映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。
第14回
3月28日の集会、「フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会」
司会してきました。
「充実」の集会でした。
まずは呼びかけ人・鎌田慧さんからご挨拶。福島現地からの現状報告としていわき市議会議員・佐藤和良さんのお話。そして、大江健三郎さんの講演。とてもとても素晴らしい講演でした。続いて、京都原子炉実験所の今中哲二さんの講演。今中さんは、「原子力ムラ」に与しない原子力の専門家「異端の熊取6人衆」のおひとりですが、一昨年の夏、この会でも講演してくださった京都大学実験所の小出裕章さんがこの3月いっぱいで定年退職されましたので、残るは今中哲二さんだけ。その最後のおひとりはこの日、優しい穏やかな声で厳しい現状を解説してくださいました。
続いて、今回は参加できなかった澤地久枝さんから届いた文章をわたしが朗読しました。声にして読むと澤地さんの「本気」が伝わって胸に響きます。最後の方に全文、載せておきますので読んでみてください。できれば声に出して音読されることをお勧めします。
ここからこの集会では初めての試み、「キウチさんのパフォーマンスの時間」と呼ばれた時間になりました。わたしの提案が受け入れられいただけた時間です。
この「さようなら原発1000万人集会」は運営している人たちが長く「運動」をしている方々なので、よく言えば慣れているプロフェッショナル、悪く言えば古いスタイルの運動とも言えます。わたしは初めて司会をした時から、サインや横断幕に英語表記をいれてくださいとか、始まる前にその日の裏方からみんなが顔を合わせて、誰が何の係りか理解しあって補い合ってたのしい時間にしましょうとか、わたしなりに不満なことを正直にお話ししてきました。
が、回を重ねてもひとつも実現せず、いつまでたっても誰が主催者か、誰が中心なのかもわからないまま続いてきたのでした。
正直なところ、こういう集会じゃ何回重ねても効果がないんじゃないかと、もっと熱のあるものでなければとわたしの不満は募っていきました。
今年初めの1月24日、池袋・豊島公会堂ホールでの集会「川内・高浜原発を再稼働させない!東京集会&デモ」でわたしの不満は溢れてしまいました。「さようなら原発1000万人集会」呼びかけ人9名の内、参加されたのは鎌田慧さんのみ。
お話しくださったのは「川内原発増設反対鹿児島県共闘会議 事務局長」野呂正和さんと「原子力発電に反対する福井県民会議 事務局長」宮下正一さん。ゲストは佐高信さんおひとり。盛り上げようとしなくていい、こなせばいいだけとばかりの魅力のなさに、”憤慨”、でした。
いつだって司会進行の台本はありません。何百人も時には2000人も集まる集会なのに、台本がないのです。司会者としては、事前にいろんなことを調べた内容ある「弾」をいくつもいくつも持っていなければ人前に立つことなんてできません。だから自分で用意します。
この日も機嫌よく進行できるように話せる「弾」をいくつも用意していきました。集会の後、デモ行進が予定されていましたが、わたしは反対でした。
だって、金曜日の夜です。友達との食事会や仲間の集まりなど様々な人々が様々な状況で金曜日の夜を過ごしている池袋西口界隈を、暗い中、拡声器を使って大音響で「再稼働、反対っ!」「安倍を許さないっ!」って叫ばれても迷惑だと思うのです。効果ないどころか逆効果だと思うのです。
会が始まる前に勇気を出してそう伝えたのですが、場が白けました。冷たい空気が流れました。なので、この日わたしは司会はしましたがデモには参加せず帰りました。
こんな経過があっての今回の集会です。司会を引き受けフライヤーに名前も載っているのですから、逃げる訳にはいきません。ですから何度も掛け合いました。いろんな提案をしました。いろんな都合で中味の紹介ができなかったけれど、以下の人たちからメッセージもいただいていました。
鳩山由紀夫・元首相、三宅洋平さん、インド、ニュデリー脱原発グループの代表、Kumar Sundaramさん、Nuclear HotseatのLibbe HaLevyさん。
台湾にお住まいで日本での原発反対運動を生ぬるく感じてるという女性からは布バナーを託されました。これも掛け合って司会者演台に巻き付けました。
英語表記をいれてくださいという提案も実現しました。ま、写真で見ていただければわかるようにとってつけたような英語表記ですが(笑)
こういった提案を受け入れてくださらないなら、今回限りでわたしは去りますと伝えたところ、「キウチさんのパフォーマンス」といって時間をくださいました。
「NO 原発マーク」を友人・真島辰也さんと創りこれを参加者全員に配り掲げてもらって写真を撮ることも実現しました。
二色刷りは予算オーバーだから一色刷りになったそうでがっかりしましたが、でも全員が掲げるとこの白黒、壮観でした。
会場の皆さんが掲げてくださった。
大江健三郎さん、
落合恵子さん、
鎌田慧さん、
今中哲二さん、
皆さん掲げてくださった。
カメラマンさんたちにステージに上がってもらい登壇者入れ込みの会場全員の写真を撮ってもらいました。そうしているうちに会場から声が上がり始めましたので自然にわたしがシュプレヒコールをリードしていきました。
「再稼働 反対っ!」と言って「再稼働 反対っ!」
「子どもを守れっ!」「子どもを守れっ!」
「大人が守れっ!」「大人が守れっ!」
「安倍は退陣っ!」「安倍は退陣っ!」
何度も繰り返しました。
みなさんノッてきて参加者1400人がひとつになっていきました。
大江健三郎さんも大きな声で言ってくださった。何回かこの集会でご一緒してきましたが大江さんはいつも講演されるだけで、デモで歩いても声を上げることはされません。でもこの時は大きな声をあげてくださった。
落合恵子さんも今中哲二さんも鎌田 慧さんも。
メッセージを前に掲げ声を出すことでみんなが積極的になり、前に前にエネルギーが溢れて、拍手が大きく大きくなって会場がひとつになりました。
再稼働、反対っ!
終了後、興奮気味の方から「もっと叫びたかった」「盛り上がったね!」などたくさんの感想をいただきました。高揚した渦の中にいてわたしは冷静な心で「めげずに言い張ってよかった」と感じていました。
いい集会でした。が、問題はまだまだ多々あります。
この集会、年配の参加者ばかりで若い人がいません。20代の人も30代の人も見当たらず学生さんなど皆無です。いつもいつも参加してくださる方々でなく、こういう会場に来ない人々、無関心・無自覚の大多数の人々に来てもらうためにはもっともっと工夫が必要です。仕掛けが必要です。なにより「発熱している」人が必要です。
わたしは単なる司会者ですから、この会の運営になにひとつ義務も権利もありません。次なる集会、5月3日の3万人集会、司会を頼まれ引き受けていますが私の想いは乱れています。
本気なのです。今現在、日本列島のどの原子炉も動いていません。冷え切ったままです。このまま二度とスイッチを入れないために自分のできることは何か、何なのか、周りをしっかり把握してしっかりと決めたいと思っています。
だって、人生は一回きり。どなたさまも裸で生まれて死んでいきます。必ず死にます。いつかは焼かれて灰になる。明白なことです。
だからこそおもしろい、生きているこの時間。充分に生きていきましょう。って、なんだか大袈裟な物言いになっていますね(笑)。
今、深夜というか夜明け前のam4:17。
早いフライトでミャンマーに行きます。
みなさま、どなたさまも、お元気で〜〜。
〈澤地久枝さんからのメッセージ〉
寒い日がつづいて、福島の現地はきびしい日々と思います。わたしは旅に出てカゼをひきました。今日は、欠席します。
原発反対は、日本がとるべき基本の方向です。揺れつづける日本列島に一基の原発もつくってはならなかったのです。
この四年間、原発は動いていません。日本中でひと晩でも停電したことがあるか、よく考えてみる必要があります。原発ゼロでわたしたちはやって来ています。
原発が必要という意見は、そこで動く大きな金額、たとえ1パーセントであってもそこから利益を得ようとするヒトたちのためのものです。
「小さな国」になることをわたしは望みます。
経済大国という考えの上に原発があったのです。
福島の原発事故は、世界にむかっての「予言」だったと思います。「広島」「長崎」を経験したこの島で、2011年に原発が爆発したことは、「人類に対する予言」でした。
原発の危険性との共存などのぞみません。
生活はかえられるべきです。世界のなかで、原発ゼロで人間的いとなみが可能であることの証明を、わたしたちは示してゆきたいと思います。
ミャンマーに飛び立つ直前の、木内さんからのコラムが到着しました。アップが少々遅くなってすみません。今回も木内さんの、どんなことがあっても「再稼働反対!」の本気の熱い思いが、びんびん伝わってくるコラムです。
木内さんの若い方の集会への参加が少ないという懸念はもっともだと思います。私も、死刑制度に反対している政治家の方に共鳴して、時々ボランティアに参加していますが、若い方は少ないというより、今までで一人しかお会いしたことがありません。ただ、若い方が社会的な問題に無関心という事が原因なのではなく、むしろ低賃金・不安定・長時間労働でボランティアや集会に参加する余裕がない事や、体制に批判的な活動にコミットしていることを職場に知られてしまった時に強いプレッシャーがかかるという様な、社会全体が、若者に真の意味での社会参加を許さないような雰囲気が、若者の社会活動の低調さの原因にあるのではないかと思います。
経産省テント前で脱原発の意思表示をしています。木内さんの言葉に力づけられました。本当に若い人たちに関心もって欲しいですけれど、どうしたらよいのでしょう!
こういった集会に若い人は来ませんよね。仕事してますし,実社会にいるわけで,原発を止めていることによるいい影響も悪い影響も肌で感じている人がいるでしょう。
若い人呼びたいなら,まず,葬列デモとかブルドーザーデモとか,ああいったとんでもなデモを止めるべきですね。
一般人どん引きですよ,あんなの見せられたら。
それと違法なデモ行為も止めるべきですね。例えば他人の土地にテント建てたりすることとか。
若い人達だって,あんなのと一緒にされるの御免だわと思っているはずです。
あとは,ヘルメットとか,マスク,サングラスを止める。こっちは簡単にできますね。
今は全共闘やっていた人達が,夢よもう一度で頑張っているんでしょうけど,一般に膾炙するのは難しいだろうな。
森口 竜太郎さま
コメント、ありがとうございます。
ほんとに書いてくださった通りですね。
若い人の社会参加を許さない力があり、むしろ、余計なことを考えず会社の言う通り、多数派についていればいいんだって力があるようです。
ほんとに「敵は巧妙」ですし、なにしろ桁違いに資金があります。
けれど、けれど、怯まず出来ることを続けていきましょう。
おうえんしています。
乾 喜美子さま
コメント、ありがとうございます。
ほんとに。
どうしたらいいのでしょう。
今、わたしはタイ・ミャンマーを旅しています。
一昨日、地方選挙の結果を知りました。
ガッカリ、というより「又もや・・・」とニヒルに笑ってしまう心境でした。
でも、でも、諦めず、コツコツコツコツやっていきましょう。
経産省前で意思表示をされてるとのこと、
どこかですれ違うかも知れませんね。
お声をかけてくださいね。
いつか、きっと、会えます。
初めて感想を書きます。
いつも共感しながら読ませていただいています。
木内さんが本気で、熱く活動なさっていることを、今回改めて感じる素敵なコラムでした。『だって、金曜日の夜です』のくだり、本気だからこそ言えることだと思います。
本気だからこそ、正しいだけを全面に出すのではなく、ちゃんと巻き込めることがしたい。
私は名もない主婦ですが、名もないからこそできることを探して、身近な子育て中の人たちにこういうことや、憲法のことを伝えながら、方法を模索しています。
ちょっと辛いと思うこともありますが、木内さんのような方がいらっしゃると思うと頑張れます。何しろ一度きりの人生、納得して楽しんで生きたいものです。
木内さんの活動やコラムにいつも励まされています。ありがとうございます。