものでした。
 万が一にも災害を起こさないことを求められるはずの原発の津波対策の指針が、一般の国民向けの指針よりも後退するものだったというのです。これを基に、東電は対策を怠り、その結果、取り返しのつかない原発災害を引き起こしました。
 裁判では、国と東電らの原発事故に対する極めて重大な責任を一つひとつ丁寧に論証しています。

 裁判後に行われた報告集会では、参加された一人ひとりから話をお聞きすることが出来ました。
 原告の方からは、「再稼働なんて、あれだけの被害を起こして、とんでもないことだ。避難指示を解除されたけれど、公式に発表される値は低くても、自宅で測るとそれよりもずっと高い。嘘ばかりだ」という怒りの声があがりました。
 傍聴に参加された方々からは、「いつも気にかけていたけれど、ようやくこれました」「映画『日本と原発』の上映会でこの訴訟を知り、一人でも…と思い、来ました」「何か私にもできないか、と思って来ました」「原発を止めたい、その思いで、足を運びました」「裁判の支援で一番大切なことは、傍聴に参加すること。そう思って参加しています」など…。

 小さな想いが集まって大きな力となり、原告、弁護団、裁判を支え、そして、みんなで支えあっていること、そのことに希望を強く感じた1日となりました。

 裁判では、期日を重ねるごとに、原告の責任追及に対する国や東電の不誠実な態度があらわになってきています。
 そして相次いで発表された被害者切り捨ての政策。

 ぜひ、たくさんの人で傍聴席を埋めて、多くの市民が、真の被害に向き合おうとしない国や東電の態度を許さないことを示しましょう。
 皆さま、どうぞ足をお運びください。

≪福島原発さいたま訴訟第6回口頭弁論及び報告集会≫

とき:7月1日(水)午後2時半開廷  さいたま地裁101号法廷
 是非傍聴にご参加ください! 
※傍聴券が配られる予定です。2時までにさいたま地裁B棟前においでください。

※裁判終了後弁護団主催の報告集会があります。
場所:埼玉総合法律事務所3階会議室
内容:口頭弁論期日の説明、原告側の主張の概要

〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/08/26 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと

 

  

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