イスラム国に人質になり殺害された後藤健二さんについて、「真の勇気ではなく蛮勇」だと断定し、批判している。新聞でこの見出しを見た時、ネトウヨが無責任に書き込んだ文章だと思った。ところが違う。自民党の高村正彦副総裁が2月4日午前、党本部で記者団に語ったのだ。
「政府の3度の警告にもかかわらず、支配地域に入った。どんなに優しくて使命感が高かったとしても、真の勇気ではなく『蛮勇』というべきものだった」
表現は優しく丁寧だが、内容は残酷だ。亡くなった人に対して、そこまで言うか、と思った。「死者に鞭うつ」とはこういうことだろう。たとえどんな状況だろうと、政府は国民を守る義務がある。その為に国家をつくったのだ。どんな考えを持っている人であれ、この国に住む人々を守る。それが国のやることだ。自衛隊は、どんな考えの人も守る。日頃「自衛隊はいらない」「憲法違反だから解散しろ」と批判している人も守る。災害の時も守る。当然のことだ。災害の時、「あなたは自衛隊に賛成ですか、反対ですか。反対だったら助けません」なんてことはない。自衛隊員もそんなことは全く念頭にない。それなのに高村氏は「後藤さんの方が悪いのだ」と言う。政府としてはやることは全てやった。でも、それを無視して行った。こんなものは「勇気」ではない、「蛮勇」だと決めつける。
どんな人であれ、どんな状況であれ、救出する。それが国の義務だ。それに今回は、政府も大いに責任がある。後藤さんたち2人が人質になってることを知りながら、イスラム国と闘う周辺国への支援を表明した。これらの国々と共に闘う、と表明したのだ。配慮のない言葉だ。これが即、湯川さん、後藤さんの殺害になったのか。即断は出来ないが、イスラム国を刺激し、「日本人は敵」と思わせたことは事実だ。だから政府には大きな責任がある。「自分たちの力が足りず、申し訳ありませんでした」とまず謝罪すべきだろう。それが全くない。あるのは、開き直りだけだ。自分たちは3度も警告したんだ。それなのに勝手に行った。自分たちに責任はない。悪いのは後藤さんだ。と言っているのだ。
2月8日(日)、西宮で格闘家の前田日明さんと講演をしたが、前田さんも怒っていた。「政府は国民を守る気がない。こんな政府はいらない」と憤慨していた。「2人は見殺しにされた」「又、戦争になる」という声も会場から上がった。「アメリカに忠誠を示すために『テロリストには屈しない』と言い、結果的には2人を見殺しにしたのだ」「いや、初めから憲法改正に利用しようと思って、2人を見殺しにしたのだ」という声もあった。「事件が起こった初めから、『憲法改正に利用できる』と思ったわけじゃないだろう」と僕は言った。
政府は政府なりに必死に2人を救助しようと交渉した。ところが失敗し、2人は殺害されてしまった。・・・と僕は思っていた。二度とこのようなことが起きないように、情報を常にとらなくてはダメだ。又、イザとなったら自衛隊が助けに行けないか。・・・と必死に考えたのだろう。そう思っていた。そう「善意」に解釈していた。ところが、どうも違うようだ。というのは「蛮勇」発言が載った同じ日の「産経新聞」一面のトップニュースはこれだった。
「来年参院選後に改憲発議」
えっ、本当にやるのか。それも、こんな時期に発表するなんて。と思った。でも、そう感じる僕が甘いんだ。「こんな時期だからこそ」発表したのだろう。「我々政府はあらゆる手を尽くして助けようとした。後藤さんに行かないように何度も警告した。しかし、ダメだった。人質になってからも必死で交渉したがダメだった。自衛隊も出せない。この憲法があるからだ。この憲法のせいで、国民の命を守れない。テロリストにやられっ放しだ。だから、憲法を改正しなくてはならない。国民を守れる強い国にしなくてはダメだ」と言うのだ。
憲法改正と言っているが、それは「強い政府」を印象づける為に言ってるのであって、実際の憲法改正は遠い将来の話だと僕は思っていた。ところが、その時期が急に近づいてきた。来年だという。参院選で大勝利し、そこでやると言う。この時しかない。この時を逸したら「せっかくのチャンス」を逃してしまう。と思ったのだ。国民が不安に思い、恐怖している今だからこそ、「これは国民を守れない憲法があるからだ。これを変えよう」と囁かれたら、国民も「そうだよな」と思ってしまう。悪魔の囁きだ。
こうなると、勘ぐりたくもなる。後藤さんが人質になったのは去年だ。我々は知らなかったが政府は知っていた。その上で「テロリストには屈しない」と発言し、イスラム国と闘う国々への支援を決めた。初めから見殺しにするつもりで、これを憲法改正に利用しようとしたのではないか。そう発言する人たちがいた。まさか、そこまでは・・・と思っていたが、「あるいは」と勘ぐりたくもなる。
今、この原稿を書いていたら、郵便物の配達があった。2冊の本だ。1冊は『週刊朝日』(2月20日号)。特集がこうだ。
〈後藤さんの死 便乗する人たち -急浮上 人質奪還に自衛隊、憲法改正-〉
そうか、単なる勘ぐりではないのかもしれない。用意周到に準備・計画していたのかもしれない。今日届いたもう1冊は、春香クリスティーンさんの『ナショナリズムをとことん考えてみたら』(PHP新書)だ。面白そうだ。タイトルもいい。古市憲寿さん(社会学者)の推薦の言葉が表紙カバーに書かれている。
〈「右」でも「左」でもなく「前」。春香さんのバランスと聡明さが存分に発揮された前向き社会論〉
「前」か。いいですね。僕も「前」を目指したい。
〈ネット住民の葛藤、移民に揺れる欧州、「イスラム国」の核心まで、いまを読み解くための視点とは?〉
とも書かれている。「イスラム国」まで触れている。ホットだ。見出しを見たら、「ヒトラー発言」のあとで考えたこと、「ネトウヨ」の人たちはどうして怒っている? そもそも「ネトウヨ」は「右翼」なのか、日本は「右」も「左」も大混乱中…。面白い。そして田原総一朗さん、三橋貴明さん、萱野稔人さんに会いにゆく。この行動力も凄い。「勇気を出して右翼団体の論客を訪問」も出ていた。それは偉い。勇気がある。と思ったら僕だった。そうか、半年ほど前に対談したんだった。この時が初対面かな、と思ったら違う。「マガ9学校」で会ったのだ。とても聡明で、かわいらしい人だった。僕の方が教えてもらった。PHP新書は「2月14日発売」と書かれてるから、もうすぐ書店に出るだろう。〈政治の問題が複雑になるなかで、「右往左往」することを私は恐れません〉と春香さんは言う。うまい。僕よりも日本語を知っている。グローバルな視点から日本を見ている。切り込む角度が斬新だ。又、「マガ9学校」で対談したいですね。よろしくお願いします。
2月7日の産経新聞の産経抄では、「命の危険にさらされた日本人を救えないような憲法なんて、もういらない」というコラムが載っていて仰天しましたが、アメリカでは特殊部隊の救出作戦が失敗して人質が殺害されたことなど、見ない振りをしているのでしょうか・・・。
春香クリスティーンさん、鈴木邦男さんが参加してくださった第28回マガ9学校は、「参院選前に考える! 立憲主義と民主主義」のテーマで2013年6月に開催されました。報告レポートは、こちらからどうぞ。ぜひまた対談をお願いします!
天下の米軍も英軍も、武力での自国民救出には成功してないので、憲法の制約は関係なかろう、まで書いて既にキュウ君が書いた同じコメントを見つけずっこけましたが、そうです。誰が見ても今回は憲法は関係ないのですよ。でも事実はどうでもよく都合のいいことしか聞こえず飛躍も破綻も恥と思わない人たちが政権握ったり御用記事垂れ流し、それを相対多数の日本人が選んじゃってるのですが、実は個別のテーマで見るとNHK世論調査で
武器を使った救出: ○25% ×33% △36%
談話に「痛切な反省」盛り込むべき: ○32% ×19% △41%
規制委確認済原発の運転再開: ○24% ×38% △32%
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150210/t10015343761000.html)
と、アベ様3連敗中なのだ(号泣)。「どちらともいえない」(△)が多いけど希望はある。
△の方に少しでも気づいていただけるよう、マガ9も鈴木さんも引き続きがんばってください!!
2014年12月の衆議院選挙で、多くの国民が投票に行かなかったとき、
日本の民主主義は終わっていたのでしょう。
特に、言論弾圧に賛成するマスメディアが存在するというのは、
人間には自殺願望が有るのだということを再確認させてくれるものです。
さて、
今後の個人個人の身の振り方は、
どうすることが一番正しいのでしょうかね。
軍事力で人質を救出するというのは、ハリウッド映画の見すぎ。そんなことをすれば、ほぼ間違いなく人質は殺されてしまう。そんなこと、小学生でもわかる。
蛮勇発言,なかなか思い切ったこと言うなと思いましたけど,ほとんど支持率に影響与えてないようですから,多くの方もそう思ったんでしょう。
生まれたばかりの妻子を後にして,友人のために紛争地帯に乗り込もうとするんですから,向こう見ずなところはありますよね~。私が身内だったら絶対止めます。
自分たちは3度も警告したんだ・・・BSフジの世耕さんの発言ですね。つまみぐいしてませんか?
「我々は自己責任論には立たない。国民の命を守るのは政府の責任」こうも同じ番組内で言ってますよ。