松本哉ののびのび大作戦

manga

 マヌケと言えば大阪、大阪と言えばマヌケ。なんと! その大阪人が東京にやって来てしまった。こりゃ、大変だ! しかも、何を隠そう、高円寺の素人の乱16号店=「なんとかBAR」の店主をやるためにわざわざ登場してしまったのだ! で、その大阪から来る連中というのがまた面白い奴ら。いま関西で脱原発デモのサウンドデモなどをやらかしまくっているが、毎回大バカな悪ふざけで突拍子もないことをやり始め絶大な破壊力を発揮するものの、だいたいマジメ活動家風の人々に怒られ、「すんません」と、しょんぼりするものの、またコワイ人がいなくなったら大はしゃぎで懲りずにとんでもないことをしでかしてまた怒られる、ということを延々と繰り返しているという、面白すぎる奴ら。しかも、大飯原発再稼働の時には大飯現地に駆けつけて機動隊に引き剥がされるまで泣きながら抵抗してたかと思ったら、大阪デモでは超巨大通天閣神輿を出現させてくだらなすぎるバカ騒ぎで街を大混乱にしたりと、常に冷静を装おうとする不気味な日本特有の文化を踏みにじるような、日本にあるまじき事態! う〜ん、これはヤバい。さらに、そのなかの通天閣盛男氏(←名前がすでに人をバカにしている)などは、以前「素人の乱大阪店」やネットラジオをやったり、大阪デモ史上最もくだらないといわれる「大阪のびのびデモ」も起こしたりと、いろいろやらかしている。あと、池田社長と名乗る(←すでに大阪人っぽい)、なんでもすぐやり始める謎の人物も、いまの大阪マヌケシーンでは重要人物。

 さらには、謎のミュージシャン、訳の分からないアーティストなど、いろんな人たちがむちゃくちゃに混じってて、いよいよもって謎の人脈であふれている。これはすごい! そう。そんな奴らがやって来たのだ。あ、ちなみにこの「なんとかBAR」とは、日替わりのゲスト店主を招き、毎日メニューも値段も店名も変わるというとんでもない飲み屋。

これがウワサの大阪人BAR。通天閣盛男は右から二人目

常にザワザワしてる大阪人襲来!

 奴らは、7月15日の朝7時にやって来た。ちなみに高円寺の時間で朝7時と言えば、草木も眠る丑三つ刻。そんな時に大阪人がやって来たんだからたまったもんじゃない。朝から叩き起こされ、ドヤドヤと人の家に入って来るなり、ああだこうだとやたらと口数が多い(東京ルール違反・「平和に生きる権利」侵害)。さらには「今から飲みに行きましょうよ〜!」などと、テンション高め。行きたかったけど、さすがに寝たばかりだったから「いやー、もうちょっと寝かせて」と、断ると「じゃ、うちら一杯行ってきマース!」「あっちの飲み屋がまだやってる! 行こ行こ!」と、ガヤガヤと出て行く。いや〜、あぶないあぶない。

 そして、昼過ぎ、こちらはいつも通り店を開けて店番をしていると、寝起きで恐ろしくテンションの下がった大阪人がゾロゾロと店に現れて「これから船橋のデモに行ってきま〜す」と、野田首相のお膝元で行われるという野田退治デモに行くために、黄色い電車に乗り込んで東へ向かった。

 で、しばらくしたら今度はなんと「ドがつく無能」さんという、アナログラジオ素人の乱のヘビーリスナーにしてハガキ職人(懐かしい言葉!)の大阪人が店に駆け込んで来て、「マハラネムヤはどこ?」「ルキツラは誰?」などと、ラジオの出演者はどこだと言う! ラジオ話で盛り上がりながらも「今日は大阪人たくさんきますよ〜」という。どうやら、通天閣盛男らが「東京でBARやってくるよ」などと言いふらしたらしく、「じゃ、オレも行く」「わたしも行こうかな」と、続々と東京にやって来るという。なんだなんだ!? で、しまいには「今日の客は全員大阪人になるんちゃいますかね〜」という! おいおい、なんなんだ!? 大阪人が東京にやって来て、客も全員大阪から来て飲み屋やって帰ったら、いったい何しに来たのかわからない! っていうか、いったい大阪人はどれだけヒマなんだ!!! あと、東京にいて「東京人冷たい」とブツブツ言ってる大阪人などもここぞとばかりに集結する様子。う〜ん、これはもう下町の頑固ジジイでも連れてこないと勝てないぐらいだ。いや〜、いよいよ面白いことになって来た!!

 夕方、そろそろバーを開けるというので、大阪人ご一行様をBARに案内し、ガス栓とか会計とかゴミの分別などのシステムを説明するが、もうすでにザワついており、どうでもいいことにいちいち盛り上がる(東京ルール違反②・静穏保持違反)。そもそも店番役の人が多すぎる(6人・ルール違反③)。あと、「よっしゃ」「はいよ」などと、相づちも多すぎる。これは早くもヤバいBARの予感が漂って来た!!

タコヤキの量産体制に入り、商人の顔になるタナカくん(左)と池田社長(中)

ついに開催! 「通天閣ビリケンBAR」

 夜8時にスタートした大阪人BARこと「通天閣ビリケンBAR」。大阪人が6人も店番してる上に一人1台タコヤキ機をもって来て「いらっしゃい〜」とゴキゲンな感じなもんだから、もうマヌケさ全開の大騒動! で、あれよあれよと、いきなり超満員! どこからやってきたのか大阪人があふれ帰り、押すな押すなの大騒ぎ! そこへ、船橋で行われていたデモの参加者がデモ割(デモ参加者への割引サービス)目当てもあって流れて来るわ、高円寺界隈をウロつくヒマ人などもくるし、「大阪人を見てみたい!」と集まってくる東京者や田舎者も集まって来て、まさに大パニックに!

 そして、店が混んで来たときが大阪人の本領発揮。全員顔が商売人になっており、「ハイッ、焼酎ふたつ」「はい〜、タコヤキ10個ね!」と、見たことないぐらいテキパキとしている! これはすごい! 特に、サウンドデモ大好きでアホなことばかりやる、標準語をしゃべれないタナカくんなどは、どこからどう見ても大阪商人だった!!! いやー、すごい!! この行動パターン、香港人と酷似している!(あっ、香港の報告はまた次回!)

 これもう、東京に居ながらにして大阪にいる感じ。これがなんとかBARの醍醐味なんだけど、この日は特に大阪人が大挙してやって来てるので、本当にタダで大阪に行けた感じ。新幹線往復約25000円分得した!

シャッター商店街&セルフ祭!

 さて、そんな感じで盛り上がりつつ、夜も更けてくると、さすがに少し落ち着いてくる。で、ここからがまたいい。高円寺を中心に東京で場所作りをやってる人、脱原発デモをやってる人などいろんな人と、関西圏の人との交流が始まる。東西のデモ文化の話や、問題点などの話も盛り上がり、かなり面白い話に! それもそうだけど、特に今回押し寄せて来てる大阪人、なにやってるかと言うと、今一番熱いのがシャッター商店街の活性化だという。通天閣のふもと、新世界エリアにあるシャッター通りがあるんだが、そこでいろんなアーティストやミュージシャンが集まって「セルフ祭」というイベントをやったところ、これがまた大好評で、地元のオッチャン、オバチャン達も大喜び。その勢いで、その商店街の人々と仲良くなって来て、みんなでその商店街のドブ掃除をしたり古いアーケードを修理したりして、なんだかんだと町づくりをやってるという。で、いま店を借り始めていて、重鎮の商店主達と一緒にいろんな店を作ったりしてローカルな街を賑わせていこうということをやってる。なるほど〜、これ、まさに高円寺の北中通り商店街と似たような感じ! これは面白い!

 「時代はさびれた商店街でしょ!」などと盛り上がり始め、シャッター商店街同士のイベントでお互い出店し合ったり、「全国シャッター商店街連合会」を作ったら面白いんじゃねえかとか、いろんな案が出てくる。シャッター会社をスポンサーに付けても面白いかもしれない。各シャッター商店街の首脳が集まって、地方のシャッター街視察(意味ない!)とかもヤバすぎる。ともかく夢は膨らんでくる!(?)。

 よし、Googleの画像検索で「シャッター商店街」と検索(これ壮観!)すると、上位に出て来てしまうエリアの諸君! 連絡求む!!!!!! 我々のローカルエリアをなんとかしよう!!

大阪人の大荷物の中を見せてもらったらこの有様

 いま、世の中原発をやめるやめないで大騒ぎになっている。こんなものはもちろんすぐにでも無くさなきゃいけない。でも、去年の原発事故以来、「原発要らないでしょ」という意見がここまで大きくなって来たのに、それを政治家や財界の連中は余裕で無視できてしまうような構造が、この世の中にはあった(新発見)。こうなった今、もちろんもっと反原発の声を大きくして原発を止めなきゃいけないと思う一方で、高度成長以来(いや、明治以来かな?)金もうけばっかりを優先して来たおかげで、原発に代表されるような薄暗い利権の権化みたいな奴らがテコでも動かないという、かなり根本的なところが、いま日本は腐ってるんだな〜、とも思う。で、これって要するに全部自分たちのことをお上に任せちゃってきたから、そういう政治、社会、金などをテコでも動かない奴らに握られちゃってるのかもしれない。

 そんな時! やっぱりここは原点に返って、ちゃんと自分たちの街は自分たちで作るということが最重要だ。高度成長のなれの果てに地域コミュニティも壊れ、ニッチもサッチもいかないいまの世の中、ここはひとつ「自分らの生活圏をなんとかする」ってことをやらないとどうしようもないでしょ。そう、自力生活圏が少しでも復活してくれば、なんでも行政や巨大企業頼みっていう構造も変わってくるし、そういう変化によって、誰もがキケンだと思ってる物が復活するようなことにはならなくなるに違いない。いや〜、希望はシャッター街にあるね!

 さて、そんなこんなで盛り上がりながら、翌日、全員二日酔いの状態で、代々木公園で行われた「さようなら原発10万人集会」へ。ここで、少し挨拶したんだけど、勢い余って「大阪のセルフ祭がヤバい。これからは謎の場所作りをしまくっていくことが実は脱原発の根本解決でしょ! デモと場所作りの並行作戦で行こう」という、謎のスピーチ。関係ないけど17万人も来たんだって。これはすごい!

 そんなわけで、デモ後は大阪衆とまた一杯飲みに行き、商店街作戦の続きを話しつつ、彼らを大阪へと見送った。最後はちゃんと標準語をしゃべれない上に目が悪いタナカ君がメガネを忘れて帰るという、「どうやって帰ったんだよ!」というツッコミ待ちのお約束のオチまで付けて帰っていった。いや、さすが大阪人。恐れ入りました!

この大阪反原発デモの様子を見よ!! 通天閣神輿!

【スケジュール】
7月23日(月)
「賢者のBAR」
 高円寺「なんとかBAR」にて! 
20時頃からオープン!

7月28日(土)~29日(日)
セルフ祭
10~19:00頃まで。新世界市場にて!

http://selfmatsuri.ojaru.jp/

8月4日(土)

ビックリ仰天! 大阪脱原発デモ

*詳細未定

 

  

※コメントは承認制です。
第63回 マヌケ大阪人来る。脱原発への近道をついに発見!」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    大挙して押し寄せた「マヌケ大阪人」の影響なのかなんなのか、
    いつもよりさらにテンション高めな松本さんですが、
    「場所作りが脱原発の根本解決!」との指摘は鋭い。
    たしかに原発はなくなったけど、気づけば別の「原発的なるもの」に支配されていた--。
    そんなことにならないように、やっぱり自分たちで
    「街の力」をつけていくことが重要なのです。

←「マガジン9」トップページへ   このページのアタマへ↑

マガジン9

まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

最新10title : 松本哉ののびのび大作戦

Featuring Top 10/47 of 松本哉ののびのび大作戦

マガ9のコンテンツ

カテゴリー