- 特別企画 -

【スタッフコラム】

6月18日(水)福島原発さいたま訴訟、
第1回期日(さいたま地裁 14時)とその支援のこと

福島原発さいたま訴訟を支援する会・準備会
北浦恵美

 「あれから3年の月日が経ち、実際に被害にあわれた方々に寄り添った思いを、誰もが共有しているとは言い難いのが実情ではないでしょうか。 この訴訟によって、少しでも多くの人たちが今も続く苦しみについて知り、考える機会になればと願っています」
(福島原発さいたま訴訟を支援する会呼びかけ人 十文字学園女子大学短期大学部 小林実准教授)

 福島第一原発爆発により、とるものもとりあえず埼玉県に避難してきた6世帯16名の方々が、避難から3年後、国と東京電力を被告とする損害賠償請求訴訟を提起した。
 私も、冒頭の呼びかけ人の言葉と想いを一つにして、この訴訟の支援に関わることになった。

 きっかけは、地元の産業廃棄物の環境汚染問題に取り組んできた中で、その裁判の弁護団の一人から、声をかけられたこと。電話でこの話を聞いた時、私にできるのか、と逡巡した。これまで、原発反対のデモや署名に参加するなどしてきたが、いつも声をかけられて参加する側。そんな私にも、何かできるのなら。被害者の方々の今も続く苦しみについて、もっと知らなければ。そう思った。

 避難から3年たっての提訴、この、3年という月日が持つ重い意味を、支援に関わる私たちは、想像することしかできない。

 訴状ではこう記されている。少し長いが引用する。

〈本件事故は、突然原告らに筆舌に尽くしがたい困難な避難生活を強い、住み慣れた土地での平穏な生活を奪うだけでなく、それまで培ってきた人間関係、就労就学環境、その土地の習俗など、それら一つ一つがその人の人格を形成し、あるいは、これを支えてきた要素であり、これらが不可欠のものとして有機的に絡み合って構成されていた生活環境(コミュニティ)を破壊した。その喪失感や孤独感は計り知れず、本件事故は、この意味でも深刻な被害をもたらした。
 また、原告らを含む多くの被害者は、本件事故により、放射線被ばくによる健康被害がいつ現実化するか分からないという恐怖・不安にさいなまれる日々を強いられている。目にも見えず臭いもなく五感で感じることのできない放射線につき、「どの程度被ばくをしてしまったのか」、「健康被害がいつか出るのではないか」という恐怖や不安を一生涯にわたって抱き続けなければならない。本件事故は、原告らを含む多くの原発事故被害者の人格的利益を根こそぎ侵害したと言える〉

 そして、原告らが失ってしまった「ふるさと」について〈「ふるさと」とは、地域の自然や社会そのものであり、家族との生活であり、自己の生業であり、知人友人との人間関係であり、趣味のサークルや地域の祭りなどの総体である。すなわち、個々の構成要素に分解することのできない、生活の場・生活基盤の総体が「ふるさと」なのである〉。
 原告らが、長年、さらには幾世代も積み重ねて作り上げてきたかけがえのない基盤であった「ふるさと」は奪われてしまった。
 原告の中には、困難極まる状況の中で自死を選んでしまった被害者の遺族もいる。生活再建に苦しみ戸惑う高齢の方も多い。訴えを起こしたことを周りに知られたら、子供がいじめをうけるのではないかと心配だ、と話す方もいる。そんなことが、と言葉を失うが、これまでの困難な経験から搾り出された言葉だ。私たちの社会の現実だ。

 私たちは、被害者の方々がこの3年受け続けてきた被害全てを想像することしかできない。けれど、想像し、被害の声を聞き、知り、考えること、そのために行動することを決して止めてはならない、と思う。私も、そのどれか一つでもできる限りのことをしたい。

 全国各地で、現在、原発事故の被害を訴える訴訟が起こされている。現状の東京電力の賠償基準はこの未曾有の被害に対して全く不十分であり、国も東電も被害を過小に評価し、自らの責任に真摯に向きあおうとしていない。この訴訟は、被害者自らが止むに止まれぬ思いで立ち上がったものであり、①国と東電の責任の明確化、②真の生活再建に足る損害賠償請求 ③事故原因の究明と再発防止 を求めている。

 国は、事故から3年経った今、事故を忘れたかのように、原発再稼働への道を進もうとしている。
 一方で事故から3年経った今、苦しみ続けて、訴訟に立ち上がる被害者の方々がいる。

 福島原発さいたま訴訟は、6月18日午後2時から さいたま地裁にて第1回期日が開かれる。原告の被害陳述も予定されている。口頭弁論終了後、報告集会、支援する会の結成集会も予定されている。
 裁判所が、原告の方々の切実な想いを真摯に受け止め、権利回復の支えとなり、憲法理念に忠実な審理をすることを求めたい。

 そして、たくさんの市民がこの裁判を注視し、原告団を応援していることを示すために、私たちは、溢れるほどの傍聴者で法廷を埋め尽くしたいと思っています。どうぞ皆様のご協力をお願いいたします!

≪福島原発さいたま訴訟第1回口頭弁論及び報告集会≫
とき:6月18日(水)14時  さいたま地裁101号法廷
 被害の実情を訴える原告陳述を予定しています。是非傍聴にご参加ください!
※裁判終了後15時頃から弁護団主催の報告集会があります。
場所:埼玉弁護士会館
内容:口頭弁論期日の説明、訴状全体の内容について、原告側の主張の概要

≪「福島原発さいたま訴訟を支援する会」6/18結成集会≫
とき:6月18日(水)16時頃~(上記報告集会終了後)
場所:埼玉弁護士会館
内容:支援する会結成について
主催:福島原発さいたま訴訟を支援する会準備会
連絡先:Email:apply@fukusaishien.com

〈これまでの関連コラム〉
→ 2017/03/15 福島原発さいたま訴訟報告(10)
→ 2016/08/03 福島原発さいたま訴訟報告(9)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(8)
→ 2016/04/06 福島原発さいたま訴訟報告(7)
→ 2016/01/20 福島原発さいたま訴訟報告(6)
→ 2015/11/18 福島原発さいたま訴訟報告(5)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(4)
→ 2015/06/24 福島原発さいたま訴訟報告(3)
→ 2015/04/15 福島原発さいたま訴訟報告(2)
→ 2015/02/11 福島原発さいたま訴訟報告(1)
→ 2014/11/26 福島原発さいたま訴訟に思うこと
→ 2014/05/28 福島原発さいたま訴訟、第1回期日とその支援のこと

 

  

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