2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。
第15回
Power of Music
音楽で1つになる
「Power of Music」
昔から言い古されているくらい、多くの人が音楽には力があることを知っていると思います。だから、古今東西、平和を訴える反戦歌や公民権運動におけるプロテストソングは枚挙にいとまがありません。
希望のエリアでも、「イマジン」や「We shall overcome」、そして参加者の方々のオリジナル曲や替え歌等、沢山の音楽が演奏され、歌われてきました。サンバ・ナ・フアの「原発なくたって」や「廃炉節」、浦邉力さんの「主権在民(Stand by meの替え歌)」、制服向上委員会の「戦争と平和」、明日香さんが歌う「君とぼくのラブソング」等、数々の歌が歌われるとき、希望のエリアの参加者が音楽の力によって1つになる瞬間なのです。
絢香の 「Power of Music」という歌の一節に、「Power of Music 伝わったとき 泣き顔が笑顔に変わるよ」「Change the world みんなで歌えば 何だって変わる気がするよ」とあるように、正に、参加者の方の悲しく泣いている心がスマイルな心に変わったり、辛く苦しいことが前進する力に変わったり、微力でも皆で力を合わせれば、世界が変えられると勇気をもらって1つになる瞬間なのです。
音楽は祈り
希望のエリアの二朗「校長」は、時々参加者の方のスピーチのバックミュージックとして「Amazing Grace(アメイジング・グレイス)」をポケットサックスで演奏します。演奏されるときは、たいてい、福島の方々の心情が吐露されるスピーチされるときのような気がします。
福島の方々の悲しみが癒えるように、苦しみから解放されるように、恵みが届きますように、その心に希望が生まれますように等々の祈りと、私たちも共に頑張りますとの決意の気持ちがこもる演奏です。
そう、音楽は祈りでもあると思うのです。
そんな思いで歌われる曲が「ふるさと」ではないでしょうか。
「ふるさと」を歌う気持ち
先日、参加者の方から、福島原発かながわ訴訟原告団のホームページにある唱歌「ふるさと」への意見が紹介され、希望のエリアでこの歌を歌うのを止めるか、もしくは3番は歌わないようにしてはどうかとの提案がなされました。
「ふるさと」は希望のエリアで2012年から毎回歌ってきた歌です。
主催者からは、そのスピーチ直後に、①歌に対する思いは人それぞれであり、私たちは命の問題として毎週抗議をしていく上で、大切な美しいふるさとを奪ったのは一体誰であるのかを決して忘れてはならない、②もうこのような悲しい思いをする方を一人として作ってはならない。そのことに思いを馳せたいと考えていること、③また、この歌は福島だけのものという観点ではなく、時には沖縄であり、熊本であり、参加者の方それぞれの心の中のふるさとであること、④これまでにもこの件については幾度となく議論を重ねて現在に至っていること、⑤以前に福島の参加者の方と対話をする中で「福島の事を忘れないで毎週歌ってくれてありがとうございます」と言っていただけたこと、という理由から、これからも「ふるさと」を大切に歌わせていただきたいと説明がありました。
私自身も毎週この歌を歌うとき、様々な想いが交錯します。
福島の方々のふるさとを奪われた悲しみを思って胸がつまる想い、自分自身が原発に反対してこなかったことの悔しさや反省、福島への反省を見せない政治への怒り、同じ想いをもう誰にもさせたくないという決意、原発立地の方々にこの歌が届いてほしい等々。この歌に対する想いは私一人の心でも様々で、さらに、どの想いが一番強くなるかは、その時の心情で変わるように思います。
そんな交錯する想いの中で、福島の方々がこの歌を聞いたとき、その心にふるさとを奪われた悲しみだけでなく、いつか他の思いもうまれることを願い、「祈り」の気持ちをこめて歌っています。
主催者の説明のあと、参加者の皆さんから拍手が起こったことを考えると、皆さんが「ふるさと」を祈るような気持ちで歌っていると思うのは、あたらずといえども遠からず、なのではないでしょうか。
「時に音楽は世界を変えられる」
多くの人はその音楽の力を信じ、今までも世界を変えてきました。私たちもその音楽の力を借りて、ある時は祈り、またあるときは団結して、核なき世界の実現を目指して、これからも抗議を続けていきたいと思います。
(国会前「希望のエリア」スタッフ 毛里美穂子)
以前に「希望のエリアとローカルアクション」を書いてくださったスタッフの方が、今回もコラムを寄せてくれました。音楽は、言葉にならない思いを世代をも超えて共有するための手段でもあります。それを特に感じたのは、沖縄での抗議行動の場でした。一方で、「ふるさと」のように、立場によって受け止め方が異なることもあります。そうしたことにも、思いをはせることが大事だと気づかされました。
雨にも負けず・風にも負けず・雪にも負けず・フクシマに原発被害者居れば共に泣き・励まし・年金増やせ・学費下げろ・待機児童を本気で解決しろ・という要求と共に連帯して毎週金曜日に声出し・行動する。正義感の塊の人びと・希望のエリアの歴史的活動は後世に伝える金字塔です。何れ「ギネスブック」に掲載される。
雨にも負けず・風にも負けず・雪にも負けず・「原発被害者に寄り添い、共に泣き、励ます」「年金上げろ・学費下げろ・待期児童解決しろ」との様々な市民の要求に本気で真っ向から共に「声出し・行動し・連帯し」戦う。正義感の強い「義勇軍」歴史を動かす人びと、皆さんの運動(活動)は今世紀に残る金字塔です。希望のエリアの活動は何れ、「ギネス・ブック」に掲載されるでしょう。