- 特別企画 -

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portrait上原公子(うえはら・ひろこ)
宮崎県生まれ。法政大学大学院修士課程中退。元東京・生活者ネットワーク代表、東京国立市市会議員、水源開発問題全国連絡会事務局、国立市景観裁判原告団幹事を経て、1999年5月、国立市長に立候補し当選。2期8年務め、2007年4月に退任。
著書に『〈環境と開発〉の教育学』(同時代社)『どうなっているの?東京の水』(北斗出版)など。『マガジン9条』 の発起人の一人。現在、自治体議員政策情報センター長。

●今展開している署名集めは、
法律で定められた直接請求運動です

 現在「原発都民投票条例制定」の直接請求運動が東京都で展開中です。これは、「原発の是非を問う都民投票」を実現するため、「都民投票条例」の制定を求めた、直接請求(*)のための署名活動です。横浜で行われた脱原発世界会議でもブースを出し、署名をお願いしていたので、目にした方もいると思います。

*直接請求: 住民の発意により、直接に地方公共団体に一定の行動をとらせる参政権の一つであり、地方自治法で認められている。

 でも何だかよくわからない、「直接請求運動」って、他の署名活動とどう違うの? という質問もよく聞かれますので、ここで簡単に説明しておきます。 

 市町村合併のための住民投票は、全国ではかなり実施されてきましたが、東京都ではこれまで都民投票を実施した経験がありません。そこでまず住民投票を東京都が責任をもって実施するための、「都民投票条例」を作る必要があります。住民投票の実施は、「地方自治法第74条」によって、有権者(選挙権を持っている者)の50分の1以上の署名を集めると、都民が知事に条例制定を求める権利を認めています。これが条例制定のための直接請求であり、有権者の50分の1以上の署名が集まれば、知事は都民の要求する条例案をどんなに嫌でも知事名で議会に提出をしなければいけません。(ただし知事の考えを意見書として議会に出すことは認められています。)

 それだけにこの署名集めには、いろいろ厳しい制約があります。2ヶ月以内という期間に膨大な署名を集めなければいけませんし、署名簿についても正しく有権者名が書かれているかなど、選挙管理委員会が厳しくチェックをすることになっています。そこがまず、普通の署名とは違うわけですが、これは「直接請求運動」という、法律にのっとった、主権者の権利行使なのです。

 まずは、都議会に都民投票条例を作らせないと、原発都民投票は実施することができません。法定数の署名が集まったところで、議会で可決するかどうかはわかりません。そう、都民投票実施のためのハードルはかなり高いです。失敗したらどうするの? 都民投票をやったところで、原発推進派が多数だったらどうするの? そういった質問をされることもあります。
 しかし私は、福島第一原発の事故が起こってから今まで、東京電力の経営陣はおろか、これまで原発を推進してきた政治家、日本の原発は絶対に安全だと言い続けてきた学者、安全のお墨付きを与えてきた裁判官など、権力者は誰も責任をとらず、心からの謝罪もせずに頰被りを続けていることに対して、本当に怒っています。怒っているのはみなさんも、同じだと思います。
 だから日本の存続にかかわるような大事なことを、あのような無責任な人たちに決めさせるわけには、もういかないのです。

●無責任な権力者に任せておくわけにはいかないのです

 憲法前文に『政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する』とあります。今、まさに主権者である私たち一人ひとりが、誤った道に進んできた政府を正し、主権者である私たちが「これからどうするのか?」を決める時ではないでしょうか。

 私も事故後、福島をまわってきました。福島原発から半径20キロの所には、立ち入り禁止の検問所があります。その検問所の向こうにも季節はめぐりやってきています。今は厳しい冬ですが山河は今も息づいています。しかし人間たちはそこに入ることができません。まるで自然の怒りを買い拒否されたように感じます。
 その光景を見た時、私たちのこの国に、人が立ち入ってはいけない、住んではいけない、そんな場所が生まれてしまったことに、私は改めて打ちのめされる思いをしました。私たちはもう二度とこんな悲しい経験をしたくないし、未来の子どもたちにもさせてはいけない。
 そのために私は、私たちがやれることは何でもやりたいと思って今動いています。「失敗したらどうするの?」という気持ちでは何も生まれません。そういった政治的な無関心が、権力者たちの無責任な行動を許してきたとも言えるのです。主権者としての行使をさぼってはいけないのです。

 だからこそ、私たちの決断を、この都民投票運動で示したい。東京は確かに大都会ですが、日本全国よりは小さな単位です。地方自治は民主主義の学校と言われているように、一人ひとりの政治参加が社会を作っている、それを今回の直接請求運動で実感しても欲しいのです。

 原発都民投票を実施して、もし、推進派が多かったらどうするの? と聞かれることもあります。その時の、答えは明らかです。原発は消費地の東京に作るということです。都民は、福島の人たちに対し原発を、また引き受けて下さいとは、まさか言えないでしょうし、引き受けてくれるはずもありません。ですから、原発がまだ必要だと考える人は、東京電力の原発は、全て消費地の東京に作るという覚悟をした上で、「原発継続賛成」に投票して頂くしかないのです。自分達で決めるということは、一人ひとりが責任を取る覚悟をするということでなのですから。

 東京都民の方は、どうか署名に協力して下さい。まわりの方、福島に想いをはせながら、この運動に参加してください。私たちにできる全ての力を出して、この国の行方を私たちが決めましょう。

☆今展開中の「原発都民投票」についての情報はこちらから。
http://kokumintohyo.com/branch/
http://tomintohyo.blog.fc2.com/

 

  

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