とにかく絶好調で走り続けているように見える安倍内閣だが、ここに来て、かなり翳りが見え始めた。笑い顔も、そんなに長くは続きそうにもない、と僕は見立てているがどうだろうか。
迷彩服にヘルメット姿で戦車に乗り、大はしゃぎで手を振っていた安倍(個人的呼び捨て運動実施中)は12日、今度は宮城県の航空自衛隊松島基地を訪れ、T4練習機の操縦席に乗り込みご満悦。安倍って、こんなに軍事オタクだったの?
戦車写真が批判の的になっていることにも気づいていないらしい。いや、いわゆるネット右翼たちのフェイスブックでの応援だけしか、目に入らないようだから仕方ない、か。
それにしても、これだけ”戦争の臭い”をばら撒く首相ってのも、ホント珍しい。それを諌めようとする側近はいないのかね。やはりNTT出身の世耕弘成氏あたりじゃ無理か。でもさ、こんなことを続けていけば、ネット右翼ではない”普通の国民”から、やがてそっぽを向かれる日も近いんじゃないの?
反撃の狼煙は、いろんなところから上り始めているのに。
「うちの子もよその子も戦争には出さん!」
こんなスローガンを掲げて”結党”したのが、「全日本おばちゃん党」である。党代表代行は大阪国際大准教授の谷口真由美さん。東京新聞・こちら特報部(13日付)によれば、こんな具合だ。
(略)昨年九月、自民党総裁選と民主党代表選をテレビで見た。いずれも女性候補は皆無。会場のダークスーツの男性議員の面々に「ハト(灰色)とカラス(黒)とスズメ(茶)しかおらん…。世の中オッサンだけが動かしとるんか」と猛烈に腹が立った。
ネット上の交流サイトのフェイスブックに「おばちゃん党でもつくったろか」とつぶやいたところ、「ええやん」「入る!」と、そこかしこから反響が寄せられた。ネットを通じ、年齢も職業もさまざまな女性が”党員”として登録。いまや全国に二千二百人に上った。(略)
僕も、おばちゃん党の講演会(マガ9学校)を覗いてみた。
圧倒的な迫力と爆笑の渦だったが、その裏に安倍と自民党政治に対するモーレツな怒りが見えた。アベノミクスだかアベノミス(苦=クがないからなあ)だか知らないが、懲りもせず、またバブル暴走を引き起こして、その間に憲法を変えちまおうというあくどい手法。それに対する、おばちゃんたちの感性の大反撃である。
ほんのわずかに期間に、FBだけで2000人以上の党員獲得。ひょっとするとこの運動、思いもかけぬ盛り上がりを見せるかもしれない。男どもより女性たちのほうが、はるかに感性は鋭い。原発問題に関わって、僕が思い知らされたことだ。
なにしろ「うちの子もよその子も戦争には出さん!」がスローガンだ。これは、効くぜ!
しかし、女性だからといって、みんながそういう感性を持ち合わせているわけじゃない。ひどい人もいる。
例えば、高市早苗自民党政調会長だ。この人、あの妙な笑い仮面の表情で、こんなことを言う(東京新聞13日付)。
(略)過去の戦争に関し「国策を誤り」とした村山富市首相談話について「当時、資源封鎖され、抵抗せずに日本が植民地となる道を選ぶのがベストだったのか」と指摘した。(略)
本気で言っているだけに恐ろしい。何の理由もなく「日本が資源封鎖された」と信じているの? そんな知識、どこで仕入れたの?
ヨーロッパ列強による植民地争奪が、大戦勃発の最大要因だったことは否定できない事実だ。日本もその列強国に遅ればせながら加わって、満州国を無理やり建国し、朝鮮半島を植民地化し、石油や資源を求めてアジア諸国へも侵出、植民地支配を強めようとして列強とぶつかったのではなかったか。
まるで日本が何の理由もなく、各列強の餌食にされそうになった、とでも言わんばかりの歴史認識。安倍が、アメリカ議会調査局の報告書で「極端な国粋主義者、歴史修正主義者」と、最大級の批判を受けたけれど、その安倍の歴史認識と同じほどひどい。
かつて「朝まで生テレビ」で、高市氏が田原総一朗氏に「アンタは不勉強、無知無能。どうしようもない!」と口を極めて罵られたときから、まるで進歩していない。こんな人物が自民党の「政務調査会長」なのだから、自民党政治がまともであるわけがない。
さすがに自民党執行部や閣僚たちから「言いすぎ」とか「あれは個人の意見で政府とは関係ない」などという批判とも言い訳ともつかぬ声が挙がり始めたが、高市会長、何で批判されるのか理解できないらしい。
株価上昇に気をよくし、図に乗った安倍内閣は「憲法96条改定」を、この7月に予定されている参院選の主要争点にしようと目論んだ。日本国憲法96条を、もう一度確認しておこう。
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。(2項略)
要するに、安倍自民党が狙うのは、国会議員の三分の二の賛成というのはハードルが高すぎるから、二分の一(過半数)の賛成に引き下げてしまおうということだ。だが真の狙いはむろん、96条なんかじゃない。本丸は憲法第9条。そんなことは誰の目にもバレバレなのに、あえてそこには触れず「96条改正」を言い続ける。
しかし、さすがにこれには各方面から批判が集中。ことに、連立を組む公明党はそうとうな抵抗を示している。
「立憲主義」という聞き慣れない言葉が、紙面に躍るようにもなった。憲法とは普通の法律とは違い、「権力が勝手にその力を乱用できぬよう、国民が権力を縛るもの」という認識が、徐々にではあるが国民の間に浸透しつつある。で、「自民党、ちょっとやり過ぎじゃない?」という声が挙がり始めたのだ。
そんな流れに引きずられたのか、一時は「96条改正」に積極姿勢を見せていたみんなの党が、突如「公務員制度改革を行わないままでの96条改正には賛成できない」と言い出した。民主党も党内に改憲派を抱えたままだが、それでも「とりあえず96条改正には反対」で党内をまとめた。
こうなると、96条改定に積極的なのは、自民党と維新の会だけか。
すると、とにかく世の動きには異常なほど敏感な(ということは、世の中にあわせて意見をコロコロ変える)維新の会の橋下氏も、妙なことを言い出した。毎日新聞(13日付)の豆粒ほどの記事だ。
日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は12日、大阪市内で記者団に、自民党の憲法改正論議に関し、「自民党の憲法観は危険だ。公権力を強く出しすぎており、怖い」と批判した。改憲を目指す方針自体は堅持する意向を示した。
これでこの記事の全文だが、思わず僕は笑ってしまった。よく言うよ、まったく。日本維新の会の党綱領には何と書いてあったか。真っ先に来るのが、こんな文章だ。
日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正し、国家、民族を真の自立に導き、国家を蘇生させる。
正直、書き写すのも腹が立つ。「共同幻想」などと、吉本隆明ばりの言葉を使ってはいるが、なんとひどい文章か。
いったい戦後のいつ、”我が日本”が、世界の中で「孤立と軽蔑の対象に貶められた」というのか。少なくとも、第2次大戦後、一度も戦火を交えたことのない国家として、「尊敬と賞賛の対象」にはなったことがあるだろうが、「孤立と軽蔑の対象」になったなどという事実はあったか?
石原慎太郎が無理やり押し付けた文章だといわれているが、こんなひどい”自虐史観”も滅多にはなかろう。いつも自虐史観批判を繰り広げる右翼人士たちが、なぜこんな文章を批判しないのだろう?
しかし、安倍が味方だと思っていた連中の腰がひけ始めた。諸外国からの国粋主義者・極右批判。さらに各種世論調査では、「96条改正」については賛成よりも反対が上回り始めた。中身が分かって、これはヤバイと気づきだしたのだろう。
株価上昇で浮かれているうちはいい。だが、それもまもなく底が割れる。そうなった場合、安倍人気とやらは崖っぷち。あの第1次安倍内閣の二の舞にならないとも限らない。
そこで安倍、こっそりと憲法論を引っ込め始めた。ズルイ! 毎日新聞(11日付)はこう伝えている。
安倍晋三首相は10日、フジテレビの番組に出演し、憲法改正の発議要件を定めた96条の見直しについて「無理にやろうとすれば元も子もない。国民的議論が高まっているかといえば、そうではない」と述べ、7月の参院選を経て参院で賛成派が3分の2以上を占めた場合でも、国民投票にかける時期を慎重に見極める考えを示した。報道各社の世論調査では改憲手続きの緩和に慎重意見が根強く、参院選への影響を考慮したものとみられる。(略)
ズルイ、と書いたのはほかでもない。安倍は明らかに、参院選で勝利した場合には、この改定を目論んでいる。だがそれを争点にすると、選挙には不利。だから隠しておく。だからズルイのだ。
こんな内閣に、3分の2の議席を与えてはならない。僕は強くそう思うのだ。
中東諸国を、原発セールスに渡り歩いた安倍。
「福島原発で過酷事故を起こしたからこそ、最先端の安全技術を備えた原発を提供できる」という恐るべき詭弁をセールストークにして、恬として恥じなかった安倍。福島事故原発が、現在どんな状況にあるか、真剣に考えたことなどないという証しだ。
汚染水の処理すらできない状況で、何が「最先端の安全技術」か。デタラメもいい加減にしてほしい。その安倍、今度は東欧へ出かけて、同じデタラメを振りまくという。
読売新聞(13日ネット配信)によれば、こうだ。
安倍首相は6月16日にポーランドを訪問し、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの4か国(ビシェグラード4=V4)と初の「V4+日本」首脳会談に出席する意向を固めた。
民主主義や市場経済など共通の価値観を持つ国々との関係を強化する「価値観外交」の一環であるほか、V4で新増設が計画されている原子力発電所を日本企業が受注できるよう、首相が「トップセールス」で働きかける狙いがある。(略)
日本が期待を寄せているのが、原発の輸出だ。V4では2020年代に稼動を開始する予定の原発開発計画が数多くある。具体的にはチェコで3基、ポーランドとハンガリーで各2基の新増設が予定されている。(略)
まさに安倍「死の商人」の面目躍如。「日本企業が原発建設の受注ができるようトップセールスする」というのだから、日本企業の”ツカイッパ”といっても差し支えない。
しかも自民党は、参院選の公約に、原子力規制委員会による安全確認を前提として「地元の理解を得つつ、国が責任を持って再稼働を行う」と明記した。
「国が責任を持つ」とはどういうことか。そんなこと、最低でも福島原発事故の原因の完全解明と、事故の完全収束ができてから言うがいい。何も解決せずに、どうやって「地元の理解」が得られるというのか。欺瞞もはなはだしい!
だが一方で、原発をめぐる状況は、一段と険しい様相を呈している。まず「もんじゅ」だ。朝日新聞(13日付)によればこうだ。
原子力規制委員会は近く、日本原子力研究開発機構に対し、原子炉等規正法に基づき、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の使用停止を命じる方針を固めた。内規に違反し、1万個近い機器の点検を怠っていた問題を重くみた。期限はつけず、安全管理体制を全面的に見直すまで運転再開を認めない。(略)
もはや「もんじゅ」は風前の灯。「もんじゅ」が止まれば、「核燃料サイクル」の輪が崩れる。核燃料の行き先がなくなる。つまり、日本の原子力政策の根本が否定されるということだ。だが、原発に固執する自民党政府が、規制委の方針に待ったをかける可能性もないわけではない。何しろ、原発セールスマンと化している安倍が首相なのだから。
それに、すでに「もんじゅ」には1兆円を超える金額が投入されている。「もし止めてしまえば、今まで投下した1兆円が無駄になるではないか」という、アホらしい議論が蒸し返される危険もある。
1兆円はドブに捨てた金、もっと捨てようというほうがおかしいのだ。いつもの官僚理論に騙されてはならない。
東京電力は、福島事故原発の処理に、もはやお手上げ状態である。汚染水処理さえ、まともにできない状態が続いている。窮余の一策として、流入し続ける地下水を汚染する手前で汲み上げ、海へ放出することを模索していたが、福島県漁協はこれを拒否。東電はついに先送りせざるを得なくなった。増え続ける汚染水処理に、打つ手がなくなったのだ。
実に、これが事故原発の現況なのだ。それを知りつつ、「最高水準の安全性を持った原発」などと、よく恥ずかしくもなく言えたものだと、僕はほとほと感心する。
中東諸国も東欧諸国も、よく研究調査した上で原発について決断してほしいものだと、心から願わずにはいられない。
原発商人も恥ずかしいけれど、それ以上にぶっ飛んだのが、橋下徹・日本維新の会共同代表の「慰安婦は必要だった」「米軍は風俗業活用で性欲発散を」などという発言。
いやはや…と呆れ果てていたところへ、よせばいいのに今度は同じ維新の石原慎太郎共同代表まで参戦。「軍と売春はつきもの」と橋下を擁護し始めた。アレレ、日本維新の会って、そういう政党だったのか。はいはい、よ~く分かりましたよ。
もう人間がイヤになった……というわけではないけれど、久しぶりに動物園へでも行ってみようと思い立った。のんびりと、昼下がりの動物たちの昼寝姿でも見て来ようと、多摩動物公園へ出かけた。
僕の下手な携帯写真で、ちょっとだけでも和んでください…。