3月は使用済み燃料プールが冷却できなくなったとかで、またドキドキしちゃいましたね! 私も冷却装置の配電図や、電源の多重化、設備の多重化、信頼性向上計画などなど、いろいろ資料を読み返しちゃいました。
結局、ネズミが配電盤に触れてショートした、ということでしたが、問題点、疑問点をまとめておきます。
ちなみに、この配電盤はM/C(メタルクラッドスイッチギア、略称メタクラ)といいます。
長くなったので小タイトルつけました。
(1)メタクラの点検周期が長くない?
(2)ネズミでショートしたメタクラは3号炉の注水系のバックアップだったのね
(3)「切替盤」の対策では、1/2号の施設はまた電源が落ちるかもね
(4)使用済み燃料プールの冷却システムのバックアップは、作業員の被曝作業!
それではどうぞ!
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(1)メタクラの点検周期が長くない?
このネズミが入り込んだメタクラは仮設のものだったんだよね。で、このメタクラの点検周期と直近の点検日はいつ? と質問しました。
事故後すぐの3月19日の会見では回答は頂けませんでした(これもちょっと疑問。冷却に関わる電源設備の点検は信頼性向上対策ではとても重要なものとされています。なのに、点検結果は現場だけしか持ってないっておかしくない? いったん、福島第一原発がシビアな状況になると、現場はもうバタバタ。そして今は、何かアクシデントがあると、すぐにシビアな状況になります。なので、現場だけでなく本店も、冷却装置に関わる重要な設備の点検結果は把握するべきだと思うんだけどな?)。
2012年8月に東京電力が出した『「信頼性向上対策に係る実施計画に係る更なる対応」に関する報告』という資料を見ると(ややこしい名前ね!)。
1-14を見ると、メタルクラッドスイッチギアの点検は
・外観点検
・絶縁抵抗測定
・遮断機動作試験
この3つで保全方式はTBMで、となっていました。
TBMというのは定周期保全、時間基準保全ということ。つまり、定期的に点検する保全方式なのですね。
「使用済み燃料プールの冷却系は、繰り返し冷却停止が発生していることを受け」ての実施計画なので、多重化して、点検もきっちり! ということだったのですが、そうですか、点検結果は把握しておられませんか…。
その次の22日の会見で、回答を頂きました。点検周期は3カ月に一回。直近の点検は2月25日とのこと。
――それはどういう点検ですか? 絶縁抵抗測定などもされたのですか?
東電・尾野さん「運転中ですので、外観点検のみです」
――では、絶縁抵抗測定、遮断機動作試験などを点検するのは運転を停止しているときですよね、それはどれくらいの周期で点検するんですか?
東電・尾野さん「確認します」
はい、そして、その次の会見で回答を頂きました。質問しては次に回答、みたいな。
メタルクラッドスイッチギア、配電盤を点検するのは、6年に1回だそうです。それ以外は目視での外観点検のみ。
う~ん、前述の「信頼性向上対策に係る実施計画に係る…」の資料にも書いてあるけど、「メタルクラッドスイッチギアで劣化・故障が発生すると系統停止につながることになるが、設備規模が大きいため、修復に時間を要する恐れがある」んだよね…。劣化・故障は6年に1回の作動試験でちゃんと保全できるのかな?
通常の工場ならこの周期で大丈夫かもしれないけど、なんたって原発事故後ですからね、冷却できなかったら大変だけれど、でも頻繁に点検しても、作業員の方々が余計に被曝してしまうし。
ちょっと気になる資料もありました。平成19年の原子力安全基盤機構の資料です。
「どのプラント状態においても主要な事故シーケンスは全交流電源喪失であり、炉心損傷頻度に主に寄与する機器は起動変圧器、メタルクラッドスイッチギアである。」
んーやっぱり、メタクラは重要な電気設備ですよね、なので、通常の原子力発電所でも定期検査のときに電気設備をきっちり健全性をチェックします。
では、通常の原子力発電所の点検周期は? はい、便利な原子力百科事典!
「定期検査の間隔は、定期検査が終了した日以降13ヶ月を超えない時期、18ヶ月を超えない時期、24ヶ月を超えない時期の3つの間隔について国が告示する。」
つまり、最長で2年ですよね?
これは原子炉も含めての点検だから、単純に比較はできないけれど、でも、通常の原子力発電所なら、最長で2年でメタクラの点検はなされているわけです。現在はずっと冷却しっぱなし、運転中だから、なかなか点検できないでしょうけど、重要な冷却に関わる装置の点検が6年に1度というのはやっぱり心配な気がします…。
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ちなみにその2月25日の外観点検もお聞きしました。
ネズミが入り込んだような形跡は? 糞など無かったのかしら? でも、いつもの設備の点検のみで、その他の隙間などを調べたわけではない、とのことでした。
福島第一原発の作業員の方に伺うと、けっこう大きいネズミや糞を見ることはあるそう。現在は免震重要棟や5、6号の休憩室で昼食を取るのだけれど、ゴミはまとめて屋外に。そして、何より、原発の建屋内は湿気もあり暖かく、小動物が冬ごもりにぴったり☆の環境なのだそうです。
この事故のあと、東京電力はネズミ取りも仕掛けました! と言っていました。
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(2)ネズミでショートしたメタクラは3号炉の注水系のバックアップだったのね
平成24年9月の「信頼性向上対策に係る実施計画」も読んでいると、あら? な部分が。
(クリックで拡大します)
これを見ると、ネズミでショートした仮設3/4メタクラには、タービン建屋内炉注ポンプも負荷としてかかっています。
でも、タービン建屋内炉注ポンプは止まってないよね?
この資料を見せて、東京電力・黒田さんに伺うと、
「あーこれはバックアップです。なので炉注は止まっていません」
――え? この仮設メタクラは炉注のバックアップなんですか? では、今は(この仮設メタクラは使えないので)バックアップは無い状態ですか?」
黒田さん「その辺のところを整理しているところです。今は即答できません」
むむ…。
原子炉の注水系は、冷却が止まると数時間後にシビアな状態になってしまいます。使用済み燃料プールよりずっと早くね。だから、使用済み燃料プールの冷却系より、原子炉の冷却系(原子炉注水系、だから炉注ね!)は、バックアップをしっかり作っている、はず!
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28日の会見である程度まとまった報告が出ました。
気になっていた原子炉注水系のバックアップは、現在はA系とB系をきっちり分けているという多重化をとっているので、大丈夫! ということなんだけれど。
でもこのシステムができたのは、質問すると、平成24年の7月とのこと。では、平成24年8月の資料で、なぜ仮設3/4メタクラにタービン建屋内炉注ポンプのバックアップと書かれているんでしょう?
配電図をしっかり見てみたら、B系の予備変から仮設3/4メタクラを経由して、3号タービン建屋内原子炉注水ポンプに行くルートがありました。でも、通電してないから、やっぱりバックアップですね。
(クリックで拡大します)
けど、会見内に「このバックアップは今、使えませんよね? このルートは死んでますよね?」と聞いても、頑なに「大丈夫です!」としか回答を頂けない不思議さ。
やたらと他のバックアップのお話ばかりされて、肝心のこの使えなくなっているバックアップについては、ちっとも教えて頂けませんでしたとさ。
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(3)切替盤の対策では、1/2号の施設はまた電源が落ちるかもね
事故時の使用済み燃料プール(SFP)の冷却系の配電図はこちら。
(クリックで拡大します)
この事故箇所というところでネズミのためにショートし、それで一瞬で過電流が流れ、上流のメタクラ(配電盤)にも影響し、いくつか遮断機がおりて、停電した施設が出たのですね。
ん? この1号の冷却システムはなぜ止まったの? 影響があったメタクラと全然違う場所にあるよね?
それは、B系という青い線の電源系は、ネズミでショートした一瞬に、電圧が不安定になり、全ての機器が影響を受けたのです。
でも、その他の機器はすぐに復旧したのですが(原始的な機器はわりと平気なんだってさ)、繊細な機器は、不安定な電圧の影響を受けると止まってしまい、そのまま再起動するプログラムが無ければ、止まったままになる、とのこと(東京電力・黒田さん談)。
今回の事故の影響を受けた使用済み燃料プールの冷却設備の信頼性向上対策として、1/2号については「切替盤を設置し、電源を2重化」となっています。
ん? ネズミでショートして一瞬で過電流が流れて、1号機の使用済み燃料プールの冷却システムと窒素ガス分離装置が止まったんだよね。そんな一瞬の出来事を、切替盤で対処できるの? ショートしてから、切替盤で操作して切り替えても遅いよね?
黒田さん「そうです。切替盤では今回のような事故は対処できません」
――ですよね? では不安定な電圧による停止を防ぐにはどうしたらいいんですか?
黒田さん「UPSをそれぞれつける、などの対処があります」
――UPS! 無停電電源装置ですね!(去年の6月に、UPSが故障して4号機の使用済み燃料プールの冷却が止まったんだったよね…)
黒田さん「それぞれUPSを付けて、電圧が不安定などの場合での機器停止の際に、自動的にUPSに切り替わるようにする、という対処法がありますが、この1号機の使用済み燃料プールの冷却装置は2次系なので、そこまで今する余裕は無いため、ゆくゆくは、といったところでしょうか」
つまり、やっぱり1号機の使用済み燃料プールの冷却システムが止まったことについての根本的な対策はとられていませんでした。
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(4)使用済み燃料プールの冷却システムのバックアップは、作業員の被曝作業!
あと、今回の事故で、私が質問し続けていること、19、22、27、28日に質問しましたが回答がまだ出ていないことがあります(ちなみに25日は会見に行けませんでした。漫才協会の漫才新人大賞の予選でしたからね。入賞して本選に出れることになりましたよ! 6月に国立演芸場だよ! 来てね!)。
それは、今回のような、緊急時の作業計画はどうなっているか、計画被曝線量はどういう運用になっているか、実際の作業での被曝線量はどれくらいか、ということ。
使用済み燃料プールの冷却が止まっても、シビアな状況になるまで、時間的余裕があるため(といっても数日だけれど)バックアップ対策はとられていないのです。
前述の平成24年9月の「信頼性向上対策に係る実施計画」にはこうあります。
瞬時電圧低下発生時に停止してしまう設備について影響を評価し(ネズミでショート! みたいな一瞬で電圧が不安定になるときなどね)、中期的安全確保の考え方における停止許容時間内に復旧可能かを踏まえ対策の要否を検討し、下記の対策を実施する。
原子炉格納容器ガス管理設備においては、無停電電源装置(UPS)の設置等の対策を行い、瞬時電圧低下時に設備停止したとしても復電後に自動復旧するようにした。
(さっき言ってたUPSで自動的に立ち上がる形式。この設備は、原子炉の内部を観察するのに重要。つまり、超臨界していないか、ここで見てるの)常用高台炉注水ポンプについては、瞬時電圧低下時に設備が停止しても復電後に自動復帰するような制御回路になっており対策は不要である。
(原子炉の注水はキモなので、自動復帰の回路なんだって)タービン建屋内炉注水ポンプについては、瞬時電圧低下時に設備停止したとしても復電後に自動復旧するような制御回路へ変更した(平成24年5月)。
(こちらも自動復旧の対策済み)他の設備については、瞬時電圧低下時に設備が停止したとしても、停止許容時間内に設備の再起動が可能であることから対策は不要と判断した。
(はい、使用済み燃料プールの冷却システムはここに入るのですね)
今回の事故では、ネズミがショートした配電盤をよけて、直接システムと電源側をケーブルでつなぎ、冷却システムを動かしました。
使用済み燃料プールの冷却システムは、原子炉の各建屋の横にひっついています。つまり、作業員の方々は、とても高い線量のところにケーブルをつなぎに行かれたんだよね。
信頼性向上対策の中の「停止許容時間内に設備の再起動が可能」ということは、システムが止まったら、作業員の方々が毎回、緊急作業をする、ということなのです。バックアップは、作業員の方々の高線量作業なんて、申し訳ないよ!! そこんところどうなっているの?
というわけで、緊急時の作業計画や計画被曝線量はどういう運用かしつこく聞いているのです。
放射線作業をするときは、作業計画(作業手順、防護計画、計画被曝線量など)を立てねばなりません。除染するときでも、2.5μ/hを超える環境で作業するときは、この作業計画を労働基準監督署に届けないといけないんだよ!
使用済み燃料プールの冷却システムが止まったけれどなんとかなって、過酷な状況にならなくて良かった、ではなくて、やっぱり作業員の方々の過酷な作業の上に、今の状態が成り立っているんだな、ということを考えます。
そして、この連続でしている質問の回答はいつ頂けるのかしら!!!
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(5)おまけ
マガジン9の連載がすっかり空いてしまいゴメンナサイ。
相変わらず、会見に行ったり、取材に行ったり、舞台に出たり、いろいろお話したりしています。
最近、嬉しかったこと!
ブルームバーグのOさんが、トークイベントに来てくださいました! 2011年の統合会見で、私が困っていたときに、唯一お力を貸してくださった方!!
その模様は「脱ってみる?」第11回に書いております。
Oさんてば、私服でいらしてくださって、つまり、お休みの日に、わざわざ来てくださったのですよ! 現在は原発事故の担当から外れられたそうです。
「『脱ってみる?』に書いてくださったのは、僕の誇りですよ」などというもったいないお言葉まで頂きました、嬉しい!!
なので嬉しさのあまり、横からお顔を舐めながら2ショット写真を撮らせて頂きました☆
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水俣病の最高裁の傍聴に行ったり、双葉町の町長選を追いかけたり、規制庁の原発事故後の住民の健康評価に関する検討チームや県民健康管理調査検討委員会などもずっと取材しているのですが、今年になってから、なんか、もう体調が絶不調なのでした!
私は2週間に1回発熱し、ケンパルはインフルやら扁桃炎やらこまめにいろいろ病気になっています。
もう、思い切って、2人して人間ドックに行っちゃったもんね! すると、いくつか精密検査になっちゃいました。
私はさー、尿潜血と尿蛋白がけっこう出ちゃって心配なんだけど、お医者さまは「うーん、精検行ってもらいますが、恐らく過労じゃないですかねー」とのこと。
――あー、もう、若くないってことですねー、トホホ。
「いや若くても、過労ですよ、この行動記録は!!」
あ、やっぱり。なんか3日を2日のスパンで生きているような感じで(何言ってるかわかんないよね!)、油断したら4日を2日のスパンで生きるので、火曜くらいと思っていたら、いつのまにか木曜日に、なんてことはよくあります。
地球の自転とわたくし合わないのかしらね? つまり、あまり寝ずに働きっぱなし、ってことなんでしょうね!
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ニュースログという報道サイトでも、かたっくるしい記事を書いているのでチェックしてね☆
マガ9だと、配布資料、参考資料に使いにくいから、まとめた硬い記事もシクヨロ、と言われているので、こちらにも書いています。
『本当に「被曝の影響はない」のか』などなど。
アーカイブはこちら。
おしどりチャンネルも、これからバリバリ稼働するはず! 会見のぶら下がり音源などもこちらで公開していきます!
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最近、国会事故調、政府事故調、民間事故調、社内事故調を読み返しているんだけれど(原発事故検定とかあったら、私1級取る自信あるね!)、気分転換に、有吉佐和子さんの『複合汚染』も読み返しています。
これは、昭和50年頃の新聞小説なんだよ、学術書ではないよ、だから本当に読みやすいよ!
参議院選の話から始まり、1票の格差がありすぎる選挙の話や、今、勉強し始めている水俣病の話、映画『フード・インク』や『モンサントの不自然な食べもの』などともとても重なる話がいっぱい!
特に農薬が兵器の「平和利用」という話はへこみました。
化学肥料が第一次世界大戦のときの火薬の「平和利用」、殺虫剤などが第二次世界大戦のときの毒ガスの「平和利用」。わー、なんかへこまない?
ベトナム戦争のときに枯葉剤をまいた「枯葉作戦」なんてのもひどかったよね! 核兵器も「平和利用」して原子力発電してるんだよね。
もう何十年も前に、
「経済のために、健康を売り渡すのはたくさんだよ!」
「経済のために、未来を汚染するのはたくさんだよ!」
「経済のために、子供を安心して育てられないなんてたくさんだよ!」
とおっしゃっているのですね。
あー、人間ってアホやな、そして、ちゃんと過去のことを勉強して、同じ失敗は繰り返したくないな! としみじみ思うので、みなさん、ぜひ『複合汚染』をお読みください!
私、古本屋さんで見つけたら買って、友達に押し貸ししていこうと思います。
今も昔も同じよのー、と思った有吉さんの言葉。
「私は男女同権論者だが、子供の話になると男親は女親とまったく別の人類だという気がするので困ってしまう。
全国母親の会や主婦連、婦人有権者同盟、消費者運動の根本精神は、これだと思う。女性たちが数において多く、男性よりはるかに熱心なのは、こと子供に関する限り、母親は実際的な責任者であり、男性のように社会の仕組みに対してすぐ絶望するような意気地なしがいないからである」
原発事故の後、バリっと動いてらっしゃるのはお母さまがた。意気地なしじゃねえぜ! という殿方もいらっしゃるけれど、ま、ママたちのほうが強いよね。
とりあえず、温故知新つーわけで『複合汚染』読んで、人生の闘い方の知恵つけましょうぜ!
社会のことを考えることは、特別な人たちがすることだと思っていたけれど、体にいいゴハンを食べるために、何を買おうかしら、と考えることとどうやら同じみたいですわよ、奥さま!
美味しいものを食べたり、楽しいことをしっかりしながら、社会のことも全力で考えていきましょうぜ!
ちなみに私のマイブームは、iPodや3DSのゲームで、すれ違い通信をするときのメッセージに「核も戦争も反対!」「選挙行こうぜ!」「脱被曝☆」「リスクは比較するよりまず低減!」などなどハードなものをいれています。ゲーマー業界に流行るといいな☆
あと、裁判所などの傍聴券をメッセージカード代わりにする、というのも最近のわたくしの流行り。
みんなでせっせといろいろ会議、委員会の傍聴に行って、各地の会議、裁判などの内容をみんなでせっせとアップして、ウィキペディアならぬ、「傍聴ペディア」ができたらいいのにな♪と思っています☆
【今週の針金】
一匹のネズミがきっかけだったけど、ネズミはまだ沢山居てますねん!
チュー意してねん!