ポジティブに「おばちゃん」を自称する
編集部
女性が主体となった政治運動というのはこれまでにもありましたけど、「おばちゃん党」というのは、ネーミングからしてもかなり異色です。
谷口
今までのフェミニズムとかジェンダーとかを掲げた運動は、あまりにも一部のエリート、そしてキャリア女性のための運動であったなあ、という気がするんですね。それ以外の女性たちにはその概念が伝わらなくて、むしろ敵対するような感じさえあった。その女性同士の対立構造の陰で、ほくそ笑んでるのはやっぱりオッサン、というばかばかしい状況があったわけです。
もちろん、そういう「エリートの運動」の形が必要だった時代もあったと思うんですが、これから先はやっぱりそうではなくて、「フツーの女性」の問題、という方向に持っていけたらいいなという思いがあって。あえてフツーの女性=「おばちゃん」を自称するのは、そういう理由もあります。
編集部
でも、「おばちゃん」という言葉に抵抗のある人もいませんか。
谷口
そこはやっぱり、オッサンの「ロリコン文化」に汚染されてますよね(笑)。「女性は若くなければ価値はない」とか、かつてならクリスマスケーキ、今は年越し蕎麦とか、平気で言ったりするわけじゃないですか。
でも、考えてみたらなんで、単に中年女性を表す言葉である「おばちゃん」を名乗ることが、恥ずかしいことになってしまうのか。なんで目尻にできた皺が、自分の人生の豊かさやと思えないのか。女性たちも「マダム」と呼ばれるなら抵抗がないとか言いますが、フランス語のマダムは「おばちゃん」でしょう。それ以外の日本語訳は思いつかない(笑)。
編集部
たしかに「マダム」は良くて、「おばちゃん」は嫌というのは、矛盾してますね(笑)。では、谷口さんもおばちゃん? 実年齢では「おばちゃん」と呼ばれることに違和感のある年代だと思いますが…。
谷口
私は「3歳からおばちゃんでした」ってよく言うんですけど(笑)、年を若く言いたいとか思ったことは1回もないです。「女性に年を聞くなんて失礼ですよね」と言われたりもするけど、なんで失礼なのか全然わからない。
編集部
自分の年を言いたがらないとか、「聞くと失礼」だとか、男性にはあまりない話ですものね。女性自身もそういう、「若くなければ」という価値観に縛られているところがあります。
谷口
例えば、性的マイノリティの人たちが今好んで使う「クィア」という言葉は、もともと「変態」という意味の蔑称だったのが、本人たちがあえてそれを使うことによって社会的な認知が高まって、いまや「クィア学会」なんてものができるまでになった。それと同じように、私たちがポジティブにおばちゃんおばちゃんって言ってたら、「おばちゃんってええやん」っていう人が増えるんとちがうかな、と思っているんです。
とにかくパワフルで、話を聞いているとこらちまで元気になってくる谷口さん。
5月11日(土)のマガ9学校では、
ゲストの雨宮処凛さん、想田和弘さんとともに、
「オッサン政治」にさらに切れよく「物申して」いただきます。
そしてインタビュー後編は、ご専門である憲法について。
いまの改憲論議のおかしさについて、鋭くツッコみまくっていただきました。
こちらもご期待ください。