9月9日の日曜日、MV22オスプレイ強行配備反対と普天間基地の即時閉鎖を求める県民大会が宜野湾市の海浜公園で開かれた。午前11時開始という時間帯や炎天下での県民集会にも関わらず、主催者発表で10万1000人が参加した。
この大会のシンボルカラーは赤。サッカーで言うレッドカードを日米両政府に突き付けようという意思表示である。赤の帽子やTシャツ、手には「オスプレイNO!」と書かれたポスターやウチワが会場内にあふれた。沖縄ではこれまでも、歴史教科書における改ざん反対や普天間基地の県外移設を求める県民大会が開かれてきたが、今回はいつもよりも参加者たちの熱気と強い思い入れが感じられた。危険なオスプレイを県民の総意を無視して強行配備する方針を変えていない日米両政府に対する激しい怒りと、これ以上の横暴は許さないという強固な意思が凝縮された大会だった。
大会直前の現地時間で言えば6日に、米国ノースカロライナ州ニューリバー航空基地所属の海兵隊のMV22オスプレイが、バイパス道路に近い教会裏の空き地に緊急着陸。「沖縄タイムス」の平安名純代米国特約記者による記事は、エンジンが出火するトラブルが発生したため、基地に戻ることを断念して民間地域に不時着したという海兵隊員の証言を載せていた。幸い、死傷者は出なかったものの、不時着を目撃した現地の住民によると、軍は包囲網を張り巡らせ、立ち入り禁止の中で事故処理をした。近くの住民たちは、一歩間違うと大惨事につながりかねない恐怖心を憶えたという。今年6月には米国フロリダ州ナバラで空軍のCV22オスプレイが訓練中に墜落している。さらに、今年4月にはモロッコでMV22オスプレイがモロッコ軍との合同演習中に墜落し、海兵隊員2人が死亡、2人が重傷を負っている。
事故原因に関して調査した報告書を軍幹部が改ざんしたという内部告発もあった。アフガニスタンにおける空軍のCV22オスプレイは、通常運行中に視界不良もあって時速約140キロで地上に衝突。乗員20名中4人が死亡し、残りの16人も負傷した。(編集部注:この事故について、「機体に問題があった」とした調査報告に対し、空軍上層部が「人為的ミス」に改ざんするよう圧力をかけていた、とされている。)
MV22もCV22も機体の構造はほとんど同じ。米国空軍に所属するか、海兵隊に所属するかの違いである。オスプレイは「未亡人製造機」という俗称があるように事故数はこれまで確認されただけで61件。そのうち重大事故といわれているのは、9件。オスプレイが欠陥機といわれる所以である。
確かにヘリとして垂直に離陸し、上昇したら固定翼で通常の飛行に移るというのは、夢のような戦闘ヘリである。しかし、その分、不可避的に抱える機体の構造不安から、事故や墜落事故も起こりやすい。これまでの輸送機CH46に比べて、速度も飛行距離も乗員の数も飛躍的に進化したヘリである事は間違いないが、同時に米国軍人だけではなく、民間人に犠牲をもたらす進化途上の欠陥機なのだ。特に、非常時の際のオートローテーション機能がついていないことは、軍需産業のコスト削減や国防総省の予算縮小による軍事力優先、人命軽視の国策の表れといわざるを得ない。
しかし、なぜオスプレイの配備先が世界一危険な市街地にある普天間基地なのか。それだけではない。普天間基地を飛び立ったオスプレイは、伊江島や、嘉手納基地、キャンプハンセン、キャンプシュワブ、東村高江のヘリパッド(建設中)など、ほぼ沖縄本島全部にわたり訓練飛行することになっている。ということは、日本政府はこれまで繰り返し述べてきた過重な沖縄の基地負担の軽減を実行するのではなく、極度の危険地帯をつくり出そうとしているのだ。むろん、オスプレイは日本本土7か所の山岳地帯でも低空飛行訓練を計画しており、その危険性は沖縄だけにとどまるものではない。
米国本土やハワイにおいては、住民の反対運動が起きれば、米軍は計画を中止したり、飛行コースを変更したりして、地域住民への配慮を見せている。しかし、沖縄に対しては、日米両政府は、有無を言わせず配備を強行しようとしているのだ。こうした沖縄差別に対し
て、さすがの県民も堪忍袋の緒が切れた。
今回の県民大会に仲井真知事が不参加の結論を下したことで、大会当日も激しいブーイングが起こった。政府との間で概算要求や那覇空港の拡張工事についての密約が交わされたのではないかといった憶測も飛び交った。痛くもない腹を探られたくないのなら、県民大会に参加して県民一丸となっていることを示すべきではなかったのか。
仲井真知事もオスプレイ配備には反対の意思を表明しているものの、県民大会の終了を待って、森本防衛大臣が沖縄にやってきた。懲りずに、だ。オスプレイの事故は「人為的ミス」というこれまでの米国の主張について、防衛省関係者が米国に渡って調査し、安全性が証明されたという詐欺みたいな話とともにオスプレイ配備に理解を求めるためだった。その足で、森本大臣は山口県岩国市に飛び、同じような報告と要請を繰り返した。
森本大臣も、それで地元が納得できるとは思っていないはずだ。今は政府の使い走りでしかないが、元は防衛・外交の専門家である。理不尽さを感じつつも、自分の役回りを演じ続けなければならないのだ。自分でも望んだのだろうが、気の毒な人物である。沖縄では末代まで恨まれるはずだ。
沖縄本島の県民大会に呼応する形で、沖縄の石垣島や宮古島でも反対集会が開催された。現在、オスプレイが駐機中の岩国でも、東京の国会周辺でも連帯する抗議行動が行われた。反原発の国会デモも理不尽な政府の原発再稼働に対する抗議から始まったものだが、危険なオスプレイ配備の問題とも共有しうる問題意識が根底にはあるはずだ。更に、予想すれば、「シロアリ退治」なき消費税増税や、米国の経済再建のための最後のウルトラCともいうべきTPP(環太平洋パートナーシップ)に参加しようとする政府方針にも 「NO!」が発せられていくのではないか。
こうした国民の声を受け止めるべき政治家の世界では、野田総理に対する参議院での問責決議で国会は途中で休止となり、民主党も自民党も代表や総裁選挙になだれ込んだ。維新の会の登場で政治家たちも右往左往。そのさなか、松下金融大臣の衝撃的な自殺もあった。結局、自分たちの選挙が一番大事で、福島も沖縄も、そして非正規雇用の若者たちに対しても、他人事感覚なのだ。彼らの動静を見ていれば、そうとしか思えない。
この国の未来はさっぱり見えない。民意を問うべき解散総選挙も来年まで先送りだろう。超ど級の閉塞した政治状況といわざるを得ない。
11日、防衛相は6月に米フロリダで起こったオスプレイ墜落事故についても、
「要因は人的ミス」とする日本側分析結果を公表しました。
あくまでも県民・国民ではなく、アメリカのほうを向こうとする政府。
「しょせんは他人事感覚なのだ」。
岡留さんの指摘は、悲しいけれど事実だとしか思えません。