この人に聞きたい

「オッサン政治に物申す!」--昨年、関西でスタートしてメディアなどにも登場、大きな注目を集めた「全日本おばちゃん党」。「党」とはいっても政党ではなく、年齢もバックグラウンドもさまざまの女性たちが、今の政治や社会のおかしいところに「おばちゃん目線」でツッコミを入れつつ語り合う、インターネット中心のグループなのだそう。いったい何を目指してるの? 立ち上がったきっかけは? などなど、党の「代表代行」を務める法学者で、自身も「おばちゃん」を自称する谷口真由美さんにお話を伺ってきました。

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谷口真由美(たにぐち・まゆみ)
法学者。大阪国際大学准教授。(公財)世界人権問題研究センター研究第4部(女性の人権)部長。「全日本おばちゃん党」代表代行。小1から高1までの多感な時期、花園ラグビー場の中で、マッチョな男の中で揉まれて育つ。専門分野は国際人権法、ジェンダー法など。大阪大学では講師として、憲法の授業も担当し「DJマユミの恋愛相談」で人気を博している。著書に『新・資料で考える憲法』(共編著、法律文化社)、『リプロダクティブ・ライツとリプロダクティブ・ヘルス』(信山社)、『レクチャー ジェンダー法』(共著、法律文化社)など。
社会を動かしてるのはオッサンだけ? の疑問が始まり

編集部
 今年3月、谷口さんが代表代行を務めるグループ「全日本おばちゃん党」「東京場所」に参加させていただきました。「オッサン政治に物言い!」のキャッチフレーズといい、「党の基本方針」とされている、<うちの子もよその子も戦争には出さん!>に始まる「おばちゃんはっさく」 といい、ものすごいインパクトだったのですが、そもそもこれはどんなきっかけで始まったものなんですか? 基本はFacebook上のグループなんですよね。

谷口
 去年の9月、民主党代表選と自民党総裁選がちょうど同時期にありましたよね。あのとき、何の気なしにテレビを見ていたら、出てくるのがあまりにも「オッサン」ばっかりやったんですよ。スーツの色もグレーと茶色と黒ばっかり、一応「若い候補者が」とかいうけど、私らから見たらそれもオッサン。社会はオッサンだけが動かしてるんか! と思ったら、ものすごい腹が立ってきたんです。

 それで、Facebookで「どないなっとんねん、ホンマに」とぼやいて、「既存政党を見渡してもこんなにオッサンしかおらへんのやったら、もう”おばちゃん党”でも立ち上げたろか」と書き込んだわけです。そしたら、それを見た友達から予想外に「面白い」「おばちゃん党、ええやん」とかって反応が来て。それで、「とにかくおばちゃんばっかりで何かやろうか」と、Facebookグループを立ち上げたのが始まりなんです。だから「オッサンばっかり」に対抗する「おばちゃん」なんですよ。

編集部
 そこから輪が広がって、グループに参加している「党員」はいまや2000人以上にものぼるそうですね。

谷口
 最初は友達がまたその友達を誘って、みたいな感じで、「400人超えた、500人超えた、すごい!」とか言ってたんですけど。まさかこんなに注目されて、マスコミに取り上げたりされるようになるとは思いませんでした。

編集部
 グループのページでは、原発のことや選挙のこと、人権のこと、教育、介護、食…と、幅広いテーマで「おばちゃん」同士の熱い議論が繰り広げられていますね。

谷口
 実は、こういう場を立ち上げたのには、私たち女性の側の自戒の念もあったんですよ。これだけ男性中心の「オッサン政治」の世の中になってしまったのは、もちろん彼らだけが悪いわけじゃない。おばちゃんも「私ら難しいことわからへん」とオッサンに任せきりにしてきたことに対しては反省しないとあかんと思うんです。

 だから、「おばちゃんの”底上げ”がしたい」というのもおばちゃん党の狙いの一つなんですね。知識的な底上げもそうやし、議論の仕方とかもそう。「なんで私、書き込んでもあんまり『いいね!』してもらわれへんねんやろ」とか考えるだけでも、いろんな気づきがあると思います。

 それから、党員には研究者や医者などいわゆる「エリート」の女性も多いんですが、彼女たちにとっても、「フツーのおばちゃん」にわかる言葉で議論をするためのトレーニングになるんですね。難しいことばっかり書いてても誰も読んでくれませんから。まさしく「井戸端会議」で、そこが双方向につながることに意味があると思ってます。

編集部
 昨年11月には、大阪で「始動式」を実施。翌月に「おばちゃんはっさく」が発表されました。

谷口
 あまりにも生活感のない「維新八策」に対抗して、うちらが「八策」を作ったろう! と(笑)。憲法で保障していることを書いただけなんですが、「わかりやすい」と言っていただいて、そこからまた「入党」される方が増えましたね。

編集部
 3月の「東京場所」でも、「骨太の方針」ならぬ「腹太の方針」が発表されましたね。<子どもに目ぇと手ぇと愛を><ステルスよりも豚まん買うて!>などなど、これまたすごいインパクトでした(笑)。

谷口
 それも仲間とのおしゃべりの中で「何が骨太や、私ら腹太やわ!」とか言ってる中で出てきたものなんです。あくまでパロディ、「オッサン政治」に正面切って対決するんじゃなくて「あほちゃうか」と茶々を入れる、肩すかしを食らわせるというやり方で行きたいと思ってるんですね。私は大阪の人間なので、あくまで笑いに昇華させたいし、それによって注目してくれる人も増えるはず。それに、もともと「お笑い」というのはそういう、権力者を「笑う」ものやったと思うんです。特に、大阪はそういう文化がある場所やと思っているので。

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谷口真由美さんに聞いた(その1)「オッサン政治」に嫌気がさして立ち上げた
「おばちゃん党」
」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    とにかくパワフルで、話を聞いているとこらちまで元気になってくる谷口さん。
    5月11日(土)のマガ9学校では、
    ゲストの雨宮処凛さん、想田和弘さんとともに、
    「オッサン政治」にさらに切れよく「物申して」いただきます。
    そしてインタビュー後編は、ご専門である憲法について。
    いまの改憲論議のおかしさについて、鋭くツッコみまくっていただきました。
    こちらもご期待ください。

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