木内みどりの「発熱中!」

映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。

第26回

『広河隆一 人間の戦場』

 フォトジャーナリスト・広河隆一さんを追いかけたドキュメンタリー映画を観てきました。

 『広河隆一 人間の戦場』

Photo by Ryuichi HIROKAWA

 
 初めにこういう言葉が流れます。

 ――「人間の尊厳が奪われている場所を彼は『人間の戦場』と呼ぶ」――

 パレスチナ、中東、チェルノブイリ、そして、福島。広河さんが取材・撮影されてきた「人間の戦場」での写真。その怖ろしい事実を人間の残虐さや愚かしさに心が凍る想いをしながら観ていて、ふと、気づきました。

 広河さんの声。やさしい、おだやかな、物静かな声。ひとりでいてもたくさんの人といても同じ、声、です。

 青柳拓次さんという方のやさしい音楽と広河さんのやさしい声が響きあって、観ているこちらをやさしさで包んでくれるように感じました。

 原発は再稼働されてしまい、戦争法案は可決されて、状況は悪化するばかり。それなのに多くの人々は無関心。この数ヶ月、無力感にうなだれがちな日々を過ごしていましたが、この映画にやさしく包まれて元気が、「元の気」が出てきました。

 うなだれてなんかいられない、まだまだできることがある。わたしはわたしの周りにある「戦場」と闘うのだ、精一杯。

 上映初日の初回上映に行ったので、長谷川三郎監督と広河隆一さんのアフター・トークを聞くことができました。

 なんと、長谷川監督も、同じ声、でした。
 2年、広河隆一さんを追いかけている内に同化したのでしょうか(笑)。やさしい、おだやかな、物静かな声。

 この映画をたくさんの友達に薦めよう。やさしさに包まれてきて、って。

 東京は新宿K’s cinemaで現在上映中。神奈川、長野、愛知、大阪、兵庫、京都、広島、福岡など、全国でも上映予定です。『広河隆一 人間の戦場』公式サイトはこちら。

 みなさま、良いお年をお迎えください。
 来年もよろしくお願いいたします。

 

  

※コメントは承認制です。
第26回『広河隆一 人間の戦場』」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    久々に原稿を寄せてくださった木内さん。無力感にうなだれてしまったとき、前を向いて歩いている人たちの姿に勇気づけられるというお話にとても共感します。来年もいろいろあるのかもしれませんが、一歩ずつ進んでいけたらと思います。

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木内みどり

木内みどり(きうち みどり): 女優。’65年劇団四季に入団。初主演ドラマ「日本の幸福」(’67/NTV)、「安ベエの海」(’69/TBS)、「いちばん星」(’77/NHK)、「看護婦日記」(’83/TBS)など多数出演。映画は、三島由紀夫原作『潮騒』(’71/森谷司郎)、『死の棘』(’90/小栗康平)、『大病人』(’93/伊丹十三)、『陽だまりの彼女』(’14/三木孝浩)、『0.5ミリ』(’14/安藤桃子)など話題作に出演。コミカルなキャラクターから重厚感あふれる役柄まで幅広く演じている。3・11以降、脱原発集会の司会などを引き受け積極的に活動。twitterでも発信中→水野木内みどり@kiuchi_midori

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