「脱ってみる?」に最近めっきり書いてませんね、もはや、脱「脱ってみる?」状態?
んまぁ、時間が無いというのは言い訳ですね、たぶん、書く作業から心が離れていたのでしょう。でも、がっつり取材&調査はしていますけどね!
しかし、最近、過去の「脱ってみる?」を読み返す機会があり、けっこう興味深いな、いろいろ調べてるね、しかも私の精神状態までよくわかるわ、と面白かったので、また書きます。
でも、再開する前に、思うところを書くか!
去年は、大手の記者クラブってけっこう面倒くさいんだな…と思っていましたが、今年に入って、フリーのジャーナリストの方々も大概だよ…と思うことが続きました。
「おしどりと仲良くしておいたら、あの子は情報をたくさん持ってるから利用できるよ」と話しているのをうっかり聞いてしまったり。
私が取材した方々を、他の方が「自分も取材したい」とおっしゃったときは、喜んでご紹介する私ですが(飯舘村の方々や、仙台の方や、いろいろブッキングしましたよ)、ジャーナリストに取材源の方を紹介したとたん、「もう、おしどりとは連絡をとらないほうがいい、自分とだけとるように」と取材源の方におっしゃったり。
なんか、もう、面倒くさいなーと思うことしきり。相談に乗ってあげる、力になってあげる、と私におっしゃっては、あーあ、とガッカリさせられることがたくさん続いたのです。
思えば私は凄い恵まれてたんですよね! 今年になるまで、そういうひどい思いはしなかったので。去年は、周りに恵まれてた。でも、もっと恵まれてたことに、しょんぼりする私を励ましたり、力になってくれたのは、取材して仲良くなった方々です、本当にありがとう!
で、最近は研究室、病院、勉強会などに通いまくり、論文のお手伝いをすることがメインでした。取材ももちろんバリバリやってるけど、書くのが億劫でさー。だって空しいもん。それを言っちゃおしまいだ! と思い直して、書く、という作業を考えることにしたのです。
私は「報道」というものに懐疑的なんです。だって客観報道なんて無理だもの。どんなに事実だけを伝えようとしても、記者というフィルターを通す以上、記者の主観が入るでしょう? 全てに公平な報道ってあるのかしら? 記者が、女性か男性か、どこ出身か、年齢はいくつか、宗教は何か、一人っ子か大家族か、いじめっ子だったかいじめられっ子だったか、いろんなファクターで記事は少しずつ色がついたりするんじゃない?
でも、その偏りを無いフリをして、「公平な記事でござい」ってするほうが、私はなんか不公平な感じがするのです。
全く公平にものを見る記者が、公平な記事を客観的に書いています、というスタイルより、「自分はアニメ好きで、○○党を支持してて、猫が好きで、何より動物虐待のニュースにはカチンときます」くらい記者さんの立ち位置、色が見えるほうがよっぽど公平なんじゃなかろうか、と思います。
しかし書き手が公平さを目指すことは大切。
でも、読み手は、公平な記事を書いてるフリをしているな! くらいの警戒心を持って、いろいろなニュースにあたりたいものです。
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まぁ、もっといろいろ書きたいことはあるけれど、このへんで。でも、何かスッキリしないな、ちゃんと吐き出さないと、また、脱「脱ってみる?」状態になるような気がする…
けど、記事に書きたい情報もたくさんたまっているので急ぎましょう。
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7月10日は放医研の国際シンポジウムに行ってきました。
去年から私がわーわー気にしていた、事故直後のヨウ素の内部被曝について。
被災者生活支援チームの医療班長から、「手をつけることにしましたよ」と電話でお聞きしたのは今年の1月のこと。あら? この件書いたと思っていたら、第38回「脱ってみる?」に、こんなやりとりを載せていただけ!
昨年12月16日、最後の統合本部合同会見での私の質問のひとつ、
——結局、事故直後の住民の内部被曝の評価はどうするのですか?
に対しての園田政務官のお答え、
「これから検討していきますが、被災者生活支援チーム医療班が動き出した、とも聞いています」
なぬー!! ということで、すぐに福島班長にお聞きしました。脱ってみる? 愛読者のみなさまはご存知、小児甲状腺サーベイや県民健康管理検討委員会でもおなじみ、あの福島班長だぜ!!
——福島班長が事故直後の内部被曝調査をされるの? 園田政務官が最後の統合会見でそうおっしゃって、驚いたんだけど、いつそれが決まったの?
福島班長「その日」
という、いつも私と仲良くしてくださる福島班長への電話取材も近日公開!!
そうか、公開してませんでしたね…
福島班長のお話では、規制庁にさまざまなものが移行するときに、事故直後の内部被曝について、どこも手をつけなかったら、また抜け落ちてしまう、今少なくとも道筋をつけなければ、と手をあげたそうです。(以下、福島班長との電話取材のやりとり)
――で、具体的に何をやってらっしゃるんですか? 内部被曝の評価に生かせる、事故直後の短半減期核種のダストサンプリングデータとかあるんでしょうか?
医療班長「あちこちの学会や大学に行って、何かデータをお持ちでしたら、提供してくださいとお願いしてまわったり…」
――え、それでしたら私が去年ずっとやってたこととたいして変わらないですね…
医療班長「いや本当に、遅くなってすみません…」
でも、全く切り捨てられていた状況よりずいぶん進歩です!
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そして、第43回「脱ってみる?」にも書いたように、この事故直後の内部被曝の評価を担当する事業者選定のための入札が行なわれ、その結果落札した事業者が放医研(放射線医学研究所)だったのです。放医研か…。
「脱ってみる?」読者のみなさまなら、今まで記事に出てきた放医研のことはご存じでしょうよ!
脱ってみる? 第19回で、小児甲状腺サーベイの住民説明会のときに取材した放医研のお医者さま!
脱ってみる? 第4回で、飯舘村の方々に冷たかった放医研!
いろいろ調査をしまして(内部リークでお聞きしたのですが)、放医研のこの内部被曝の評価は上限はこれくらいで、という注文があったそう。あらかじめ過小評価をするつもりなのかしらね?
そして、このエネ庁の告示には他にどんな団体が入札したか知りたい、と思い調べ始めました。
あと、放医研にもスケジューリングをお聞きしようと思ったんだけど、その模様はこちらに。ケンパルによる全文書き起こしがあります。
その中から一部抜粋。
――被災者生活支援チームの医療班にお聞きしたのですけれども、去年の福島第一原子力発電所の事故の後、事故直後の短半減期の核種の内部被曝の推定をする機関の募集を資源エネルギー庁が告示をしていたものを、放医研が受けた、とお聞きしたのですけれども。
放医研広報課「は、はいー」
――その、短半減期核種の事故直後の内部被曝の評価推定の進捗状況と、あとどの程度の核種を評価していくのか、についてお聞き出来たらと思うのですけれども。
放医研広報課「はい、えっとー進捗状況というのは、この前えっとー、こ、公示されてその後の話っていうことですか」
――そうです。
放医研広報課「放医研が落札して、それから現在に至る状況ということでよろしいですか」
――はい、宜しくお願いいたします。
放医研広報課「短半減期核種のどのような核種を対象とするか。」
――はい、そうです。どのような核種かと、後、現在までの進捗状況とこれからのスケジューリングもお聞かせ願えたらと思います。
放医研広報課「はい、ちょっと担当の者と連絡を取りますので、ご連絡先を教えて頂いても宜しいでしょうか」
――わかりました。■■ー■■■です。
放医研広報課「あ、あプレス。マスコミ? でしょうか」
――取材です。
放医研広報課「…………。えっとー、取材の申し込みが必要でして、えっとー、お手数をお掛けするんですが、そこ向けのホームページがあるんですけれども」
――わかりました。あの、以前までは電話取材にも随時お答え頂いてたのですけれども、これはいつからこうなりましたのでしょうか。
放医研広報課「原則は10日前迄に取材を申し込んで頂いて、ということになってましてー」
――なるほど、放医研に伺う場合でなく電話取材でも、ということですね。
放医研広報課「はい。その通りです」
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そして、現在に至る。ま、放医研のこんな感じは以前からなので慣れています。
で、7月10日の国際シンポジウム。これは事故直後の内部被曝評価を再構築するためのものだったのですが、目新しい発表はありませんでした。この先生はこんな研究をしている、と既知のものばかり。だったら、あちらに座っている、細井義夫先生のお話をもう一度伺いたいよ…(脱ってみる? 第36回で安全委員会の被曝医療分科会にいらした細井先生のことを書いています)。
あ、あの先生はメールでやりとりをしたことがある方だ、あの先生はお電話でお話ししたことがあるな、と思ったら、通っている研究室の若い衆がいらしていたり、被災者生活支援チームがいらしていたり。
いつのまにか、内部被曝のシンポジウムにかなりの顔見知りがいたという…。以下はそのシンポジウムでの、被災者生活支援チーム医療班の方とのやりとり。
――○○さん! お聞きしたいことがあるんですけど!
医療班「なに? 答えられることだったら。あ、あなたの仲良しの医療班長は異動されたよ!」
――存じております…。検討委員会のときに、もうすぐ異動と伺いました。
この事故直後の短半減期核種の内部被曝の評価を、エネ庁の告示で、放医研以外に入札したところってあります?
医療班「無いよ! こんなめんどくさいこと、やるところ無いでしょうよー」
そうですか… 放医研以外に手をあげたところがあれば、そちらにもコンタクト取ろうと思ってたんだけどな。けど、あちこちで聞いていたけれど、こんなにあっさり教えて頂けるとは!
そして、シンポジウムの内容は、またどこかに資料をまとめますが、既知のもので少しガッカリしました。有効なダストサンプリングデータが大量に出てきたり、DOEのデータが使える! とか判断されてたりしないかなーと思っていたので。
しかし、興味深かったのは、避難経路と内部被曝の調査。たとえば、同じ大熊町の方でも、避難経路によって、内部被曝の量がかなり変わるのです。南方向にまっすぐ避難し、すぐに福島県外に出られた方より、いったん北に行き、そして西にジグザグに移動し、最終的にかなり日にちがたってから南西方向に避難された方のほうが内部被曝量は少ないのです。
つまり、放射性プルームと移動経路がかなり重要ということ。同じ地域の方でも、こんなに違うのか! と驚きました。
あと初期の食物の汚染状況もひどかったので、吸入被曝(呼吸による内部被曝)だけでなく、経口被曝(食べ物による内部被曝)も考慮しなければ、という発表など。
発表のたびに、海外の学者さまが「平均値を出して薄めることに意味は無いと思う。個々の詳細なデータを出してほしい」とおっしゃってたのが印象的。
あと、内部被曝のバックグラウンド、校正の手法が調査ごとにまちまちで(測定の前後で毎回空間線量を測る、甲状腺のファントムを作る、調査官の内臓の等価線量をバックグラウンドにする! などなど)あまりにもバラバラで、これは比較できるデータになるのかしら? と疑問になりました。
そして、弘前大学の床次眞司先生チームの発表も興味深かったです。4月に甲状腺サーベイをされていた、ということは知っていましたが、丁寧な発表と、先生の仮説は目から鱗でした。シンポジウム終わりに、床次先生にお話を伺いに行きました。
――先生の研究は大変興味深かったです。床次先生の論文は、サイエンティフィックレポートにだされたものも読みました。
床次先生「そうですか、ではいいことを教えてあげましょう。今日の発表も出しました。2日後にオープンになります(つまり7月12日)」
――ありがとう存じます、絶対読みます!!
というわけで、オープンになったらまたご紹介いたしましょう!
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そして、去年の3月末に飯舘村、いわき市、川俣町で行われた小児甲状腺サーベイについての発表もありました。
「計測値ゼロは被曝していない、ということではない」という内容で、うん、知ってる知ってる、去年の8月の住民説明会でそうお聞きしましたからね、(「脱ってみる?」読者のみなさまは、この内容とともに、どれだけ苦労してこの住民説明会にまでこぎつけたかもご存知ですよね!)と座っていたら、翌日の新聞の一面に「線量ゼロ通知の子、甲状腺被曝の可能性」という記事が。(参考:2012/7/11朝日新聞)「データだけ伝え、ゼロと通知していた」という内容ですが、えー、ちゃんと説明会がありましたよ? 説明会に来られなかった方には計測値の他に説明会資料も送付されていましたよ?
その模様はこちら。第19回「やっとこさ開催にこぎつけた小児甲状腺サーベイの住民説明会の件。」
おりしもそのときに医療班の方はこんなことをおっしゃってました(抜粋)
医療班の方 「メディアは読み取る力が無い、専門家がいないのか、もしくは相談、勉強しないのか。センセーショナルなことばかり報道したがる」
このときはね、統合本部の合同会見での私とNHK石川一洋解説委員の質問の回答を新聞が記事にして「事故直後45パーセントの子供が被曝!」というセンセーショナルなことになっていたのです。
「違う、そういう意味じゃない、55%の子供がゼロという値が出ただけ。ゼロ、と被曝していないというのは意味が違う。バックグラウンドが高く、混乱の中での甲状腺の測定で、この値は絶対値ではない、それぞれの値を出した人口分布のグラフの山型は間違ってはいないだろう、そういう山型は出るのだが、今回の検査の数値が決定値ではない」とおっしゃっておられました。
そして、この話は住民の方々もお聞きしてますよ?
去年の8月も、マスコミってやつはよー、と思いましたが、またもや同じ件で、まだ、ミスしてる! と暗澹たる気持ちです。
確かに、このサーベイの意味や検査は分かりにくいです。政府や学者さま側の説明だけでは、住民の方々も誤解しやすいと思います。けど、そこをきちんと橋渡しするのが報道じゃないのかよー、毎回間違ったほうに煽ってどうするんだよー、て感じ。
去年の8月は「子供が45%の被曝!!」
→絶対値ではないので、この測定からこういう結果は導き出せません。
今回「ゼロとしか通知されてない子供は被曝の可能性! 政府は住民にゼロ通知のみ!」
→住民説明会ですでに聞いたお話です(今更の記事?)。そして住民に通知のみではなく説明されています。
この3月末の甲状腺サーベイのポイントは、この検査が不確定なものであったにかかわらず、追加調査がなされなかったことなのです。
再三、安全委員会が追加調査をするように、と助言したのにもかかわらず、なされなかったこと、それが追及せねばならないことなのです(この件は資料を提示して、また改めて書きます)。
放医研がこの測定をもとに平均値やらを出していましたが、不確実な測定(測定チームや、飯舘で測定チームの補佐をした村民に取材しましたので)で、これは決定値ではない、傾向しかみられない、という測定の平均値などを出すことにあまり意味は無いと思います。
あと、新聞記事に「この測定の結果を住民に返したのは5か月後の8月だった」とも書いてありました。
ええ! どれだけ苦労してこの結果を返してもらったか! この測定のことを去年の5月に飯舘村の方々にお聞きし、なぜ結果を返さないのか、会見で質問を繰り返し、関係各所に取材し、不確定なものだったので、もともと住民に返すつもりはない、というものだったのですが、取材を重ねるうちに、関係者側で「それでも要望があるなら結果を住民に返したほうがいい」とおっしゃる方が出てきてくださり、それで、説明会の運びとなったのです。
安全委員会の方から私の電話番号を聞いた、という関係者が電話してきてくださり「自分は今、災害対策本部にいるが、もとは医者である。医師として、患者のデータは本人のものだと思う。なので、政府がこのデータを住民に返さない、と言っても、自分が責任を持って、このデータを保管し、いつか必ず返す」とおっしゃってくださる方もいました。安全委員会の審議官も、小児甲状腺サーベイの結果を返したほうがいいのではないか、とアドバイスした、とおっしゃってくださりました。
で、結果を返すことが決まってからも、被災者生活支援チームの医療班以外が会見にくると「返すかどうかはまだ検討中」とかおっしゃっって、そのたび、私は怒らなくちゃいけないし。
でも、「絶対に自分が責任をもって住民に結果は返すから。でも、これは数値のデータだけ郵送で返す、という乱暴なことはできない。今は医療班は警戒区域内の一時立ち入りにかかりきり余裕がないけど、その後、できるだけ早く説明会を開いて返すから!」と言っていただき、そして、8月に説明会開催の運びとなったのです。
そして、私が初期の内部被曝、小児甲状腺サーベイについて会見で苦労していたとき、援護射撃をしてくださったのはブルームバーグのOさんと、NHKのI解説委員だけでした。記者さまは佃煮にできるほどいらっしゃったけど。
それを棚にあげて「政府は五か月後に住民に結果を返した」とか書いてもらっちゃあね。批判的なことを書くのなら、会見や取材でもっと追及されたらいいのに。
まあ、この件がきっかけで、私もちゃんと書いていかないとな…と思った次第。ガッカリせず、私の起爆剤になってくれてありがとう、とでも思っておきましょう。
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さて、マガジン9は、いつものように、取材経緯ややりとりなどもありったけ書きますが(初見のみなさまは驚いたでしょう、「脱ってみる?」はこんな感じなのです)、あらたに、NEWS LOGというところでも書き始めました。そこは硬派に決めています。
ご覧になってね!
「福島県ではなぜ迅速にSPEEDIが活用されなかったか」
こちらにもどんどんデータや、過去のまとめを出していきます。
まだまだ書きたい想い、伝えたいことはあるけど、また!!
【今週の針金】
小沢一郎さんの新党名は「国民の生活が第一」。
僕は「マコちゃんとの生活が第一」ですねん!
そんなわけで、ちょっとお久しぶりの「脱ってみる?」でした。
書きたいことはいっぱいある! といつもおっしゃるマコさんですが、私たちも知りたいこと、教えてほしいことはたくさん。
みなさまからのご意見・ご感想も、ぜひ!
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おしどりの2人への「ご祝儀口座」はこちらから!