松本哉ののびのび大作戦

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 伊勢志摩でG7が開催されたそうで、気付いたら終わっていた。
 今回はつまらなかったね〜。前回日本でG8が北海道で開催されたときは、各地から大量の反G8活動家がやって来た。本気中の本気で怒りまくって殴りまくる寸前で夢にまでG8が出てきてそうなテンションの活動家がいた一方で、なんだかマヌケな活動をしてる人とか、狂ったアーティストとか、とんでもない人たちもそのドサクサに紛れてたくさんやって来ていた。そういう、超怒りまくってる人の周辺にいて、なんだかんだと変わったことをやってる人っていうのはすごい面白い人が多い。しかも、面白い変なことやってる人というのは反体制側のほうに圧倒的に多いのでなおさらだ。当時、自分はそこまで積極的に反対運動に関わったわけじゃなく、ちょっと参加しにいった程度だったけど、それでも大量に面白い友達ができた。そんな世界各地のやつらと知り合うことができたおかげで、いろんな活動や遊び方、変な場所作りなどのことを知ることができて、こちらとしてもすごいいい経験になった。さらには、海外に行く時にその辺の人たちのところに訪問すると、「おお、オマエはあの時のバカか!」と、お互いに思い出して、一緒に遊んだり、面倒を見てくれたりと、楽しいことがたくさんあった。
 当時の状況は、リーマンショック以降の世界経済大混乱の前で、まだ先進国が大きな顔をしていられた最後の頃だったのかもしれない。それ以降は、ヨーロッパをはじめ経済が破綻寸前になるところも続出し、日本も含め、旧来の先進国も全然パッとしない感じ。で、一方で南米やら東南アジアやら中国やらは成長しまくりでどんどんでかい国になってくる。当時加入していたロシアも欧米と仲が悪くなってG8をやめちゃった。と、なってくると、もう世界での影響力も低下し「だいぶ前、世界で威張ってました」っていう謎の7人衆なんて集まったって大した意味もない。バカバカしい!
 そんなわけだから、影響力の低下と同時に反対運動も尻すぼみ。かつてのように「世界のことをごく一部の金持ち先進国で決めるな!」という怒りもそこまで湧いてこない。もちろん怒りまくっている正義の権化みたいな人たちは反対しまくってると思うけど、世界の面白いマヌケな人たちまでへの波及効果は少なく、日本へやってくる反G7の人たちも少なかった。う〜ん、残念!
 しかし、最もマヌケなのはG7サミット側の人々。強引に各国を回ってサミットを開催しまくるもんだから、やれ警備だなんだって莫大な金がかかる。おまけに有力な首脳が集まるという、いかにも狙われそうなイベントを各国たらい回しで交互に開催して、もうロシアンルーレットみたいになってる。で、あぶねえあぶねえと、コインロッカー全部閉鎖したり、検問だらけだったり、各地の警官も全部かき集めてホテルも満室になっちゃったり、もう勝手に大パニックになってる。それ、やんなきゃいいじゃねえか、サミットとか! しかも、ロシアが抜けちゃって、回ってくる頻度が早くなってきた。イタリアとかカナダあたりが「あのう、うちもぼちぼち、このへんでひとつ潮時ということに」なんて言い出してもっとスピードが早くなったら事だ。どうせ日本はアメリカに逆らえないんだろうからG2になるまで残りかねない! やばいやばい! こうなったらサミット警備の打開策をみんなで考えるしかない!

離れ小島

 大海の真ん中の、超安全な島にみんな集まってやったらいいね。しかも、移動しないで毎年この島で開催。その島に国籍があると問題もあるかもしれないから、無国籍のサミット島を作って、そこで開催。最近、都市じゃなくてリゾート地や超田舎で慰安旅行みたいにやってるようなので、流れ的にもいい。ただ、影響力もなくなってきたのに誰も知らない小島に老人たちが集まって世界の事を勝手に決めたりするのもちょっと寂しそうで、「こんな小さい島はいやだ! もっと目立ちたい!」と、言いだす可能性はある。

船の上

 これもいいね。無人島みたいに安全な海の上で開催したら、島同様、コインロッカーやら検問の問題もないし、安上がりにすみそうだ。ただ、動けるのはちょっと危険だ。影響力低下を薄々感じ始めている7人衆、それぞれだとパッとしないので束になる可能性がある。ウクライナや中国、中東など、紛争を抱えているところの近くにわざわざ船を浮かべたりして存在感を出そうとしたりしそうだ。これはこれで火種をまいて回るみたいでよくない。あるいは逆に、ふとした事でイスラム国あたりの怒りを買って追いかけられ、全速力で逃げたりするのもマヌケそうだから嫌がるかもしれない。

国際宇宙ステーション

 どんなテロリストからも狙われないし、反グローバリゼーションの不穏なデモ隊なども近づく事すらできない場所はやっぱり宇宙。そう、俺たち先進国には国際宇宙ステーションがあるではないか! そもそもあの宇宙基地だって各国の民衆から巻き上げた税金をかき集めて作ったんだから、そろそろ目立って何か役に立つ事でもしないとやばい。よし、宇宙だ宇宙だ! 無重力状態で優雅に会議してやる! これるもんなら来てみやがれ! …と、首脳が各国からロケットで宇宙に向かったところ、爆発して一人減っちゃったりしても一大事だし、宇宙ステーションが壊れて宇宙のどっか遠くへみんなで流れていっちゃったり、太陽の方に吸い込まれていったりしたら大変だ。あるいは、帰りの便が壊れて首脳満載のままグルグル地球を回り始め、7人揃って「助けて〜」という映像がNHKニュースでお茶の間に流れたりしても天下の晒し者だし、田舎の展望台などから地元の不良中学生あたりに「おい、おまえも見てみろよ。バカな奴らが乗った漂流船が見えるぜ!」なんて言って覗かれるのもムカッと来るはずだ。また、日頃から命をかけてコツコツ研究している宇宙飛行士の人たちに「なんだこいつら、いい時だけやって来て政治に利用しやがって!」と怒りを買ったりしたらそれこそ大変だ。宇宙での首脳など赤子も同然。宇宙食を犬用のとすり替えられたり、酸素を若干薄くされて四六時中ションボリさせられたりする可能性すらある。これは危険だ。地上みたいに威張れない!

アパート

 あまり派手な事は危険だ。ここはひとつ、テロリストや過激派が地下に潜行しているのと同じように、G7も隠密にやるという手もある。ま、日本で言えば六畳間にキッチンがついた程度のアパートだ。これならばれまい。みんな、こっそりサラリーマンの格好をして「おーい、帰ったぞ〜」とサミット会場に到着。あるいは保険や墓の営業のふりをして「すいませーん、もう墓地はお決まりでしょうか」などと会場入りしてもいい。ただ、オバマやメルケルなど、あまりにもテレビで見た事がある顔だとちょっとまずい。そんな時は顔がばれないように托鉢僧でもいい。それならあまり喋らずに“チーン”と、鐘を鳴らしとけばいいから安心だ。ちょっとキリスト教国の人たちに托鉢僧やってもらうのも気まずいが、これも隠密行動を貫きテロを未然に防止するためなので仕方がない。
 さて、無事アパートに入れたらもうこっちのもの。完全にリラックスした首脳たちは、セールスマンや坊さんの格好のまま、「いやあ、夏至も近くなると暑くなるねえ。お先に失礼してひとっ風呂浴びさせてもらってもいいかね」「いや、まずは乾杯が先だろう、キミ」などという会話で親睦を深める。奥の六畳間の座卓の上には準備された料理がずらりと並ぶ。煮物、焼き魚から天ぷらに刺身、酢の物…。「いやぁ、これはずいぶん豪勢ですなあ」と、オバマ。冷たく冷えた瓶ビールを手に取りお互いついで回り「じゃ、まずは一献」と乾杯。いきなり政治の話ってのも、どうも肩肘張って良くないので、天気の話から始まり、上司に怒られた話や、ダメな部下の話をしてみたり、風呂に入って浴衣に着替えてみたり、プロ野球中継に見入ってみたり。そして、いよいよ本題。誰かが「しかし、世の中もなんだな、最近」と、口火を切る! いよっ、まってました! 程よくお酒も回っていることもあり、天下国家の政治話に花が咲く面々。時には勢い余ってつまらないことで口を滑らせ、カンカンガクガクの言い争いになったり、ベロンベロンになって「俺はそうは思わねえな!」を20回ぐらい繰り返したり。そして、宴もたけなわ、世界の政治話を心ゆくまで吐き出したあと、「じゃ、麻雀でもやるかね」と、閉幕。しかしここは忘れてはいけない隠密な極秘会議。最後に閉会宣言で、「いやあ、みなさん、今日の話はすべてなかったことに」。
 なんだ、じゃあ、やっぱりやんなくていいじゃねえか!

 さて、人のためを思って色々と策を練ってみたものの、だんだんバカバカしくなってきたので、他人の心配するのはもうやめた! まあ、Gナントカの人たちには勝手にやっててもらって、こっちはこっちで勝手に国境を越えて集まるのがいい。そう、前回もお知らせした9月に行われる東アジア大バカ集結作戦がいよいよ進んできている。アジア圏各地の謎のオルタナティブスペースを運営してる奴らなどが一堂に会するとんでもないイベント! その準備イベントも徐々に行われてきているんだけど、来たる6月11日には、台湾のマヌケな男を招待して、作戦を練るイベントを開催! G7サミットよりは意味があるはずだ!!!

この非常に渋いエリアの奥にあるのが6月11日のイベント会場。
どんな世界が広がってるかは来てのお楽しみだ。

【スケジュール】

東アジア大バカ東京集結作戦/景気付けイベント!
2016年 6月11日(土)

★LIVE
GERONIMO RABEL/村上豪/謝碩元

★TALK
謝碩元(台湾)
講演「東アジア圏の大バカは集まるしかない!」
ほか、9月計画についてなどの話

★映画
謝碩元推薦の台湾最マヌケ超短編映画を一挙上映!

—-
自由ヶ丘「Rock’n’Roll BAR 振り逃げ屋」
東京都目黒区自由が丘1丁目13−10
19:00 start 2000円(飲み放題)

 

  

※コメントは承認制です。
第92回 G7サミットが人知れず終わっていた! 〜その今後の方策」 に2件のコメント

  1. magazine9 より:

    サミット参加が「大国のあかし」だった時代はもはや遠く、いまや単なる「ロシアンルーレット」!? 「それ、やんなきゃいいじゃねえか!」の言葉に、思わずうなずいてしまいました。しかめ面した「エライ人」ばっかりに世の中を動かさせておくなんて、もうそんな時代じゃないのです。国境越えてつながって、どんどん面白いこと、やらかしちゃいましょ。

  2. 自由が丘みたいな、日本全国景気悪くても潤ってる格差の頂点みたいなところで、あえてやらんでも…。

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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