木内みどりの「発熱中!」

映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。

第13回

「核廃絶」したいという思いは繋がっていく…。

 驚いてください。また、英語でスピーチしちゃいました(笑)。
 英国 LONDONの日本大使館前での英語スピーチは、このコラムの第1回に書きました。

 インド・ニューデリーで2日間自由時間があったので、脱原発活動の中心人物を紹介してもらい、会ってきました。
 そのKumar Sundaramさんと会ってお話しする中で、3月8日が International Women’s Day(国際女性デー)であり、11日が“4th Anniversary of FUKUSHIMA(福島第一原発事故から4年の日)”でもあるので 、メッセージしてくださいと言われ、急遽足りない頭をひねって英作文しました。
 もちろん、いい加減な英語ですから、Kumar さんに直してもらい、こういうことになりましたのです。

 またもや英語でスピーチしてしまいました。
 ほんとに怖いもの知らずだと自分でも呆れます。「脱原発」「核廃絶」のためなら自分でできることはなんでもやろう、怖がらず恥ずかしがらずと決めてから、心がピタッとブレなくなったので、自然とできてしまいます。

Katharine Hamnettが作ってくれたTシャツ「WORLDWIDE NUCLEAR BAN NOW !」これを着てると勇気が出ます。Thank you Katharine !

 死んじゃった父や母が今の私を見たら、きっと、驚きます。あのぼんやりみどりが、いつもボーッとしてる子がどうしてこうなるの!? って。
 あのね、お父さんお母さん、少しでも役に立つならわたし、何語でも話します。

 あの英語バナーがベルリンにも登場。
 「DON’T FORGET FUKUSHIMA」

 経産省前テントひろばに、英語バナーを作ったことは、このコラム第11回に書きました。

 「2枚つくったうちの1枚を、LONDONの脱原発グループ『JAN UK』に差し上げます」と、若竹綾子( 元小金井市議会議員)さんたちとSkypeミーティングで話していたら、丁度、そこにいらしたドイツ・ベルリンの脱原発グループ「Sayonara Nukes Berlin」のRocco さんが3月7日のベルリンでのデモに使いたいと提案されて、即、決定。
 わたし、すぐに送りました。届きましたと連絡をもらって、デモに使ってくださいました。そのデモの様子を、8日朝に知りました。

 なんと、NHKニュースに載っています!
 デモの先頭を飾っています。まるで親戚の晴れ姿を見るような気持ちでじぃぃんとしました。経産省前テントのものとお揃いです。

 「核廃絶するまで自分のできることを、ジリジリとジリジリと」

 Kumar Sundaram さん、来日。

 3月3・4・5日と3日続けてニューデリーでご一緒していたKumarさんが来日。9日、雨の上野で再会しました。といっても間がたったの3日間。まるで急激に恋をした人と再会してるかのような展開で、「ご縁があるのね」「前から決まってたみたいな展開だね」と本人同士も呆れました(笑)。「縁って英語で何て言うの?」「ウゥ~ん、destiny かな…」って。

 Kumarさんを訪ねてカフェに現れた方に、これまた、ビックリ! 福永正明さん、ブータン王国が提唱した国民総幸福量(GNH)の理念を生かす日本GNH学会の副会長・理事さんです。どういう訳か、わたしもこの日本GNH学会の理事なので、19日の総会でお会いする予定なのでした。
 福永さんはヒンズー語も英語も堪能で「アジア」に関する専門家です。だからお話がおもしろくておもしろくて、知りたがり屋の私は好奇心と探究心の塊となり、メモメモメモしていました。

 3月10日夜の生トーク@新宿LOFTプラスワン。

 「福島原発事故から4年…欺瞞だらけの原発再稼動計画と、懲りない原子力ムラの内情とは?」という長いタイトルのイベント。外は超・超・超寒い晩でした。
 今西憲之さん司会でアーサー・ビナードさん、木野龍逸さん、畠山理仁さんと。
 ビールやワインを飲みながら鳥の唐揚げつまみながらのトークは初めて! なんだかお行儀悪いというブレーキがかかってしまうわたしは、飲めるけれども食べることは出来ませんでした。カッコいいんだか悪いんだか、古い女なんだと自覚。

 英語に吹き替えられるという経験。

 アメリカの反原発サイト「Nuclear Hotseat」のFUKUSHIMA特集で電話インタビューされ、英語に吹き替えられて載りました。

 全編英語なので手がかりをお知らせします。

12:00  みどり紹介
13:50  みどり喋り始め( すぐに英語の吹き替えになります)
22:50  IWJ 、ラジオフォーラム、マガジン9の紹介
24:00  リスナーへメッセージ
25:10  ひとつ追加したいと小出裕章さんを紹介しつつ対談した本の紹介
26:30  ここから経産省前テントひろばの渕上太郎さんの出演です。

 3月12日に、双葉町のあの看板「原子力 明るい未来のエネルギー」を撤去する計画を知りました。この標語の作者、大沼勇治さんが誘ってくださって避難区域に入ったことがあり、わたしもこの看板の前で写真を撮ってもらいました。

 世界の人に知ってもらうためには英語表記が大切と、イギリス人とアメリカ人、ふたりのネイティヴに考えてもらって、それを書いた紙を掲げた大沼さんの写真も評判になりました。

 この看板を撤去だなんて!  国も東電も事故の責任をうやむやにしたいが為に、なりふり構わずなんでも仕掛けてきます。この看板は「過ち」を認めて心に刻む為に、後世に残すべき負の遺産です。
 ドイツ、アウシュビッツのこの有名な看板と同じです。

 「ARBEIT MACHT FREI」。意味は「働けば自由になる」。ナチの強制収容所入り口、門の上に掲げられていた看板。ここをくぐったら最後、もう二度と生きては出られなかった。
 今、この写真を載せるに際して前から気になっていたことを調べて、びっくりしました。それは、こうです。
 この言葉はロレンツ・ディーフェンバッハの小説の題で、1933年に政権を獲得したナチス政権が強制収容所に使うようになり、たくさんあった収容所入り口にはこのアーチが掲げられました。問題は「 ARBEIT 」の「 B 」の文字。逆さなのです。わかります?
 一説によると、この門を作らされた囚人の抵抗の証、とのことです。他の収容所のアーチは逆さではなく、このアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所だけなのだそうです。
 できる抵抗をした人々の思いが、少しですが感じられるように思います。こうしてアーチそのものが残されていればこそ「そこに確かにいた人たち」のことを感じることができるのです。福島も、この大切なもの、なんとかして強制撤去を阻止したいものです。

 丸木美術館に行ってきました。

 丸木位里・丸木俊さんご夫妻の「原爆の図」。ずっと以前から行きたい、一度は行ってみたいと思いつつ行けなかった美術館。だって、行きにくいのです。池袋から東上線で1時間。最寄りの森林公園駅からは、時刻表を見てバスに乗るか、タクシーだと12分、歩くと50分の距離です。わたしは東京から車を運転して行きました。ドキュメンタリー映画『ショージとタカオ』監督の井手洋子さんと行ったので、往復の約4時間、いろんな話ができて充実でした。
 井手さんは、この2年、諫早湾を記録しています。どういう映像作品になるかとても楽しみです。

 これは丸木美術館の一階奥にある布に手書きのバナー。

 「原発やめよ 命が大事」

 デモ行進でよく使われるこのフレーズは、丸木俊さんの言葉だったのです。被曝70年の今、なんとしても核廃絶したいという方々の思いが結集して、この6月に「原爆の図」が、アメリカ・ワシントンのアメリカン大学を皮切りに、幾つかの都市を巡回するそうです。アメリカで初めて展示される「原爆の図」。会場の人々の反応を記録してほしいですね。

 3月28日、「さようなら原発1000万人アクション」の集会があります。
 大江健三郎さん・落合恵子さん・鎌田 慧さんが講演してくださいます。京都大学原子炉実験所の今中哲二さんも講演してくださいます。新宿文化センター・大ホールです。ぜひ、いらしてください。

 今回もたくさん書いてしまいました。
 「みどりさんは働きすぎです」と言われました。「すこしは休みなさい」とも。
 でもね、非常時なのです。世の中がどんどん取り返しがつかない方向へ、ほんとに転がり落ちて行っている。できることをしなければ。
 でも、やさしい言葉をかけていただけてうれしかったです。時々はゆっくり休みます。ありがとうございました。

 あっ、もう、ひとつ。気楽な話題を。3月20日夕方19:00~私が出演したTBS系「爆報!THE フライデー」というバラエティに出演した番組が放送されます。
 「芸能人」の木内みどり、久しぶりです。
 見てやってください。

 

  

※コメントは承認制です。
第13回 「核廃絶」したいという思いは繋がっていく…。」 に2件のコメント

  1. magazine9 より:

    「核兵器も原発もいらない」という思いさえあれば、国境なんて軽やかに超えてつながれるはず。SNSを使って、顔と顔を合わせて、今日も木内さんは、「発熱」しながら、たくさんの人に熱を届けて、広げていっています。

  2. 多賀恭一 より:

    核兵器の原料となるのは、ウランとプルトニウムだけだ。
    ウランを現在のペースで掘削すれば、100年で底をつく。
    プルトニウムはウランで発電すると出てくるが、これもプルトニウムで発電する技術が確立すれば、早晩、消滅する。つまり、核兵器と原発は長期的には矛盾する。
    ウランとプルトニウムを、さっさと電気に変えて絶滅させればいい。
    経済産業省は信用できないから、廃止すべきだがな。

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木内みどり

木内みどり(きうち みどり): 女優。’65年劇団四季に入団。初主演ドラマ「日本の幸福」(’67/NTV)、「安ベエの海」(’69/TBS)、「いちばん星」(’77/NHK)、「看護婦日記」(’83/TBS)など多数出演。映画は、三島由紀夫原作『潮騒』(’71/森谷司郎)、『死の棘』(’90/小栗康平)、『大病人』(’93/伊丹十三)、『陽だまりの彼女』(’14/三木孝浩)、『0.5ミリ』(’14/安藤桃子)など話題作に出演。コミカルなキャラクターから重厚感あふれる役柄まで幅広く演じている。3・11以降、脱原発集会の司会などを引き受け積極的に活動。twitterでも発信中→水野木内みどり@kiuchi_midori

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