3月17日に福島県郡山市で開かれた、「ふくしま集団疎開裁判」のことを世界に訴えるためのイベントにお呼ばれしたので走って行ってきましたよ!
しとしと雨が降る中、イベントが行なわれた男女共同参画センターのお向かいの空き地をガイガーカウンター(日立アロカメディカルPDR-111)でひと測り! してみると、1.8μSV/h。わー、草ぼうぼうの空き地だからかな、でもけっこう高いねぇ、と言うと、郡山市民の方が「今日は雨だから水で遮蔽されてけっこう低いほうだよ」とのこと。あ、そうなの?
(ちなみにその方と後で、別の公園の茂みを一緒に測ったら、私のも彼のも1.6μSV/hで、「わーおんなじ! 校正きちんとできてるねぇ」と喜んだけれど、笑いごっちゃないわ!)
さて、ふくしま集団疎開裁判のことをご紹介しましょう! 昨年、郡山市内の小中学生14人が「安全な場所で教育を受ける権利」を求めて、福島地方裁判所に仮処分を申し立てたこの裁判、私も何となくしか知らなかったけれど、このイベントは裁判の弁護士の方々が企画されていたので、詳しく知ることができました。わかりやすくまとめてくださったのを書きますね。
(ほんとは当事者の債務者、債権者という表現なんだけど、わかりやすく原告、被告という言葉で説明してくださいました。)
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☆原告:14人の小中学生が求めたこと
郡山市に対し、14人の原告が空間放射線量が年間1mSV以下の安全な環境の地域で教育を受けられるように避難することを可能にすること。
(あれ? もっともな権利だよね?)
☆被告:郡山市が求めたこと
原告の申立を却下すること。
(あ、そうなの? つれないね!)
☆原告の主張
ア、原告らが通う7つの学校は「郡山合同庁舎」の空間線量の値から推計。
(別紙にグラフがついてございました)
①2011年3月12日から8月31日の空間線量の積算値は7.8〜17.16mSV
②2011年3月12日以来、1年間の空間線量の積算値は12.7mSV〜24mSVと推定。
③裁判の審理終結日(2011年10月末)から年間1mSV以上と推定。
(んー、正直いうと、空間線量の積算だけでは難しいだろうな…チェルノブイリは空間線量とベクレル数で避難地域を決めたけど、日本はそうじゃないからね)
イ、チェルノブイリ事故で旧ソ連とロシア等3国が定めた住民避難基準を郡山市に当てはめると、原告らが通う学校周辺は、昨年10月末の時点で、全て移住義務地域に該当(別紙の汚染マップがついてございました)。
(そうなんだよね、でも、これを言うと「福島はチェルノブイリほどひどくないよ!」的なことをよく言われたものです)
☆被告の主張
すべて不知です!!
(ん? ふち? つまり「知りません!」てことでした!)
ここで解説!
裁判では、主張を「認める」か「否定する」のどちらか。けど、ときどき「知らない」という答弁もあるんだってさ。「積極的に争うこともしないけど、相手の主張を認めるつもりもなーい」という態度。消極的だけど、結局争ってることになるから、主張が認められるかどうか、証拠により判断するんだってさ。
☆被告の反論
第一の反論: 2011年6月7月に実施した、原告が通う学校で積算線量計で測定した結果によれば、空間線量は0.08〜0.2μSV/h
第二の反論: 学校滞在中の年間推定被曝線量について。
滞在時間を一日8時間、年間200日と仮定すると
0.08μSV×8時間×200日=0.13mSV
0.2μSV×8時間×200日=0.32mSV
いずれも0.1mSV以下。
☆原告の再反論
第一の反論に対して: 積算線量計を携帯したのは子どもではなく、教職員。子どもが校庭ですごすとき、教職員はコンクリートの校舎内ですごすことが多いのは実態であり、測定結果≠子供の被曝線量。
(そうなのさ! 去年、どれだけこれを文科省に追及したか! 放射性物質が濃縮されやすい滑り台の近辺や、砂場や、茂みや、建物の隙間に、学校の先生は、行かないでしょう? それとも毎休み時間、低学年と一緒に遊ぶ先生に積算線量計をつけて頂いたっていうの?)
第二の反論に対して: 登校日は登下校に1時間かかり、帰宅後は自宅から出ないもの、休日は一日3時間を屋外で過ごし(これに関しては、後でもの申す。)その他は自宅ですごすものとして計算。
①学校滞在時間の被曝線量が0.08μSV/hの場合。
(計算式略)年2.5mSV
②学校滞在時間の被曝線量が0.2μSV/hの場合。
(計算式略)年6.3mSV
そしてさまざまな証拠、証言、意見書などを提出。
裁判所の判断は…?
却下!!
裁判所の判断がふるっています。
全文をお読みになりたい方はこちら!
1.原告の申立とは何かっていうと…
14人の子供の避難を求めてる、と主張するけど、その子供たちと同じところに住んでいる子供たちも全く同じ条件でしょう? だから結果的に郡山市内の小中学校に通う約3万人の子供たちも避難させてって言ってんでしょ?
じゃあ、郡山市の小中学校の教育活動を全て差し止めることを求めてるとみなしたよ。
2、そこから考えると…
郡山市内の約3万人の小中学生がみんな集団疎開をしたいと思ってるとは限らないよ。14人の原告は自分が避難したいことを理由に、関係ない他の子供の教育を差し止めることを求めることになってるよ。
なので主張を認めるため、避難を認めるためには、生命の危険が切迫していることが必要だよ。
3、内部被曝について。
14人の小中学生について、具体的な内部被曝の有無と程度は明らかにされてないよね。
(そりゃそうだよ、去年、どれだけ内部被曝をきちんと評価してよ、とあちこちで追及しまくっていたか! 「脱ってみる?」読者のみなさまならご存知のはず!)
4、3・11以来の過去の被曝について。
「過去の被曝」自体は、本件申立により防止できないよね、だから考慮する必要ないよ。
(はい? 今から避難しても過去の被曝は防げないからって、考える必要ないってどういう意味?)
5、生命身体に対する切迫した危険性の発生。
100mSV未満の被曝をして、晩発性障害の発生確率のデータは無いよね、ま、被曝はしないにこしたことはないけど。そして4月19日の文科省の通知では年間20mSVが暫定的な目安だったよね。
過去の被曝とあわせて、年1mSVを超える被曝が見込まれるとしても、切迫した危険性は認められないよ。
6.損害を避ける代替手段について(避難の代わり)
子供たちには引越し・転校の自由があるから、郡山市が子供たちにムリヤリ郡山市で教育を受けさせているわけではないよ。だから郡山市が子供たちの権利を侵害してるわけじゃないよ。
引越しにより、子供たちは損害を避けることはできるのだからね…
7、以上から、原告:子供たちの申立には理由が無い!
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えぇ、まぁけっこう驚きましたこと。
チェルノブイリで避難したけど、郡山で避難しない理由を要約すると、
「だってまだ命にギリギリじゃないじゃん!」
「だって、14人認めたら、他の3万人も避難させなきゃいけないじゃん!」
みたいなとこでしょうか?
このイベントでは短く裁判を劇で表現したあと、ゲストの方々からの意見(ここに私たちは呼んで頂いたの)を聞き、そしてその後、お客さまがた全員でそれぞれ適当に分かれてグループセッション。
このね、グループで分かれたときが凄かった!
ケンパルと私は分かれて別のグループに加わったんだけど、みなさん、少し話し出されると、それぞれ、全く止まらない勢いで喋り続ける!
――郡山の方々はなかなか、放射線のことはお話ししにくいって聞きましたけど?
「だからね、ここでは安心して喋れるんですよ!」
あぁ、そうなんですね…
ケンパルのグループで、奥さまと子供さんを自主避難させたパパさんがいらして。
「身内を避難させたから、ということで会社でいろいろ言われ、肩身が狭いんです。今日は一人で来ました」
このグループ討論の話の尽きなさが衝撃的でした。
そして、もう1つお聞きして驚いた話!
郡山市では子供の屋外活動の制限がまだ続いているんだよね、そりゃそうか、危ないもの。
でも、数字をお聞きするとビックリするよ!
公立の保育所:0〜2歳が15分、3歳から就学前は30分以内。
公立の小中学校:屋外活動を1時間以内、部活動を2時間以内。
すると、去年の秋に子供たちが運動不足になっている、とのことで、郡山市内に大型室内遊戯場ができたそうです。
こちら。
まぁ、そりゃね、屋外活動制限が15分以内とか30分以内とかね、短すぎるよね…
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と、この郡山市の屋外活動制限のお話と、大型室内遊戯場の話をいわき市と南相馬市の仲良しにしたら、「全然知らなかった!」とのこと。そうなの? こういうのってあまり大きなニュースにしてくれないんだよね、復興、除染はわりと大きく扱われるんだけれど。
という例として、1つ。
新聞社から取材の依頼がきて、それが「脱原発を発信する芸人!」というテーマだったので、記者さまにお願いしました。
――脱原発はもちろん大切なんですけど、今は私たち、脱被曝が一番だと思っているんです。だから、脱原発じゃなくて、脱被曝ではいけませんか?
記者さま「なるほど、単に企画を書いただけでしたので、脱被曝でいきましょう」
と、いったんスンナリいったんだけれど。
しばらくして電話がかかってきて…
記者さま「マコさん、ごめんなさい…。一応、念のため上司に確認したら、脱原発はいいけど、脱被曝は扱いが難しいというので、取りやめになってしまって…」
――えええ、そうなんですか? ビックリしました!
記者さま「私も驚きました。こういうことがうちの紙でもあるのかと…。紙面では警戒しすぎて、及び腰になることもある、とは思っていましたが、こんな形で…本当にごめんなさい。もう一度企画を練り直します」
と、おっしゃって頂きましたが、ちょっと萎えましたん。脱被曝はダメで「被曝なんかしてませんよ、安心ですよ」のほうは載るのねぇ。
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郡山にも仲良しができて、郡山に来たら絶対、電話して! というスナイパーやお医者さまなど頼もしい仲間ができました。
――でもさー、1〜2μSV/hのとこがゴロゴロあるってやっぱり線量高いねー。
スナイパー「ほんと、今日は雨だから線量抑えられて低いほうだよ? 0.9以下になったら、0がついてるからなんかすっごい低く感じちゃう。もう、マヒしちゃって」
――あ、今、私も0.3とか0.4とか見たら低ーい! って思っちゃうな…
スナイパー「そうそう、でもよく考えたらそれでも以前の10倍くらい高いんだよね!」
むー、飯舘村の仲良しにも言いたいけど、慣れとあきらめは、やっぱりダメだよ!
そして、福島はもちろんだけど、福島県以外の汚染も心配です。
千葉のホットスポットのチビッコたちが心配だ! と連絡をくださったお医者さまがたと今、連携しています。ということは、宮城や茨城や栃木や岩手のホットスポットも心配ということでさ…。
むむ、放射性物質は県境なんて関係ないものね、行動半径がアホほど広がってきた私たちでした!
あ、ケンパルが以前のブログではなく、「脱ってみる? デイリー」に会見書き起こしをし始めたから、見てやってね。
【今週の針金】
梅にウグイス、春にセシウム。
福島地裁が、避難の権利を求める子どもたちによる
申立の却下を決定したのは昨年12月のこと。
その後、仙台高裁への抗告申立が行われるとともに、
2月には東京・日比谷で、裁判の様子を寸劇などで再現し、
市民自らが陪審員となって「判決」を下そうという「世界市民法廷」が開かれました。
マコさんたちが出席した郡山のイベントも、その一環として企画されたものです。
日比谷での「市民法廷」の様子は、こちらのサイトから動画で見ることができますので、
ぜひ見て、自分ならどんな判決を下すだろう? と考えてみてください。