映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。
第17回
工場見学のおすすめ
今回のコラムは、工場見学のおすすめです。
石坂産業は、産業廃棄物を処理する会社。 石坂産業の出しているコミュニティ誌『やまゆり倶楽部』の表紙に載せていただき、社長の石坂典子さんと対談させていただきました。
「1992年2月に所沢産の野菜からダイオキシンが検出された事件」を憶えておいででしょうか。一気に所沢産の野菜が嫌われ、困り果てた野菜農家たちは、報道したテレビ朝日「ニュースステーション」を相手に損害賠償請求訴訟を起こし、民事事件にまで発展していきました。そんな或る日・或る時・或るひと言が、事態を全く違う方向へと向かわせました。
「こんなに苦労するのは、ダイオキシンを出している産廃屋のせいだっ!」
産廃屋が出している煙がいけないのだ、と怒りの矛先が変わりました。
「石坂産業はこの町から出て行け」「石坂産業反対」。
農家だけでなく周辺住民の怒りも膨れ反対運動が大きくなっていき、石坂産業は窮地に立たされました。 石坂典子さんは当時、「営業本部長」。収拾がつかない騒動に日々憔悴していく社長、つまりお父様と二人きりで話していて、ふと「この会社を継ぐのは私しかいない!」と思ったのだそうです。
この時、典子さん、30歳。ここからの彼女の奮闘ぶりは人を惹きつけます。
産業廃棄物を扱う会社です。出入りするのは「産業廃棄物」を満載したトラックの運転手さん。そして工場で働く人もほぼ100%が男性。エロ本が散らかり、壁には裸のポスター、タバコの吸殻が捨ててあり、冷蔵庫にはビール。典子さんは、そのひとつずつと格闘していきます。エロ写真、ヌードポスターを無くし、くわえ煙草厳禁、必ずヘルメット着用、休憩室を清潔に改善し・・・と次から次へとルールを決めていきます。
長く勤めている社員が「こんなんでやってられるかよっ!」と、ヘルメットを投げつけて出て行ったこともあったそうです。辞める人が続出。全体の4割が捨て台詞を残して去っていったそうです。けれど、典子さん、へこたれませんでした。
- 「30歳おためし社長」の期限は1年間、成果がなければ即・解任。
- 父に怒鳴られながらも、毎朝8時15分からの「15分の儀式」を1日も休まず10年継続。
- 社員の4割が去っても12年間、1日も休まず続けた「巡回報告指導書」。
典子社長のやり方に興味を持たれた方は、ぜひこの本を。石坂典子著 『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える! 2代目女社長の号泣戦記』(ダイヤモンド社)
現在の石坂産業は、一切「焼却」しないで「分別」するのです。徹底的に「分別」。 その行程を見学できます。
これが、おもしろい!
トラックで運ばれてきてガサっと落とされてから、分別、分別、分別、分別、分別・・・ 分別されたものを、さらなる専門家がまた、分別。
たとえば、水道の蛇口。あのひねる金属の蛇口です。若い方が説明してくれました。 コンクリートの床に落としてみて、落ちた時の音で、それがステンレスなのかそうでないのかが分かるそうです(わたしにはその音の違いがキャッチできませんでしたが)。 ステンレスなのかそうでないかで値段が変わるのです。
そう、ここに運ばれてきた「廃棄物」はすべて「分別」によって「資材」となり、必要とされるところに買われていくのです。 工場内は徹底的に「合理的」です。燃やさないから煙突はありません。屋根は透明で自然採光。ベルトコンベヤーや重機は電動です。
微笑ましかったのは入ったトラックが出て行く時。透明のビニールに囲まれたゾーンで停車します。横からシャワーのように水が出て、車輪を中心にタンクに貯めた雨水で洗い流します。廃棄物満載の汚いトラックも、石坂産業を出て行くときには車体を洗われすっきりして出て行く。
工場マップにも感動しました。 工場の内部全てが記載されているのです。工夫に工夫を重ね、試行錯誤して積み重ねてきた、オリジナルのアイディアや道具などを惜しげもなく公開しているのです。
対談と撮影のために行ったのと別に、再度、工場見学に行きました。 興味を持ったところをもっと詳しく時間をかけて知りたかったのです。 どの行程のどの場所でも、みなさん礼儀正しく挨拶されるし、ここで働くことにプライドを持ってらっしゃることにも気づきました。
みんながみんな、専門家なのです。
「ゴミなんてモノはない、すべてが資材なんだ・・・」と思いました。
ただ、恐ろしいことにも気がつきました。
ここに運ばれてくるのは、40年前のビルとか、30年前の集合住宅とかが解体されたものです。 だから、分別を繰り返して「資材」にすることが可能です。 が、現在の私たちはリサイクル不可能なモノを、自然に還らないモノを作り過ぎました。30年後、40年後、50年後、分別を繰り返してもどうにもならない廃棄物、どうするのでしょうか。
燃えないモノ、溶けないモノ、消えないモノ、分解できないモノ。
いつも同じ結論に辿り着いてしまうのですが、原子力発電なんて無理矢理なものに手を出さないでいたら・・・。無理矢理な発展や発見を見送っていれば・・・。
ふうぅと溜め息が出ます。今からでも遅くはない、オリンピック2020、中止にならないかしら・・・。
●工場見学、無料です。
石坂産業HP
http://ishizaka-group.co.jp/index.php
(※工場見学への申し込みフォームは、右下にバナーがあります)
自分たちの生活の「便利さ」や「快適さ」は、引き換えに何を生み出しているのでしょうか。原発、建材、衣服、食料に至るまで、私たちがその最初から最後までを把握することはほとんどありません。
石坂産業のHPには、運営する里山エコパーク「三富今昔村」も紹介されていますので、ぜひご覧になってみてください。
木内 みどりです。
追加情報、ここでは400字以内なので分割して載せます。
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石坂産業のサイト、
http://ishizaka-group.co.jp
このホームページがかわいいのです。
きゃ、きゃ、きゃわいい
廃棄物を寄せ集めたコラージュ、
藁のようなものを使って作った文字「石・坂・産・業」、
工場近くにあった「花や雑草」のコラージュ。
とっても素敵です。
アートディレクションとゴミアートは、ペドロ・イノウエ作です、が、
アートワークそのものは内田未来(うちだみき)さん作です。
美大出てすぐのお嬢さんの「デビュー作」なのです。
やはり「デビュー作」というのは独特のエネルギーがありますね。
何度見ても飽きません。
この色鮮やかなページを見たいがためにこのサイトに行ったりするほど好きです。
これからのアーチスト・内田未来に注目、です。
木内さん、追加情報、ありがとうございます! ほんと、このサイトのデザイン、いいなあ〜かわいいな〜と思っていました。
木内さんの記事を楽しみにしています。
今回はちょっと遅れて読みました。
産廃事業の大変さ、問題点、改善のやりよう。
いろいろ勉強になります。
そして、さいごにそっとかかれた「・・オリンピック2020、中止にならないかしら・・・。」
のひとこと。私はここにも大注目。まさに意を同じくするものです。
kazenosaburouさま。
コメント、ありがとうございます。
ここでのコラムを楽しみにしてくださってる・・・。
うれしいです。
お会いしたこともないし、これからも、お会いすることはないかも知れない。
けれど、今の時代、インターネット・SNSを使える時代に生きていると、こんな風に誰かと、
ふと、心を響かせることが可能!
なんて素敵なこと、と思います。
「風の三郎」
きっと、宮沢賢治さんがお好きなのですね。
私、賢治さんの親友で「セロ弾きのゴーシュ」のモデルの藤原嘉藤治さんと文通していたことがあります。
テレビ番組「名作のふるさと」取材で出会ったことがきっかけです。
いつか、そのことを詳しく書いてみます、ね。
ありがとうございます。
お元気でいらしてください。