おしどりマコ&ケンの「脱ってみる?」

 7月5日に国会事故調査委員会第20回の最終報告書のブリーフィング、記者会見に行きました。

 ブリーフィングの模様を実況中継したツイートはこちら! →脱ってみる?デイリー 7月5日。
 なぜか、録音録画が禁止、ということでしたので、ほほう、そう言われると何かしらすぐに発信したくなるものですね、とツイッター実況中継いたしました。それは禁止って言われませんでしたからね☆ 膨大な資料自体、ブリーフィングと同時にネット上に公開されたのだから、ライブ配信したら、ネットでご覧になる方もよくわかったのにねぇ。

 そして、私の質疑はこちら。→脱ってみる? デイリー 7月5日、記者会見とか。

 ん? ケンパルの書き起こし、私の質疑が1つ抜けていますね? 国会事故調査委員会法の第12条に基づく、いわゆる「12条請求」に関する質問です。

 ちなみに12条はこんな感じ。

(資料の提出の要求)

第十二条  委員会は、事故調査のため必要があると認めるときは、国の行政機関、地方公共団体の公署、原子力事業者その他の者に対して、資料の提出を要求することができる。この場合においては、当該要求を受けた者は、この法律に別段の定めがある場合を除き、これに応じなければならない。

2  前項の要求を受けた国の行政機関及び地方公共団体の公署は、当該要求を受けた日から七日以内に、当該要求に係る資料を提出しなければならない。ただし、その期間内に当該資料を提出することができないことについて正当の理由がある場合において、その理由及び提出することができる合理的な期限を明示したとき は、この限りでない。

3  前項ただし書に規定する場合においては、第一項の要求を受けた国の行政機関及び地方公共団体の公署は、当該明示した期限内に、当該要求に係る資料を提出しなければならない。

 調査協力してもらえないところは12条請求を使うのです。強制力があるのですね。

 ブリーフィングで、「基本的には協力して頂いたが、若干、そうでないところもあり、12条請求は13件した。」とのことでしたので、ちょっとお聞きしました。

——(調査に協力しなかった)12条請求の13件はどこにしたんですか?

国会事故調事務局「東京電力、文科省、電事連、原子力安全委員会です」

とのことでした。

 で、本当に膨大な報告書、議事録、関係資料なのです! なので要約版とダイジェスト版があるんですのよ、なにごと!

 ま、1日で全部読むのは無理っす、ということで、少しずつ読んで、あまり取り上げられていない興味深いところを少しずつご紹介したいと思います。

 ちなみに報告書のダウンロードサイトはこちら。

 報告書の5.2.3「最新の知見等の取扱いを巡る議論」(P520~)について。「1)ICRP勧告の規制取り込みに対する抵抗」から抜粋。

 どこが興味深いかというと、「電事連のロビー活動」について、これでもか! と書いてあるのです。

 国際放射線防護委員会(ICRP)平成19年(2007)年勧告の国内制度等への取り入れに対する対応について、事業者から電事連を通じて、主要委員他へのロビー活動を行うよう指示された。(電事連資料より)
 何、その電事連資料! めちゃくちゃ読みたいよね!! そしてその資料の中身。

○職業被ばくの線量拘束値は、規制に取り組むべきものではない。

(おぅ、はっきり言い切るのね!)

○審議会の先生方へのロビー活動を十分に行うこと。
○職業被ばくに対する線量拘束値の「電力の考え方」については、理由・根拠の強化を図ること。

(何すか、電力の考え方って… 電力が人格もっちゃったのかな!)

○公衆被ばくの線量拘束値や監視区域については、中身をよく検討した上で対応すること。

 他にも

 「放射線審議会および安全委員会へ電力意見を反映すべく働きかけを行う。」
 「放射線審議会 電力委員からの意見発信および主要委員へのロビー活動にて、電力主張内容の反映を目指す。安全委員会 主要委員へロビー活動を行い、電力の考えに多くの理解を得る。」

 などなど、「電力」てそうとう押しの強い人格みたいですよ、わお!

 ん? この二つ目の文章、気になったけど、放射線審議会に「電力委員」というのがいらっしゃるってこと? 「電力委員からの意見発信」とやら、過去の議事録読めばわかるかしら?

 ちなみに2009年の放射線審議会の名簿はこちら。

 現在はこちら。

 最近の放射線審議会はよく傍聴に行ったので、わかるかしら? 過去の委員で仲良くしてくださる方がいらっしゃるので聞いてみよっと。

 で、本来なら、2007年勧告を受けて、国内の規制が強化されることが予想されたんだけど、電気事業者が電事連を通じて行ったロビー活動はばっちり成功して、電気事業者の主張が反映されたとのこと。

 電事連資料によると、

○ICRP2007年勧告法令取入れへの対応

 ・放射線審議会基本部会

 ICRP2007年勧告等に対する電力の主張が全て反映された。

(中略)

○安全委員会 放射線防護体系検討会への協力について

 ・緊急かつ重点的に推進すべき放射線防護研究には、産業界の意見が反映された。

 世界基準さえ押さえこもうとする動きは、2)の「電気事業者と放射線専門家の関わり」にもありました。

3.非がん影響に関する研究→最近、EUを中心に科学的な知見が不十分であっても予防原則の観点から厳しい放射線防護を要求する動きが強まっていることから、


(いいことじゃないの?)

非がん影響についても過度に厳しい放射線防護要求とならないよう研究を進める必要がある。

 あら? 別の電事連資料からの引用部分に、こんなやりとりが載ってますよ。抜粋。

武藤部会長「低線量分野をまともに研究すれば変な(不利な)結果は出てこないはず。」
武藤部会長「悪い研究者に乗っ取られて悪い方向に向かわないように、研究の動向を監視しておくこと。」

 ですって。この「武藤部会長」は噂の電力委員かしらね? 少し調べてみましたよ。

 こんな資料発見。第12回原子力安全基盤小委員会の議事録です。  この中の文章。

大村基盤課長「それでは、定員数の確認の前に、委員の交代がございましたので、ご紹介をしたいと思います。まず、電気事業連合会でございますけれども、武藤委員から、原子力開発対策委員会総合部会長の小森様に交代しております」

 よくよく調べると、なんだ、武藤栄東京電力顧問のこと? 現顧問だけれど、去年の発災当時は副社長、つまり東電会見で通称ムトゥのあの方? では会見で何度もお会いしていますね!

 しかし、国会事故調の報告書の電事連資料は情報が少なすぎて、「武藤部会長」が武藤栄東京電力顧問かどうかはわかりませんでした。報告書の電事連資料はクローズドのものですしね。

 しかし武藤栄氏はいろいろとご活躍されていたようですね!

 原子力委員会研究開発専門部会(第5回)の議事録では

武藤委員「東京電力の武藤でございます。今日は電気事業連合会といいますか、電力を代表するという立場で…」

と、いろいろご発言されてますよ。そうか、これが「電力委員」というものかしらね? 保健委員より学級委員より最強の委員、それが電力委員!

 この議事録には

大橋部会長「今日の議題ですけれども、前回、前々回に続きまして、関係機関等からお話をお伺いするということで、電気事業連合会と電力中央研究所の2機関にお願いをしています。」

 ともあります。ほほう、電力中央研究所、こちらも「電力委員」だったりしてね、とか思いながら、国会事故調の報告書に戻ると、このような記載。

 電力中央研究所の研究目的として、下記のような放射線防護基準の厳格化抑止の働きかけが挙げられている。

 「短期的には、2007年のICRP勧告を受けて現在勧められているIAEAのBSS改訂と、それに続く国内法令の改正において、放射線防護基準が必要以上に厳しくならないよう、各機関に対して科学的なデータに基づいた働きかけを強める。」(電事連資料より)

 「必要以上に」「科学的なデータに基づいた」という修飾語はあるにしろ、「厳しくならないよう、働きかけを強める」ことをされてたんですね…。

 他に、電事連は「ICRP調査研究連絡会」(公益財団法人 放射線影響協会)への費用負担という名目で、ICRP主委員会及び専門委員会の国際会議出席に係る旅費等について長年にわたって費用負担を行っていることが確認された、とのこと。

 この章のまとめで気になるところを抜粋します。

*******

 規制側の透明性、独立性についても、保安院と事業者の意見交換プロセスは、全て公開されることになっていたものの、規制炉の運転への影響が懸念されるような重要な基準や、公表することで従前の安全性に疑義が生じるような知見については、非公開の場ですり合わせが行われており、透明性が確保されていたとは言い難い。
 (まぁ、非公開の場でのすり合わせは、福島県県民健康管理調査検討委員会を傍聴してもいつも思いますけどね… あれ、絶対台本あるような気がする…)

 また、事業者に比べ保安院の方が専門性に乏しいことから、基準の詳細について事業者側の提案を受け入れるといった方法がとられることもあり、規制当局の独立性も疑わしい状況であった。
(保安院の方が専門性に乏しい…。トホホじゃないすか! でも統合会見でもそんな感じしたなー)

 他方で、電気事業者は、学会に対しても様々な働きかけをしていた。事故リスクに関する新知見を提示してくれる有識者には、事業者が知見の収集、意見聴取を行う過程で関係を構築し、少なくとも敵対関係とはならないよう働きかけを行っており、リスクを示す新知見自体に対しても、例えば地震PSA,津波PSAなどについては、「不確実性が高く、化学的根拠があいまいであり、研究段階」という理由を掲げて押し込め、規制や指針への採用を先送りするよう働きかけていた。
 本事故の原因が適切に対処されず、長期間放置された背景には、このような電気事業者と規制側の不健全な関係(「虜の構造」)があったことは明らかであろう。こうした原子力業界の病巣の根底には、原子力業界の存続が既設炉の稼働に依存しているという問題がある。

 (既設炉を稼働させればするほど儲かるからね! そしたらお金ばら撒いて思い通りできるからね!)

 (中略)
 事業者も規制側も、既設炉を稼働させ続けるためには「原発は安全でなければならない」ということを至上命題とするのではなく、既設炉への影響を遮断するために「原発はもともと安全である」と主張して、事故リスクに関する指摘や新知見を葬り去ってきたわけで、こうした考え方が今回の事故を招いたと言うことができる。

*******

 7月5日の第20回国会事故調で、この報告書で最も興味深かった部分の1つですが、公表されて以降、あまり取り上げられてないようなので、改めて記事にしました。

 「電事連がロビー活動していた! その内容はこれ!」という電事連資料からの報告書なんて、かなーり画期的ではない?

 国会事故調やるわね! と思いきや、では、今、原発事故後のロビー活動はどうなの? そちらも調査してほしかったな! と残念感もありましたが。

 報告書p400あたりの「電事連の働きかけにみられる電気事業者の防災意識の薄さ」など、けっこう電事連に対して突っ込んだ報告書なんですけどね、あまり話題になってないんですよねー。

 とかいう私もけっこうドキドキしています。なぜなら!

 けっこう突っ込んでいるジャーナリストの方にお聞きしたことがあるんです。

——電通の悪口とか言ったら、干されたりしちゃいます?

 「しないよ! 素人はよくそういうこと言うけど、電通は今、そんなに力はないよ。怖いのは電事連。電事連のことを言うときは自分も、根回ししたり気を使うよ」

 とのことでした。

 へーえ、と思いながら、この報告書で再三、電事連のことが挙がっていながら、あまりメディアで取り上げられないのはそのせいかな? とも思ったり。

 そういえば、経産省の発送電分離の有識者委員会は名簿を公表すると電事連から圧力がかかるので、公表されないんです、とそこに出席したお一人から伺いましたよ!

 その方の発電と送電と変電と売電のお話も面白かったな…。書かせてくれないかしら…。

 とにかく、私もこの報告書のことを記事にすると、電事連から睨まれちゃうのでしょうか?

 そんなことをせず、CM1つバーンとくださるような、太っ腹な方々のはず☆

*******

 ある地域の医師会の防災担当のお医者さまから、安定ヨウ素剤について話したいから情報を教えてほしい、どの程度配られて、服用したのはどこなの? と聞かれまして、国会事故調の報告書がわかりやすくまとめられていたので、お送りしました。

 すると喜ばれて、コピーして配って話をする、とのこと。

 もしかすると、同じようなお考えの方もいらっしゃるかも、と思いご紹介します。再度、報告書のダウンロードページ。

 この「報告書」のP440~446「防護策として機能しなかった安定ヨウ素剤」の項目です。

 このように、地域の医師会の防災担当のお医者さまがご興味を持ってくださるのは嬉しいことです!

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 最近、東京電力の会見でもいろいろ回答が出てきましたので、まとめます。

 過去の記事の続報も書きたいし。

 東電会見で私の質疑が長くなると、相変わらず新聞記者さんに睨まれたり、TVカメラマンさんに舌打ちされたりしちゃいます。会見に出席する記者さんは定期的に入れ替わるので、私と初対面の方もいらっしゃるでしょうしね、何コイツ? 感はあるでしょう。

 何より、出席しているフリーランスは私たちだけ、という状況も多いですし!

 けど、まぁわたくし、やることやるだけですわん、と淡々としております。

 ケンパルがこんなことをツイートしておりました。

 今日の会見で、マコちゃんが質問しているとき、前の新聞記者さんに振り向かれて睨まれたり、後ろのTVカメラさんに舌打ちされたりしていましてん。マコ ちゃんが気付いてなくて良かったと思ってましたが、会見終わりでマコちゃんきっちり所属と名前を調べに行ってて、驚きですねん。さすがですねん。

 まぁ、どうでもいいけど、一応媒体と名前はチェックしておくわ、と言いながらマコちゃん、帰り道歩きながら、空に向かって「日隅さーんイヤな気持ちになった時はどうしたらいいのー?」と叫んでましてん。マコちゃん、隣に僕がいますねん。

 私が質疑の最中に舌打ちを聞いて、動揺するんじゃないか、集中力が乱れるんじゃないか、と心配したけれど、気付いてないようで良かった、と思いきや、会見終わりで、所属と名前を調べに行ってて、驚いた、ふてぶてしくなったね! とのこと。

 帰り道、「会見に行くと気持ちがささくれるけど、楽屋にいると芸人は優しいから、優しい気持ちになれる、本当はずっと楽屋にいたいな」と言うとケンパル、ついておいで! と行った先は本屋さん。

 楽屋ちゃうやん、本屋やん! どんなボケよ! と思ったけれど、今月の誕生日プレゼントに本を買ってほしい、と言うので、ほっとくと、大量にカゴに入れる! え? 本をカゴ買い? しかも環境省の環境白書やら環境統計集やら、文科省の科学技術白書やら厚生統計要覧やら! 本当にこの本読むの? 

 「僕の望みは、マコちゃんがこの本全部読んで、より強く優しくなること! 本当は経産省や環境省の名鑑も買って、名前と顔と経歴と部署も全部覚えてほしいんやけど、これ、ちっちゃいのに高いからな…」

 私に何を求めてんの! 自分で読んで、覚えてよ! アホの子のフォローは、「より甘える!」という想定外でした! けっこうスパルタ!

 そんなケンパル、私が記事を書いているあいだに、会見の書き起こしをしました、ご覧あれ!

・脱ってみる? デイリー 7月23日東京電力会見

・脱ってみる? デイリー 7月24日東京電力会見

【今週の針金】
首相官邸前の再稼働反対デモで演説した鳩山由紀夫元首相。

身体が鳩になっているのはザ・ぼんちのおさむ師匠からのアドバイスですねん!

 

  

※コメントは承認制です。
第47回 国会事故調報告書、電事連のロビー活動の件。」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    ますますコンビネーションが冴えるマコさん&ケンさん。
    ケンさんの「誕プレおねだり」、素敵すぎです!
    そして国会事故調報告書にある「電事連の働きかけ」、
    やっぱり、とも思いますが、改めてこうして断言されると衝撃的。
    この報告書、たしかに長ーい、のですが、意外に読みやすい印象なので、
    時間のあるときに自分で読み込んでみるのもいいかもしれません。

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おしどり

おしどり:マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。ブログ:http://oshidori.laff.jp/ twitter:マコ:@makomelo ケン:@oshidori_ken その他、news logでもコラムを連載中。

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