松本哉ののびのび大作戦

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 最近、日中韓首脳会談があったり、台湾と中国の首脳会談があったりと、なんだかアジア圏の首脳たちが会合を繰り広げ始めた。う〜ん、どうでもいいね。どうせ金や権力を持ってるやつらは、自分らの都合でケンカしてみたり突如和解ムード出したりしてるんだろうが、我々庶民からしたらなんの関係もない都合に違いない。そんなものにいちいち振り回されてヒヤヒヤしたりホッとしたりさせられるほどヒマ人ではない。…っていうか、遅い! 首脳たちが一芝居うつ数ヶ月前、我々アジアの大バカな民衆はすでに、アジア圏のマヌケ連帯のイベントを決行していたのだ! 残念だったな、各国政府の諸君。そんな茶番劇の効果が一挙に吹き飛ぶぐらい、我々アジア圏のマヌケたちは、すでに取り返しがつかないぐらいのスピードで結託し始めているのだ。ざまあみろ! お前らなんか、そのうちほっとかれてさびしい思いさせてやるからな。やーいやーい、バーカバーカ!
 と、いうわけで、前回の続き。東アジア反戦大作戦の台湾。ちょっと今さらかもしれないけど、いいタイミングなので紹介してみよう!

 アジアマヌケ界のエース=台湾。こいつらは手強い。8月末に日本各地ほかいろんなところで行われた作戦を受けて、1週間遅れの9月5日に独自の反戦大作戦を決行するから遊びに来いという。う〜ん、そう言われたら行くしかない。何をしでかすのかというと、「戦争なんてバカバカしいから、アジア各地のマヌケなやつらが集結して、勝手に平和条約を結んじゃおう」という。おお、いいね、その発想! 本来は行く予定ではなかったんだけど、最高にバカバカしい企画と、台湾のやつらの「絶対来たほうがいい! 来ないと後悔するよ!」という、口から出まかせの誘いにまんまとはまり、勢い余ってチケットを購入。すぐに飛行機に乗り込んだ!

 さて、9月5日。会場はなんと台湾総統府前。台湾総統府って、日本で言えば首相官邸と皇居を足したようなもの。現場に到着してみると、そこにはすでに「東アジア大バカ平和会議」のでかい横断幕が翻っている。う〜ん、これはバチ当たりでいい感じだ! そもそもこの場所、そんじょそこいらのイベントじゃこんな広いスペースを借りることはできない所。イメージとしては東京駅から皇居前広場に抜ける巨大な道みたいな場所。こんなところを恐れ多くも車道の6車線中5車線も使っている。これは大掛かりだ! で、台湾のマヌケ衆いわく「1万人集まるって警察署に申請したからうまく取れたよ〜」という。しかも普通に申請しても却下されるので、謎の新団体の名前で申し込んで、テーマが「反戦、反核、反政府、反差別、反資本主義、反貧困」で、1万人が集結予定と大ハッタリをかまして許可を取ったという。さらに「でも、これでバレるから二度と許可は出ないだろうね。でも、次はまた別団体で出せば大丈夫。ハハハ〜」だって。うーん、台湾のやつらいいセンスしてるな〜!! で、もちろん実際1万人も来るわけはない。せいぜい2〜300人ぐらいがわらわらと集まってきて、いきなり台湾ビールを配りまくっている。完全にピクニック状態だ。

 さあ、そんな広々とした総統府前で何をやるかというと、各国、各地域代表のマヌケたちによる平和協定の調印式。しかもなんと、丁寧にリハーサルから。台湾、中国、香港、フィリピン、日本、韓国のバカ代表団が入場から条約の条文確認、そして調印。しかも、我々を誘うとき、「各国代表が集まるんだから日本も来るしかないよ。来なかったらうちらが勝手に代わりにやっちゃうよ。どうなっても知らないよ〜」というので焦って駆けつけたんだが、来てみたらどこの代表団も来てない。うちら以外、全員台湾人じゃねえか! ギャー、だまされた! さて、その代わりに演じる代表団がすでに完全になめている。台湾は檳榔(台湾の噛みたばこ)を配りながら台湾語で話すオッサン。中国は謎の伝統芸人。香港は香港マフィア、フィリピンは浅黒く日焼けしたボクサー、韓国はK-POPで踊りながら辛ラーメンを食べる人。それぞれ各国代表団に扮して颯爽と登場! う〜ん、日本代表団としてはドラえもんのテーマ曲をバックに土下座とハラキリをするしかなかった! しかし、こんなくだらないことをやたら熱心にリハーサルするところがまた台湾のやつらの計り知れない底力。

 さて、本番に入り選手入場が終わったら、まずは東京・阿佐ヶ谷で行われたアジア反戦大作戦の映像も上映して解説。車がひっくり返される映像で「イエーイ!」という陽気なテンション。お次はマヌケ平和条約の調印式。まずは、一条ずつ確認するんだけど、この草案がまたいい。これ書いたのも台湾のやつら。最後に載せておくので、ぜひ読んでもらいたいんだけど、これまたすごいバカなこと書いてるようで、実は結構筋が通ってる上に核心を突いてる。おい、やつらただのバカじゃないぞ!!!!
 そんな感じで、条約は見事に成立! 全員で握手して、ヤケドするぐらいの花火が焚かれ(台湾総統府前、自由だな〜)、記念撮影。
 さあ、マヌケ文化圏での国際紛争はもう未来永劫なくなった! これはめでたい!!!!! ということで、あとはすでに革命後の世界。やることは楽しむしかないってことで、準備された大パーティーが始まった! まず、総統府前に張り出された巨大スクリーンでゲーム大会が始まる! 「実際の戦争の時代は終わった。あとはゲームの中だけで十分だ」と、ストリートファイター2をはじめとする古典的な格闘ゲームをやり始める!(←国別に戦えるので、なんだか盛り上がっている!) そして、そのすぐ隣のステージではこれまた大画面を使ってカラオケ大会。缶ビールを片手に古い歌謡曲を熱唱(ここは総統府前)。そして、突如、謎の黒い大きな箱がいくつかステージ前に用意され、カラオケを歌いながら男たちが一人ずつ各自箱に入っていく。上半身だけ出るぐらいの大きな箱。何かと思えば「集団的自衛権より集団的自慰権を!」だって! バカすぎる!!!!!!!!!! 何を隠そう、中国語で自衛(ziwei)と自慰(ziwei)が同じ発音。余談だけど発音だけ聞いたら自衛(ziwei)隊なんて大変な集団になる。ということで、集団的自慰権が行使されるとみんな大爆笑でヤジを飛ばしたりしてる(総統府前)。これはヤバい、アホすぎて戦争など起こるわけがない! いやー、まいった!! 台湾世界最強だ。

 コーヒーやアイス、手作り雑貨などの露店が出たりする会場で、歌って踊って飲みまくっての大騒動。夜になってくると人も増えてきて、やたらと盛り上がってくる。一応、警備の警官も配置されてるんだけど、みんなマヌケな顔をしてのんびり仕事してていい。日本の警察だったら「なにが反戦、反政府だ。なにが1万人だ! だましたな!」と怒るところだけど、こっちはまた違う。警察たちも「いや〜、いいね。今日は仕事が楽で」みたいな感じ。みんな楽しそうでいいね〜、とばかりにその辺をぶらぶらしている。日本はちょっと特殊社会で、民間でも役人でも、頼まれてもないのに必要以上の仕事をしようとして、よけい自分たちの社会を窮屈にしている感がある。これ、欧米でも中華圏でも東南アジアでも、考えられない。なんだか、優秀な奴隷か牢屋の看守みたいなやつらばっかりの世の中になったら嫌だね〜。ま、どうでもいいけど。
 で、そのまま朝までパーティは続き、道路で寝る人、朝までカラオケで熱唱する人、飲み続ける人、コーヒーを飲んで優雅な朝食を食べる人。いろいろ好き勝手やりながら、最後に片付けて地下鉄の始発ぐらいで解散となった。いや〜、本当にすごいイベントだった。

 その後の数日間は、高円寺に訪ねて来てくれたりして新しく知ったスペースや友達を訪ねて回る。みんな、古い一戸建てを若い芸術家が借りてスペースを作ってたり、美容室の地下室の空いてるスペースを貸してもらってカフェをやってたり、みんないろんな隙を見つけて面白いことをやっている。いいねー。ひたすら遊び歩いたり飲み歩いたりするだけで、謎の地下文化が取り返しがつかないぐらい繋がってしまうので、こんな楽で楽しいことはない。あ、ただ、もちろん、一口にアジアのやつらと仲良くしようって言っても、大きな問題を全部ごまかしてただ仲良くすればいいという問題ではない。もちろん、それぞれ「日本は戦争の時だいぶ悪いことやってまだ反省してないでしょ」とか「中国は一つ」とか「台湾は独立すべきだ」とか「香港は中国ではない」とか、いろいろ考えを持っているはずだ。ただ、こういう問題は仲良くしながらやらないと解決しない問題。例えば、醜い一族の遺産相続で財産の奪い合いとか始まったら、やつら金の亡者と化していつまでもケンカしてる。一方で、仲間と店やシェアハウスを始めるときに役割分担や内装のセンスで揉めたり、イベントをやるときに機材とか出演や展示の場所や順番で揉めたりした時は、たいていはさっさと解決してしまう。欲が絡むと泥沼化するけど、前向きな時の人間の問題解決能力ってハンパじゃないからね〜。ま、ともかく、しょうもない首脳たちにやらせてたら地球が滅ぶまで同じことやってるだろうから、あいつらはほっとくに限る。未来を作るのは民衆だ。さ、ってことで、アジア圏の大バカたちの交流、次行ってみましょう〜
 で、ここで大事になってくるのが中国! これがまた面白い。…と、いうことで、行ってまいりました、上海! いやー、すごかった! …、あれ? もう文字数足りないじゃねえか! と、いうことで、次は中国地下文化事情! また次回お楽しみに!!!!!

【おまけ】
東アジアマヌケ独立平和条約
(台湾原文+日本語訳)

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第一條 維護和平我超努力的好不好!
締約國遵守太陽系憲章的規定,如遇國際紛爭,概以世界賭神慈善大賽PK解決 (船到公海了沒?),旨在縮小貧富差距,發揚傳統國粹。至於領土完整、主權獨立等,不得凌駕賤民福祉與搗蛋權利。締約國政府如有妄稱聯合國精神或世界和平 而擅加擴權或打壓人民情事,禍首強迫灌屎,從犯脫褲遊街,財產全數充公,支應賤民菸酒支出,以昭公信。

第一条 平和を守るために超努力しましょう!
締結国は太陽系憲章の規定に従い、国際紛争にあった場合、世界ギャンブル慈善大会対決で解決する。主旨は格差を縮め、伝統的な技巧を広める。領土、主権、独立、または賎民の福祉、悪だくみをする権利を侵害してはいけない。締結国の政府が、国連の精神または世界平和のためなどと言って、勝手に権力を拡張したり、または人民を抑圧したりすることがあれば、その首謀者には糞を飲ませ、共謀者は裸で市中引き回しの上、財産は全部没収し、賎民たちの酒代とタバコ代に充てる。これで公に示しがつくでしょう。

第二條 經濟合作老子說了算!
締約國通過攜帶各自名產,強化跨國物物交換的各種制度。若有拜訪必帶名產,作為跨國合作的最優先要務。禁用各國貨幣,改以東亞笨蛋元取代之,其購買力由雙方議定,但僅限用於採購各國小店商品及勞務。

第二条 経済協力は自分らで勝手に決める!
締結国はお互いの名産品を持ち寄ることを通じて、国際の物々交換の各種制度を強化する。もし外国を訪問する場合、必ず名産品を持って行くこと。これは国際協力の最優先要務である。各国の通貨を使うことを禁止し、東アジアマヌケ貨幣でこれにとって代わる。その価値は双方で議定するが、各国の小商店や労務の購買のみに使う。

第三條 假自衛真侵略的時代結束了!
茲 因日本國憲法第九條和平精神橫遭踐踏,特此宣告第九條內容「脫憲入刑」,舉凡涉及假意維和、實質侵略、擴軍恫嚇、軍演要脅、戰略結盟、軍武貿易暨技術移轉 等,一概求處 6000 年以上有期徒刑,併科 70000 箱啤酒以上罰金,褫奪公權十九世,世世投胎就得痔,內痔長完生外痔,外痔一割就失智,失智之後再去勢。

第三条 「ニセ自衛・実は侵略」の時代は終わった!
日本国憲法第九条の平和精神が踏みにじられたことを受けて、ここに第九条の内容の「脱憲入刑」を宣告する、偽の平和維持、実質は侵略、軍拡による恫喝、軍事演習による脅し、軍事同盟、武器貿易及び軍事技術の輸出入など、すべて懲役6000年以上(実刑)、さらにビール70000箱以上の罰金を科し、公民権剥奪19輪廻、生まれ変わっても痔になり、内痔の次に外痔になり、外痔をとったら認知症になり、認知症になったらさらに去勢をする。

第四條 隨時協議
締約國得就本條約實施,隨時展開協議,除了喝醉與睡著外,經締約國任何一方片面要求,隨時進行重新協商,拒絕對談的是小狗。惟前列除外條款仍應保障喝醉亂講話與睡著說夢話之合法效力。

第四条 随時協議
締結国は本条約を実施し、随時協議をすることができる。酔っ払ってたり寝てる時以外は、締結国一方の任意の要求に応じて、随時新たに協議することができる。協議を拒んだら腰抜けである。ただ除外事項として、酔っぱらって適当に話してたり、寝言を言ったりする合法性は守られるべきである。

第五條 共同防衛胡鬧人權!
締 約國笨蛋賤民和平玩樂期間,得視情況僭越一切社會秩序善良風俗,玩樂自由若遭威脅,其餘締約國同志皆須採取行動,發動娛樂革命,搶奪休閒權力,打倒一切封 建禮教,籌建派對臨時政府,強制施行歡樂戒嚴與通宵不禁,皮笑肉不笑者一律送交軍法審判,正經八百者水槍槍決 800 次,盡興始得無罪釋放。

第五条 バカ騒ぎの人権を共同で防衛する!
締結国のマヌケや賎民たちが平和に遊んでいる期間、状況に応じて一切の社会秩序や善良風俗を僭越することができる。もし遊ぶ自由が脅かされた場合、その他の締結国の同志は行動を起こし、娯楽革命を発動し、レクリエーションの権力を手にする。一切の封建礼儀を打倒し、パーティー臨時政府をつくり、強制的に歓楽戒厳およびや夜間外出解禁令を実施し、うわべ面だけ笑うものは軍法裁判にかけ、まじめに笑わないものについては水鉄砲の刑800回を実施してから無罪放免。

第六條 軍事組織與基地全面廢止!
為 捍衛東亞各國笨蛋和平玩樂、真心鬧事理念,聯合國安全理事會常任理事國暨維和部隊之所有駐軍,應立即撤出笨蛋日常生活工作休閒範圍十萬八千公里,所有軍事 場所、設施與設備,一律就地解編、除役、拆除、充公,改建卡拉 OK 劇場、滑板公園、練團室、酗酒專區、農耕公社、流浪背包客拖車帳篷場、學生情侶愛愛間,以及東亞大笨蛋階級鬥爭紀念公園;嚴禁資本家投標,屬於人民的公共 建設,概由人民親手施工完成。

第六条 軍事組織および基地の全面禁止!
東アジアの各国のマヌケが平和に遊び、心からバカ騒ぎする理念を守るため、国連安全理事会常任理事国および平和維持部隊のすべての駐留軍は、いますぐマヌケたちの日常生活、職場、遊び場の範囲より10万8千キロ以上離れたところに撤去しなくてはいけない。すべての軍用地、施設および設備については、直ちにその場で解編、兵役解除、撤去、没収し、カラオケ店、スケボー公園、バンド練習室、酒飲みまくりエリア、農耕公社、バックパッカーのトレーラーキャンプ場、学生カップルのセックス部屋、および東アジアの大マヌケ階級闘争記念公園を代わりに設立する。資本家の入札を厳禁し、人民の公共建設とし、人民の自らの手により施工完成させる。

第七條 與聯合國憲章的關係
干我們屁事。

第七条 国連憲章との関係
へのカッパ。

第八條 批准
本條約簽訂完成立即生效。

第八条 批准
本条約は調印すると直ちに発効するものとする。

第九條 日美安保條約的實效
東亞笨蛋和平協議既然基於太陽系憲章,其效力優於日美安保條約,故自本協議簽訂後,日美安保條約在締約國的笨蛋身上即已失效。

第九条 日米安保条約の実効
東アジアマヌケ和平協議が太陽系憲章に基づくのであれば、その効力はおのずと日米安保条約より優れ、ゆえに本協議調印後、日米安保条約は締結国のマヌケにはすでに失効しているものとなる。

第十條 條約的終了
只要這個世界上還有戰爭,東亞笨蛋就跟這個世界沒完沒了。

第十条 条約の終了
この世の中に戦争がある限り、東アジアマヌケどもはこの世の中にイエスとは言わない。

起草於2015.09.1 東亞某處
2015.09.5 発効

 

  

※コメントは承認制です。
第89回 台湾総統府前に東アジアの大バカがついに集結!!」 に2件のコメント

  1. magazine9 より:

    なんだか面白いことがどんどんと拡大している様子。「えっ、そんなところで、そんなことしていいの?」とついマジメに思ってしまうのですが、思えばもっと「そんなことしていいの?」と突っ込みたくなるようなことが、いまの政治にも満載でした。次回の上海報告が気になります。

  2. SEALDSの皆さんも誘ってやって欲しいな〜♪

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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