生産者と消費者、生活者をつなげる
「チームむかご」
編集部
そこから農業支援を掲げる「チームむかご」の立ち上げにつながるんですね。
枝元
「農業支援をしたい」とは思ったものの、知識はないし、問題が大きすぎてどこから手をつけていいのかわからないし…そのときに注目したのが「むかご」。山芋の地上部分、葉っぱの付け根にできる球芽なんですけど、収穫もせずに捨てている農家さんが多かったんですよ。おいしくて私は好きだし、畑に行ったらあちこちにいっぱい落ちてるのに、なんで売らないんですか? って聞いたら、「売れないから」っていうんですよ。農家の人にしたら、長芋とか山芋っていうのは、自然薯みたいに粘りがあるのが一番いい、粘りのないむかごなんて売れっこない、という感覚なんですね。
でも、料理を仕事にしている視点から見るとまた違うところが見えてくる。むかごはそのまま塩茹でにするだけでおいしいし、調理は簡単で栄養価もすごく高い。特に小さい子どものいるお母さんなんかにしたらすごく便利な素材です。それに、農家の人にとっても、土の中の芋を掘り出すのは大変だけど、むかごなら地上部にできるものだから、リタイアしたおじいちゃんおばあちゃんでも簡単に集められる。それで今まで捨ててたものがお金になるならいいじゃないかと。
編集部
それで、そのむかごを買い取って、直接消費者に売るということを始められた。
枝元
そうです。各地の山芋作ってる農家さんに直接電話して、「むかご作りませんか、売りませんか」と声をかけて回って…。最初はどうやって売るのかもわからなかったけど、自分でファーマーズマーケット(※)に出店して売ったりするうちに、どうやったら買ってもらえるのかなども少しずつわかるようになってきました。100g200円のむかごを1袋買ってもらうのに30分かけて説明したりするから、終わって夜帰ってくるともう、ボロボロに疲れてたりするけどね(笑)。
※ファーマーズマーケット…地域の農業生産者らが集まって、生産物を直接消費者に販売する形態のマーケット。東京では青山・国連大学前で毎週末開催されている青山ファーマーズマーケットなどが有名。
編集部
今はほかの作物も扱ってらっしゃいますね。生産者を訪ねるツアーを企画されたりも。
枝元
ただ、私たちは、食べ物の作り手ではなくて、生産者と消費者、生活者をつなげていく、真ん中にいる存在。そこの部分はぶれないようにしようと思っています。私たちにできるのは、これがおいしいよ、こうやって料理するんだよ、と伝えたり、作物ってこう育つんだ、と説明したりすること。それによって、いま生産者と消費者の間にある「ねじれ」のようなものを直していければ、と思っているんです。
料理を作って食べること、食べてもらうこと。
それがどんなに人を力づけるか、
3・11の後に実感した方は多かったのではないでしょうか。
その「食」につながる「農」を、どう支えていくのかは、
私たち一人ひとりが「生きること」にかかわる、重要な課題です。
次回、3・11から2年を経た今の思いについて伺います。