映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。
第21回
SEALDs という希望
ワクワクでした。話が続けば続くほど、ワクワク。
目の前に居るのは、筑波大学3年生の本間信和さん(20歳)と上智大学4年生の芝田万奈(まな)さん(21歳)。SEALDs(Students Emergency Action for Liberal Democrasy-s)のメンバーです。
「ランチをしながら話しましょう」ってことで原宿のレストランで待ち合わせ。会ったことのない初対面ですから、あらかじめ着てるものなどメッセージで伝えました。「黒のスカートに袖口がオレンジの黒ジャケットを着てます、髪は肩よりやや長め」なんて風に。こんな風にして人と会って話をするなんて、ほんとに、久し振り。
あらゆる差を超えて、3人が話したい共通項は「流れを変えたい」というはっきりした想い、決意です。「アベ政治の暴走」に加速度がついていくことへの危機感、この国が「戦争する国」に転がり落ちていく恐怖、今こそ本気で「流れを変えたい」。
「戦争をしない国」であるために、今、できることをできる場で…。
2011年3月11日以降、わたしはすっかり覚醒したのだと思います。
地震と津波は防ぎようがない天災だったけれど、原子力発電所の事故、あの恐ろしい事故は防げた人災。事故が起きるはるか以前から、その危険性を警告していてくれた人がいたのです。「原子力発電は危険すぎる」「事故が起こってからでは遅すぎる」って。しかも「チェルノブイリ事故」を経験して知っていたのに、いやいや、それどころか世界で唯一の原爆経験のある国だというのに、たくさんの警告の声を無視してきました。
元・京都大学原子炉実験所・小出裕章さんの「政・官・産・学・マスコミが一体となって原子力を国策として推進してきたのだから、騙されたのも仕方がない。けれど、騙されたあなたにも責任がある。騙されたことに気がつかなければ、また、騙される」という発言を読んだ時、わたしはハッとしたのでした。
たとえ何百万分の一、何十万分の一にしろ、わたしにも、このわたしにも責任がある…。あの時、わたしは覚醒したのだと思います。今からでも遅くはない、原子力が廃絶されるまで自分のできることをしていこうと小さく決意したのでした。それから、ヨチヨチ歩き出しました。
ひとりで「デモ」に参加し、募金をし、署名をし、座り込みにも参加しました。少しずつ顔見知りが出来ていきました。その内、「スピーチをして」と言われ、ドキドキしながらスピーチをしました。その内、司会を頼まれるようにもなり、この3年ちょっと、わたしなりの「アクション」を続けてきました。
が、一向に変わらないことに無力感を感じることも度々あり、疲れてもいきました。「運動」を長く続けている先輩たちのやり方への不満も膨れてきました。もっと違う形に、と提案しても提案しても受け入れてもらえず、「大きな組織は変化を嫌う。まるで『原子力村と似た構造』」と気がついてからは、自分で出来ることを見つけてやっていくと、「団体行動」が苦手な自分をはっきり意識して「ひとり行動」することにしていきました。
今、振り返ってもよくそんなことをしたものだと驚きますが、英国ロンドン日本大使館前で原発反対スピーチを英語でしました。インド・ニューデリーで2日間の空き時間があると知った時、「インドで脱原発活動の人を紹介して」と頼んで知り合ったKumar Sundaramさんのすすめで、インドのテレビで脱原発スピーチをこれもまた英語でするという、死んでしまったわたしの父母が知ったら腰を抜かすほど驚くと思うような自分になっていました。
ある時、SEALDs を知りました。
新鮮でした。
どのメンバーのどのスピーチも素晴らしく心を鷲掴みにされました。こうありたい…と先輩たちに提案していたことのいちいちが、実現していました。学生がしている運動ですが、かつての「学生運動」とは似て非なる「アクション」。
“You can’t just sit back and watch the world goes like this. Because democracy is ours. Anti-war for liberal democracy. We will stop it.”
「ただ座って世界を見ていることなんてできない。だって、『ぼくらの民主主義』なんだぜ。わたしたちは自由と民主主義を望みます。そして、戦争に反対します」(SEALDs)
なんて、素敵!
会いたいと思いました。彼らに拍手を送りお手伝いしたい、協力し合いたいと思いました。
思ったら行動、です。連絡がとれて会いましょうということになり、この初対面ランチになりました。彼らも2011年3月11日以降、覚醒したのだと言います。なにかできることから始めようと、SEALDsの前身、SASPLを立ち上げ、彼らなりの紆余曲折があってSEALDsに成長してきました。
本間信和さんが驚くことを言いました。
「木内さん、Twitterでぼくのことを誉めてくれたことがあるんですよ。エゴ・サーチ(※)していて気がついたんです」
※エゴ・サーチ:インターネット上で、自分の本名やハンドルネーム、運営しているサイト名やブログ名で検索して自分自身の評価を確認する行為のこと
高校生だった本間さんが短い映像の中で言った言葉を「なんて素敵な人がいるのでしょう〜〜」とわたしがtweetしたと言うのです。iPhoneでその映像を見せてくれました。はい、見覚えがありました。友人・関根青龍さんが主催する「国際平和映像祭(UFPFF)2013」でグランプリを受賞した作品『生きる312』は、本間さんの仲間でSEALDsの中心メンバー、奥田愛基さんの作品なのでした。その当時、「いい作品があるのよ」と教えてもらって観たのでした。
作品の真ん中あたりで、本間さんが登場して、こう言います。
「ぼくは朝、毎日、掃除できるような人になりたい。朝ね、みんなの見えないところで、みんなわからないところを掃除するような人になりたい…」
この発言が響いて「なんて素敵な人がいるのでしょう〜〜」とtweetしていたのでした。かつて一瞬響き合ったことがあった人と、今、話している…。
人生は、素晴らしい。おもしろい。
今、SEALDs がこの国の流れを変えつつあります。この魅力的な「火種」があちこちに「飛び火」しています。日本全国のあちこちで覚醒した人々が動き出しています。この若い人たちに刺激されてずっと運動してきた人も、新たな視線、感性を得て、また新しい気持ちで運動するようにもなってきました。
このマガジン9の「日本全国デモ情報」をよくよく眺めてください。時々刻々と流れが変わっていることに気がつきます。「潮目」は変わった、と何人もの人がそう発言しています。
SEALDsを「さようなら原発1000万人アクション」「戦争をさせない1000人委員会」の鎌田 慧さんに繋ぎ、先々連携していくこととなりました。
ただ、これを書いている今日は7月14日。「戦争法案」が「強行採決」されるかどうかの瀬戸際です。15、16、17日と、国会前緊急行動に参加しましょう。
今、できることを!
今しか、できないのだから。
あなたも、あなたにしか出来ないアクションを、ぜひ !
希望を掲げましょう。
帰りしな、New York のハイスクール卒業の可愛い可愛い万奈さんが、冊子を2冊くださいました。中にSEALDs のシールが入っていて、仲間にしてもらえたと思えて、うれしくなりました。
追伸:
こんなドラマに出演しました。
NHK BSプレミアム・スペシャルドラマ「洞窟おじさん」
2015年7月20日(月・祝)午後9:00~10:5970過ぎまで農作業で暮らしてきた女の人・・・にみえるでしょうか?
去年11月にSASPLとして活動中だった奥田愛基さんに、「ぼくらのリアルピース」のコーナーでインタビューをしています。SASPLのときから、それまでにないデモのスタイル、等身大のスピーチが注目を集めていましたが、自分たちの思いを伝える手段を、彼らの活動を通して見つけた人は多いのかもしれません。「若者、がんばって」ではなく、若者も大人も母親も弁護士も、それぞれがそれぞれのやり方で、いっしょにこの状況を変えていきましょう。
SEALDsには私も感心があります。とっても。組合など団体の幟旗というのではない、普通の若者たちの行動に。
そして、最後の写真。
木内さん。この写真からは70過ぎというのは無理があるように思います。7月20日のドラマを見たいと思います。
風の三郎さま
こんにちは。
コメント、ありがとうございます。そうSEALDs。
発言やスピーチ、心に響きますよね。
一緒にランチしていて、彼ら、本間さんと万奈さんとの会話がたのしくてうれしくて!
想いが重なっていると響きあうから、さらに、響きあっていく。
今、毎日がめちゃめちゃ濃い時間を過ごしている人たち。
疲れすぎないか・・・と心配もよぎります。