この人に聞きたい

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(C)東海テレビ放送

何度裏切られても、信じるしかない

編集部 みんな、司法は正義に基づいて真実を明らかにしてくれると信じているわけですよね。それが、ここまで「裏切られている」とは…作品を見て改めて驚きます。

齊藤 何度、司法の裏切りがあっても信じるしかない。それが今の奥西さんの置かれた状況です。死刑判決の取り消しは、裁判所にしかできません。昨年、名古屋高裁で2度目の再審決定取り消しが言い渡されたとき(注)、私は最初のうちこそ怒りがわいていましたが、一方で「やっぱりな」とも思いました。これまで何度となく裏切られていますから。でも本当は、ハッピーエンドの映画にしたかったんですよ。だから、脚本の最後の1ページは白紙にして、再審請求の結果を待っていました。それが、あのエンディングになったわけです。

注:2002年に出された第七次の再審請求は、2005年4月に名古屋高裁で再審開始決定→2006年12月に名古屋高裁で再審開始決定取り消し→2010年4月に最高裁で名古屋高裁決定破棄・審理差し戻し→2012年5月に名古屋高裁で再審開始取り消し決定(弁護側は最高裁に特別抗告)という経緯をたどった。

編集部 1人でも多くの人に見てもらいたいエンディングです。そうした意味では、テレビ番組でなく映画にした利点は大きいですね。

齊藤 東海テレビの放送圏は東海3県(愛知、三重、岐阜)で、他地域ではなかなか見られません。でも劇場公開にしたことで、全国で見てもらえる可能性ができました。35歳で逮捕された奥西さんは、獄中で年をかさね現在は87歳です。なぜ彼がそうした状況にあるのか。ぜひ劇場に足を運んでなにかを感じていただければと思います。

(構成/越膳綾子 写真/塚田壽子)

齊藤潤一監督『約束』

公式サイト http://www.yakusoku-nabari.jp

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【書籍情報】
原作本:東海テレビ取材班『名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半世紀』(岩波書店刊)2013年2月15日刊行

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