めちゃくちゃ動いているのになかなかご報告できなくて申し訳ない! たまっているけど、急いで書こ。最近の動きはまだまとまってないので、まとまり次第、書きます。
東京電力の会見にもちょくちょく行っていますが、あまりニュースになっていないことをピックアップいたします。
******
4月4日の東京電力記者会見にて、福島第一原発の作業員の方がケガをされた、という情報が出ました。4月3日に「爆弾低気圧」と呼ばれたものすごい嵐が通りすぎたでしょ? その強風に煽られたそうです。
以下、東京電力からの報告。
4月4日の午前中に強風に煽られ、怪我人が発生。
11時55分頃、野鳥の森のタンク上部の雨養生の、風で出来たずれを直す為、タンクの上部に上った際、作業員の方が突風に煽られバランスを崩し、足場材のクランプ(足場材と足場材をつなぐ継ぎ手のような物)のボルト部分に右足の太ももをぶつけ、切った模様。
50歳代の男性。
5、6号機側の救急医療室に移送、治療した。時系列でいうと。
午前11時55分頃 怪我をした。
午後12時20分に5、6号機の救急医療室に移送。
午後1時45分に診察、治療を行なう。
午後1時50分にJヴィレッジの診察所に向かう。
その後Jヴィレッジの診察所で診察を受けて、帰宅。
右大腿ざ瘡、右太もも前部を約6センチ程切り12針縫った。
この作業員の方の被曝線量は12時20分現在0.05mSv。
******
これに関する部分の私の質疑を抜書きします。(ていうか私以外どなたも質問されなかったんだい!)
――怪我をされた作業員の方についてですが、0.05mSvの被曝ということで、これは外部被曝という事で宜しいでしょうか。内部被曝は測定されていないのですか。
東京電力松本氏「はい、今の段階では測定しておりません。毎月のホールボディ(カウンター)の実計ということになります」
――わかりました。傷口から内部被曝した可能性の測定はされていないのでしょうか。もし今の段階でわかるのであれば、野鳥の森のあたりのダストサンプリングのデータや、ぶつかって6センチ切ったそのボルトの辺りの核種の表面汚染データなどはあるのでしょうか。
東京電力松本氏「身体サーベイはやりまして、身体に放射性物質の付着はないということでございましたので、内部取り込みはなかったというふうに思っております」
――身体サーベイをして付着が無いということですが、それは以前1月の段階でも聞きました、頭の先から爪先まで、1分程度のサーベイということでしょうか。それとも詳細な傷口のサーベイを…特に傷口から内部被曝がされたかどうか、サーベイはされているんでしょうか。
(1月に作業員の方がお亡くなりになったとき、この身体サーベイについて詳細に聞いたのです。頭の先からつま先まで1分程度測定するサーベイで、「運んでもいいかどうか、病院に入れてもいいかどうか」を判断するためのもの。ご本人の内部被曝や外部被曝の測定とは関係ないもの、ということでした)
東京電力松本氏「ちょっと確認させて下さい」
******
その後、2回目の質疑の途中で、追加情報を出して頂きました。
東京電力松本氏「それから、先ほど怪我人のご質問がございましたが、傷口の部分をサーベイしてバックグラウンドレベルだという事を確認しています。それから、外部被曝に影響を与える雰囲気線量は 0.1mSv/h未満が野鳥の森での空間線量になっております」
――野鳥の森のダストサンプリングなどのデータはなかったのでしょうか。
東京電力松本氏「こちらはですね以前、マスクの運用を変えた時に発電所の各構内のですね、ダストの状況を公表したデータがございますが、そちらのほうに載っていると思います」
――その傷口をサーベイした時のバックグラウンドというのは大体どれぐらいなんでしょうか。 これはあの、5、6号機の緊急医療室で測ったものですか、Jヴィレッジで測ったものでしょうか。
(この会見の冒頭部分で、松本さんが、海水のサンプリング放射性物質の検出限界が上がったことについて言及されているのです。今まで福島第二原発で測定していたのが、3月28日から第一原発で測定しているとのこと。なので、バックグラウンドが上がったので検出限界が上がったそうで、じゃ、この怪我をされた方は傷口のサーベイはどこでされたの? と思って)
東京電力松本氏「えっとー、5、6号機の緊急医療室ですので、まあ3000cpmぐらいではないかと思いますが、ちょっと確認します」
(!! やっぱりバックグラウンドの線量は高いよ! これじゃあ、傷口からの内部被曝の測定はきちんとできないよ!?)
******
なぜ、傷口のサーベイを気にするか、というと、そこから放射性物質が取り込まれ、内部被曝をするからです。野鳥の森のボルトで足を6センチ切り、12針も縫う怪我で、なぜきちんと傷口のサーベイをされてないんでしょう? その辺りのダストサンプリングデータも気になるし、切った足場材なんて、屋外に露出しているものでしょう? 表面は汚染されているのではないかしら?
もっとバックグラウンドの低いところで、傷口をモニタリングすることもできたでしょうし、傷口のスミア試料を採って、核種分析をすることもできたでしょう。(第24回の「脱ってみる?」で鼻スミア試料を復習してね!)
本当に、傷口からは内部被曝しやすいのですよ!
ICRPのpubl.78「作業者の内部ひばくの個人モニタリング」の「5.5傷口モニタリング」を抜粋します。
皮膚を切ったり、刺したり、擦りむいた場合、放射性物質が皮下組織に浸透してそこから体液によって吸収され得る。放射性物質や放射能量によっては、医学調査や特殊モニタリングプログラムにとりかかる必要があるかもしれない。
このような状況においては、外科的切除の実施に関する決定の一助として、異物中や組織中いおける放射線の自己減弱を考慮にいれて、傷口における放射性物質の量を測定するべきである。
もし傷口から物質を取り除こうとするのであれば、放射能の収支が維持されるように、取り除かれた物質と傷口部位に残った放射能とについて測定を実施しべきである。それに続いて、身体組織への取り込み量を決定するための一連の測定が行なわれるべきである。
これらの測定は、それぞれの核種に対して適切になるよう、in vivo測定(生体内で、ということ)、もしくは尿または糞の排泄物モニタリングから構成されるであろう。もし全身測定がなされるのであれば、傷口部位に残った放射能を遮蔽する必要があるかもしれない。
取り込み量は付属書(このpubl.78に付いています)に与えられたデータから算定できる。取り込み量を評価する際、全身放射能の除去を高めるためのどのような処置についても、その効果を充分考慮にいれなければならない。
ちょっと、難しい文章でごめんなさい。ICRPは難解でわっかりにくい文章なんだよね! 翻訳悪いんじゃないの! なんちて。
「研究室で、うっかり指を切っちゃって、そこが少し汚染されているだけで、放射性物質を洗い流すため、ザーザー水で洗って、できるだけ除染するの、痛いよ〜。で、スクリーニングして、このぐらいなら、いいか、まで落とすの」というお話も聞いたことがあるので、怪我をされた方の傷口が本当にきちんとモニタリングされているか心配なのです。
もちろん、12針も縫う怪我の緊急性もあるでしょう。でも、怪我が治ったあと、いつか内部被曝による健康被害が出ても、この取り込んだときのデータが無ければ、何も因果関係は証明されないでしょう? しばらくたってからホールボディカウンターで測定しても遅いんだもの。
あの、恐ろしかった強風の日、爆弾低気圧の日は、福島第一原発が本当に心配だったけれど、そこで風でずれた雨養生を直していた作業員の方が、強風で煽られて怪我をされて、そしてその怪我がきちんと傷口モニタリングされてないなんて、私は本当に堪えられません。
そして、会見で、この件に関してどなたも質問されなかったこともちょっと不安。たまたま私たちは行ってたけれど、もし行ってなかったらみなさんスルーなのかしら? 12針も縫う怪我で、傷口モニタリングがきちんとなされていないこと、バックグラウンドが3000cpmという高いところでしか傷口のサーベイがなされてないことは、大問題だと思うんだけれど…?
私たちは作業員の方々の代わりは到底できないので、申し訳ないので、その代わり、きちんと健康管理、被曝管理をしてほしい、と大声で訴える所存です。
******
この日の会見では、1〜3号機の格納容器、原子炉圧力容器への窒素供給装置が停止したことがメインのトピックだったのです。
それは、やはり爆弾低気圧の影響で、強風で砂や埃が舞い上がり、フィルターが目詰まりしたから、とのこと。
ぶら下がりでついでにお聞きしてみました。
――強風でフィルターが詰まった、ということは、同じような強風、例えば台風シーズンも同じ危険性はありますか?
東京電力小林氏「今回は、強風のみで、雨量が少なかった、ということが大きな要因なのです。雨があると、砂や埃はあまり舞い上がらないので…」
――なるほど、では台風は暴風雨になることが多いから、前シーズンの台風では同じようなアクシデントが起こらなかったんですね。
東京電力小林氏「そうです、台風は雨を伴うことが多いですので、今回のような、強風だけ、しかも大型台風のような強風だけ、ということはありませんので。あ、でも、雨を伴う台風で砂や埃は舞い上がりませんが、何か大きな鉄板などがとんできて、フィルターをピタッと塞げば、同じような状態になるかもしれません」
とのことでした。
******
ところでみなさま、もうすぐマガ9学校がありますよ!
今回のゲストは仙台の石森さん。有機農業を28年やってらして、そして原発事故があり、「小さき花 市民放射能測定室SSS」を立ち上げられました。
去年の3月、宮城県庁に野菜のデータを持っていかれた石森さん。
石森さん「うちの野菜から、これだけのベクレル数が出ると、有機農業としてやっていけません!」
宮城県庁「でも国の基準値以下なので売ってください」
石森さん「いや、国の基準値以下でも、安全安心な野菜として有機農業として、配達できません! 有機農業の商品にならないんです!」
宮城県庁「では、今年だけ有機農業を辞めて、普通の農業をやってください」
どんなとんちだよ! そんなビックリやりとりのお話や、有機農業をずっとやられてた方の、放射能測定のお話はとっても興味深いんですよ! なんせ、作物のこと、土のことをよくご存知ですからね! 土壌から米に放射性物質が移行しやすい3つの原因(石森さん調べ!)など、ぜひ伺いましょう!
そして、土地が、自然が汚染された、という本当の意味を、私は石森さんから伺った気がします。だって、自然とともに暮していた方なんだもの。
そして、マガ9学校の仮タイトルが「福島のはなしを一緒にしましょう」だったため、メッセージに「福島の方の話を聞きたい」という声を寄せてくださった方が何人かいらっしゃったそうです。
でもね、考えてみて。「福島原発事故」というけれど、汚染は福島だけじゃ全くないよ。放射性物質は県境で止まりませんよ。「福島の方の話を聞きたい」が、少し他人事になっているような気がするのと、福島以外の汚染地域も案外、心配ですよ!
なので、「福島の原発事故」ではなく「日本の原発事故」と考えちゃいましょう! で、一番シビアな方々が救われないと、こっちの番までまわってこないから、サクサクとシビアな方々が救われるよう、大声出しちゃいましょうぜ!
というわけで、4月14日のマガ9学校、みなさんのご参加をお待ちしています! まーた石森さんが素敵な方なんだ、泣き虫で優しくてよく笑う、ちっさいチェ・ゲバラみたいな方! 声も喋り方も大好き! ぜひ、会いにきて!!
【今週の針金】
爆弾低気圧で色んな物が飛ばされましてん。
そんなわけでマガ9学校のタイトルは、
「〈日本〉の原発事故の話をしましょう」に決定!
「どこか遠くの人たちの大変な話」ではなくて、
私たち自身の問題として、汚染や被曝の現状を考えたいと思います。
*
おしどりの2人への「ご祝儀口座」はこちらから!