松本哉ののびのび大作戦

manga

 国があれば税金がある。ま、国があるといろいろと個人じゃ出来ないことなんかをまとめてやってくれるので、それ自体は問題ない。ま、多少の税金はしょうがないかと思って日々の生活をしていると、どうも様子がおかしい。日々の給料からは所得税なるものが引かれており、収入が多くなってくるとそれなりに取られる。で、仕事中にタバコを一服すると10cm中5センチ以上は税金。仕事帰りに缶ビールを飲んだら、これまた半分近く税金。休日や仕事で車やバイクに乗ったら、ガソリンも半分ぐらいは税金。もちろん、その車にも毎年払う自動車税がかかっている。車もバイクも持ってねーよ、って人、甘い! バスやタクシーの料金にも当然その税金分は入っている。親が死のうもんなら一大事で、実家のボロい家が資産として謎の計算をされて莫大な相続税が取られる。国はずいぶん持ってくな、こんちくしょうと思ってると、その隙を見て今度は市役所やら区役所なんかから「税金払え」という催促の通知が来る。「このやろう! 日々さんざん払ってるよ!」と文句を言ってもムダで、役所のやつら「それは国税で、市町村などの地方税はまた別なんですよ」と、いかにも安定した給料をもらってそうな口調で反論してくる。クソっ! 頭に来て「なんだてめえ、オマエなんか死んじまえ! ドロボー! バカ!」と正当な主張を展開しても、「私も税金払ってますから」などとヘリクツをこねる。コンチキショー! 挙げ句の果てには「場合によっては、あなたの財産を差し押さえる可能性もありますので」などと、機械的に原稿を読むように言い始めたりもする! わかったわかった、俺が悪かった。もういいよ。末代まで呪ってやるからな!!!!
 と、ムシャクシャしていると、お次ぎに登場するのが毎度おなじみ消費税だ。今度は酒だの車だのタバコだのじゃなくて、全部にかかってくる。まったくヒドい話で、何かを買うとなったら片っ端から税金を取られる。八百屋で大根を買っても、パン屋で食パンを買っても、国に金を払う。まったく、悪いことも贅沢もしてねえのに・・・。ちなみに、思い起こせば20年ちょっと前まではそんなものなかったのが、「どうしてもないとやって行けない」とのことで強引に3%取られるようになり、ちょっとしたら「足りない」と言い出し5%に。で、今回はまた「全然足りない」とのことで4月1日から8%になり、もうすぐ10%に上がるという・・・。消費税は全部福祉のために使うとか体のいいこと言ってるけど、昔に比べて一割も福祉が増すとは思えない・・・。
 コラー!!!!!!!!!!!!!!!!!! ふざけんな、オマエ!!! 取りすぎだよ!! 何に使ってんだ、おい! いろんな税金が上がるばっかりで、下がったためしがないじゃねーか! で、また役所とケンカになっても、どうせ「いや〜、法人税の減税はこれまでも何度もやってるんですけど・・・」とか公務員みたいなこと言い出す。法人税って企業でしょ? 金持ってない庶民から巻き上げて、もうかった大企業の税金はオマケしてあげるって、こんなアベコベな話あるか! で、また役所に言っても「いや〜、企業のみなさんからも消費税は頂いてますから」と、またヘリクツをこねる。ケッ、もういいよいいよ。知るか! もう帰って寝る!!

脱税しかない!!!!

 ってことで、アホな政治家たちのおかげで今回も目出たく増税!! 町を歩けばほとんどすべてのものが高くなっている。よーし、もう頭に来た! やいやい、脱税だ脱税だ! 帳簿をごまかせ! 所得を隠せ! 納税の督促状を破り捨てろ!!! 税務署かかって来い、バカヤロー。もし本当にかかって来ても、帳簿と通帳を両脇に抱えて裏口の塀を乗り越えて逃げ出してやるからな、ザマーミロ! もう税務署にはビタ一文くれてやんねえ!
 ・・・と、景気よく行きたい所だけど、敵は相当手ごわく、目を付けられたら追っ手が近所の税務署から走ってくるし、あらゆる手を使って銀行口座を見つけ出し、口座を差し押さえられる。更には、追っ手に警察も加わり、お縄になることもある。これは勝ち目がない。くそ〜、なかなかやるな、あいつら・・・。やつらがその手を使うなら、こっちにも考えがある!!! よっしゃ、脱税は延期だ!

目指せ夢の脱税事業!

 でもやっぱり、これだけ税金を払いつつ、さらに増税はどうも腹の虫が収まらない。金持ちならまだしも、貧乏人からしたらこれほど苦しいものはない。いいことに使ってるならまだしも、どう考えてもムダに取りすぎだ。ここはひとつ、少しでも抵抗は試みたい。政治家のやつらは税率を上げれば税収が増えると思ってるのかもしれないが、我々は奴隷ではない。そう単純にはいかない所を知らしめて、悪徳政治家達を悔い改めさせるしかない。ちなみに、よくよく考えたら、脱サラとか脱原発とか脱ナントカって言葉はたくさんあるけど、脱税だけずいぶんと印象も扱いも悪く、犯罪者みたいだ。税金をちょろまかす時だけに使うんじゃなくて、合法的に節税(←この言い方はなんかシミッタレてていやだ)する、さわやか脱税が出来ないもんかね〜。よし、やろうやろう、合法的なさわやか脱税!
 さて。そこで、思い出してもらいたい! なんと、一年間の売上が1000万円以下の事業者は消費税は非課税なのだ。これ、いいね。要するに、一ヶ月の売上が80万円程度のお店やフリーランスの仕事などなど、個人事業主からものを買ったりする時は、本来は消費税がかからないってこと。ただ、1000万円行くかどうかってのは、12月31日までわからないので、どこの店も消費税を取っている。これはまあ、仕方のないこと。じゃ、みんなで頑張って1000万円を越えないような事業をたくさん作ればいい。
 1000万円の売上ってのがまた微妙な数字で、普通に考えたら1人か2人がやっと食べて行けるかどうかって感じ。店舗も事務所も要らない仕事など利益率の高い事業だったら、売上の大部分が収入になることもあるから豊かに暮らせるけど、家賃や人件費などの経費がたくさんかかる仕事とか、小売や委託販売業などの薄利多売系の業種で1000万円の売上ってなったら、実際の収入は貧困の極みだ。まあ、そのへんの有利不利はあるものの、やって出来ない規模じゃない。
 こうなってくると、売上が1000万円を越えたら負け。たちまち課税対象業者となり、のちに8%の消費税を国に払わなければならないし、売値も8%値上げしなきゃいけない。なので、なんとかして12月31日までに1000万円以下に滑り込まなくてはならない。こうなってくると、うかつに繁盛しすぎるとマズいので、12月に年間売上が1000万円に近づいて来たら、早めに年末休みに入っちゃうところも出てくるはずだ。「○○屋さん、10月なのにもう納会やってたよ、景気いいね〜」とか「△商店さんなんか、お盆から冬休み入ってるよ」「××堂なんか1月しか店開けてなかった」ってことになってくる。要は、正月1日から1000万円獲得競争がスタートして、ミッションをクリアした人から仕事が終了していくということになって、どれだけ休みが多いかが豊かさの象徴になってくるという社会。う〜ん、そう考えると、意外といいね、消費税増税。自民党もなかなかイキなことやってくれるね〜。
 で、そうすると、年末には世の中のほとんどの店が閉まってるってことになる。そうなってくると、ここに目を付ける勝負師も出てくる。競争の激しい年の前半は遊び回って暮らし、強豪たちが続々と正月休みに入って行く秋以降に一気に勝負をかける。すべての店が閉まった12月、すべてのものを売る店が突如オープンして、独走態勢で一挙に畳み掛ける!!! これはすごい! しかも、すでにミッションクリアした店から場所を借りればいいので、経費もかからない。その家主も家賃収入など入って1000万円を越えたら一大事だから、よもや店賃など受け取れまい。
 そうこうして、年末商戦にかける一発屋ブームも到来して競争が激しくなってくると、今度は正月スタートダッシュ組が疲弊してくる谷間の夏休みを狙う輩も出てくる。で、みんなが穴場を狙いまくって、一年を通して均等になってくると、今度は一日に2時間だけ開ける年中無休の店が登場したり、意表をついて年末年始を挟んで一挙に2000万円近く荒稼ぎして、約2年間休む店などなど・・・、いろんな手を使う奴らが現れる。もう、ここまで来たら、商店街の立ち話からは「あの人、一年中働いてるよ。お気の毒にねえ」なんて会話が聞こえ、厳格なお父さんは我が子を正座させて「おまえも、一年の半分以上は遊んで暮らすような立派な大人になるんだぞ!」と説教するような時代も近いかもしれない。
 心配性の人は、空いてきた市場に大手チェーン店が乗り込んで来て一挙に顧客をさらうのではないかと思うかもしれないけど、大丈夫。やつらは8%高い。そのうち10%になろうもんなら、より有利になる。もう3%や5%とは訳が違う。15%? 20%!? いいですね〜、景気いい! そこまで来たら商店街地図を作って非課税店は青、課税店は赤で示せば一目瞭然! もう勝負あった!
 あ、ちなみに、我がリサイクルショップの素人の乱5号店は、2店舗経営していることもあり、残念ながら売上は1000万円を越えてしまっている! まんまと課税業者。チキショー、まだ努力が足りないか。う〜ん、これはみっともない。はやく1000万円以下を目指して頑張らないと!!!!

 ちなみに、この小規模経営体の増殖作戦のハードルを下げるためにも、あまりお金をかけずにいろいろ楽しくやる方法ももっと研究して行かないとね〜
 ってことで、目指せさわやか脱税社会!!

 

  

※コメントは承認制です。
第82回消費税が高すぎる!!
〜さわやか脱税社会を目指して
」 に6件のコメント

  1. magazine9 より:

    4月に入って1週間あまり。すでに「増税」実感して怒りがメラメラ、な人も多いのでは? 福祉レベルが上がった気も全然しないのに(むしろ下がり続けてる気が…)、払う税金だけはどんどん上がる。そんな「増税社会」を乗り切るチエ、「さわやか脱税社会」! 「1000万円獲得競争」、想像してみたらなんだか楽しそうで笑えてくるわけですが…「他にこんな手があるよ!」のアイデアも大募集です!

  2. 利益でなく売上が1000万では一人が生きていくのが精一杯だろう。無理がある。

  3. 面白い!
    リサイクルショップの素人の乱5号店も1号と2号に分けてしまえば、クリアできるかも。
    帳簿は面倒だけど。

  4. うまれつきおうな より:

    全ての店が一千万スレスレということはないだろうから、シャッター通りになるなんてありえないだろうが、冗談ついでにいっそ明治時代以前のように穀物を貨幣にするのはどうだろう?表向きは物々交換ということにすれば課税対象にならないのではないだろうか?偽物は作りにくいし、<食べられる>という保証がついているので組織の信用が無くても安心だし、大金(?)は盗みにくいのでビットコインのようなことにはならないと思うのだが。どこかのNPOかなにかが造幣局になってくれないものだろうか。

  5. 外山派 より:

    脱税目当てで週末起業家になるのもいいな!

  6. mugi-roy より:

    飲食で自家製造販売なら年商1千万以下でも十分だと思う。結婚して子供1人くらいはいける。やり方次第。

←「マガジン9」トップページへ   このページのアタマへ↑

マガジン9

まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

最新10title : 松本哉ののびのび大作戦

Featuring Top 10/47 of 松本哉ののびのび大作戦

マガ9のコンテンツ

カテゴリー