松本哉ののびのび大作戦

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 最近、東アジア圏に急拡大を見せている大バカな奴らの謎のネットワーク。もはや安倍首相が相変わらず生き恥をさらしていようが、ふと気付いたら都知事選でなぜか脱原発の人が二人出ていてビックリ仰天したりしても、そんなに動ずることはない。世界マヌケ革命は、国にこだわる人には見えない所で着々と進行している。もはや、どう転んでも世の中はひっくり返る運命にあるのだ。
 さて、そんな時! 台湾南部の台南で大マヌケな奴らが新アジトのゲストハウスを作ろうと頑張っていたのだが、ついに開業したので遊びに来いとの情報が舞い込んで来た。おおすごい! この界隈の連中の所には実はもう何度も遊びに行っていて、よく知っている。非常にまったりとした奴らで、いつ行ってものんびりしており、南国の海辺でお茶を飲んでいたり、泳ぎに行ったり、魚を取って食べてみたり、すぐ「ちょっと一服」と謎の休憩がはじまったりと、メチャクチャのんびりしてる奴ら。一体いつになることやらと思っていたら、ついに完成の知らせ! これは行かないと!!! 本当は「オープニングイベントやるから、ライブも出来るし、アーティストとか誰かいたら出演して」とも言われてたんだけど、さすがに急だったので高円寺辺りのヒマ人たちにも声をかけ、とりあえずオープンイベントに駆けつけた!
 

中庭で真のDIYを見た!

 まずは台北に寄り、ついでと言ってはなんだけど、知り合いが最近オープンしたカフェに行ってみたところ、これまたすごいいい感じのカフェ。基本はブックカフェなんだけど、奥には泊まれる場所もあってゲストハウスも兼ねている! う〜ん、かなりレベルの高い店がいきなり登場していた!!
 さて、その後、台北の仲間に合流すると、当然のように「台南の新しい場所に行こう」というので、一緒に行くことに。なるほど、やはり台湾内は繋がってるね…。散々飲んだあと、翌朝、仲間の車で台湾西海岸をひたすら南下!!
 で、数時間後にいよいよ到着すると、早くもそのゲストハウスではオープニングイベントは始まっていた。門を入ると中庭が広がっており、庭でライブをやっていてそこに人が集まっている。で、この超緩い感じがまたいい。みんなが一挙にイベントに集中する感じじゃなくて、適当にその辺に座ってたり、輪になって何か飲んでたり、踊ってる人がいたり…。この油断しまくった空気感が非常に心地よく、仲間内で演奏して遊んでる感じなのかなと思ったら、その辺の人が「いま演奏してる人、すごい有名なミュージシャンだよ」と教えてくれる。おお、なんだこの余裕と頑張らない感は! で、しかもその辺で拾って来たかのような機材なんかでやってる。バンドのボーカルのマイクスタンドなんか、工場で拾って来た部品を立てて使ってたりして、たまにマイクがポロっと落っこちる。これはヤバい! おい、DIYにもほどがあるぞ! う〜ん、相変わらず、なんだかいいね。この感じ。
 ちなみに、この日は夜11時頃までライブで盛り上がり、おまけに若いやつらばっかりだから、その後は深夜1時ぐらいまで飲みながらガヤガヤしていた。立地も町工場が多いような所だけど、台南の中心部だし近隣には人も住んでいるので、翌日になって、友達に「昨日は大丈夫だった?」と聞いてみると「なにが?」という。「文句とか言われなかった?」と聞くと「なんで?」という。う〜ん、俺が悪かった! 小さなことをゴチャゴチャ気にする人が急増してる日本ならではの発想だったか。しまった! よく聞くと「別に近隣の苦情もないし、当然警察も来てないし、昨日のイベントはよかったね〜」という。台北は直走珈琲(台北最重要の謎の反逆文化スポット)が近隣の苦情で潰れているが、台南はもうちょっと人もおおらかなので全然平気みたい(う〜ん、やはりあたたかい気候は大事なのかな?)。確かに、翌日、隣のオッサンも「昨日やってたね〜」みたいな感じでふら〜っとマヌケな顔をして現れたりしてて、超平和そう。まあ、よくよく考えたら台湾ってお寺の祭とかが突然深夜に始まって、ロケット花火とか爆竹とかムチャクチャ打ちまくったりするような文化。音に関する許容範囲のレベルも緩いんだろう。いや、やはりいい感じだ!

台北にできた『註書店』。おいしい食べ物やお酒もある

整備中のがれきの中に光るDIYマイクスタンド!

東アジア最大規模の謎のスポット出現!!

 さて、午後2時から続く野外ライブも延々と続いていたので、ちょっと抜けて、肝心のゲストハウスを一通り見学してみることにした。で、これがとんでもなくでかい! 軽く紹介すると、一階はキレイなギャラリーになっていて、展示をやっている。ここの一階正面部分はカフェになる予定だという。で、その奥は木工の作業スペースになる予定で、この日はパーティー用にDJブースが置かれていた。2階は用途不明の巨大な大広間があったり、4人部屋ぐらいの客間やら、そこそこ人数が入るドミトリー部屋、小さいリビングのようなスペース、事務所部屋などがあって、一体いくつ部屋があるのかわからないぐらい。さらにその上の階にも、屋根裏部屋を改造した客間があったり、小部屋がたくさんあるエリアが広がってたりして、さらにその上には屋上テラスへの階段が延びている。めちゃくちゃでかい!! さらにこの場所、工場2棟を借りて、それを連結させて全面改装をしているので、造りがかなり独特。いきなり迷路みたいな様子だし、窓の外を見たら隣の部屋だったりして、面白すぎる。最近、東アジア各地を回ってマヌケな奴らのDIYスペースを見たりしているが、その中でも最大規模だね、ここは。いやはや、すごい所が誕生したもんだ!
 一応、この日はオープニングイベントということだったけど、まだ工事中のエリアも残っており、3階などはまだ工事している途中だった。普段は完全にまったりしている台南の人たちも今回はやたらと本腰を入れて動いていて、テキパキといろいろやっていた。完全に勢いに乗っている!

一階はギャラリー。この一帯はカフェになる予定とのこと

正面から見た台南のゲストハウス。奥行きがめちゃくちゃ広い

大部屋は基本的に畳! そうか、台湾ではまだ畳が健在なんだった。これは寝心地が最高!!

廃工場がゲストハウスに!

 この廃工場、実は前に火事で一部が燃えてずっと使われていなかった物件で、これを借りたという。さすがに台南は物価も安いとはいえ、中心部なので家賃もそう安くない。ゲストハウスを始めようと決めてからは、みんなで働いたりカンパを集めたりして金を集め、なんとか物件を借り、その後工場にあった残置物を売りまくって改装費の一部を捻出したりしている。で、今後は7人のメンバーで家賃を負担していくという。
 あと、すごいのがこれだけ大掛かりにやってるにもかかわらず、資金は完全に自力ってこと。どの国でもNPOなんかを作って行政から資金を得るというやり方もあるけど、そうではなく自分たちで全部やってる所は、すごく大事なことだ。台北の直走珈琲の人たちもそうだけど、自力運営をする理由を聞くと、みんな口を揃えて「自由にできないのが一番困る」という。いいね〜、同感同感! 政府の気分が変わったら一瞬で消し飛んじゃうような蜃気楼みたいな場所作ったって、不安でしょうないからね。それだったらまだ経営難で倒産した方が気持ちがいい。もちろん、いい行政システムだってあるので、うまく助成金をもらうのもいい手だけど、どっちにしろ基本的な部分は自力運営ってのが大事なはずだ。
 ま、というわけで台湾南部にも強力な場所が出現したので、これを読んでしまった人は是非泊まりに行ってしまおう!! ちょうど数ヶ月前には高円寺にも素人の乱ゲストハウス「マヌケ宿泊所」が完成したところ。本腰を入れて長期滞在できる場所が増えて来ると、人の交流もさらに深くなって来るし、偶然高円寺に迷い込んで来た人も、「じゃ、せっかくだから次は台南に行ってみるか」となる可能性も高い。
 いま、相も変わらず世界にはくだらないボッタクリ経済システムがはびこっているが、それに対抗するのは、単に節約ではなく、似たような文化圏の奴らの間で金を回しまくって、独自経済圏を作ること。
 よし! こうなったら台南のゲストハウスに100連泊して、金を落としまくって応援するしかない!!!!!!!

拡大を続ける建造中の三階。ヤバいヤバい! 奴ら本気だ

苦情ゼロ

【イベントスケジュール】

■2月7日(金)
釜山の天才がやって来る・前編〜歓迎光臨!geniusライブ

黄金狂時代/a dub/BOOViES/StinkyGuitar/腕白ジャンキーズ/genius(釜山)/トモさん/パンクロッカー労働組合
@Koenji Stujio DOM 19:00open 19:30start

■2月9日(日)
釜山の天才がやって来る・後編〜素人の乱・無国籍集会

トーク:二木信(音楽ライター)/松本哉(素人の乱5号店)/成田圭祐(Irregular Rhythm Asylum)/コヌー(釜山地下文化センター「AGIT」頭目)ほか
LIVE:ジェロニモレーベル(京都)/genius(釜山)
@ASAGAYA LOFT/A 18:00open 19:00start
当日は500円高くなるので、予約がオススメ!!!

■2月23日(日)
街の再開発に抗する日台大作戦トークイベント

林暉鈞(台湾マヌケ活動家)×柄谷行人(期待の新人)×松本哉(聞き手)
@高円寺pundit

 

  

※コメントは承認制です。
第78回 台湾・台南に強力なゲストハウスが出現! 世界マヌケ革命また一歩前進!」 に3件のコメント

  1. magazine9 より:

    今年最初の「のびのび大作戦」は台湾のお話。どんどん息苦しくなってく世の中、あちこちに「場」をつくっていくこと、本当に大事だなあと思います。
    今はなき台北の「直走珈琲」については、以前松本さんが写真入りでレポートしてくれてます。そして高円寺の「マヌケ宿泊所」についてはこちらから。集まること、つながること、もっと自由にのびのび、やっちゃっていいんじゃないでしょうか。

  2. まゆ より:

    初めまして!
    すいません、台南のゲストハウスで検索してたところ、この記事を発見しました。とても面白そうなところなので気になったんですが、宿の名前とか教えてもらえませんか?

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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