2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。
第9回
抗議を盛り上げる「音楽隊」
希望のエリアには通称、“希望のエリア音楽隊”という人達がいます。
音楽隊というものの1つのグループな訳ではなく、参加者の方の中から楽器を持って集まる人達が増えてきて、ごくごく自然に出来上がったゆるい集まりです。トランペットやギターやドラムやハーモニカ、アコーディオン、縦笛、鳴り物などなど、思い思いの楽器を携えて毎週賑やかに抗議を盛り上げています。
希望のエリアがまだファミリーエリアと呼ばれていた頃、毎月第4金曜日の抗議のときに音楽集会を始めたのがきっかけだったのかも知れません。官邸前や国会前南庭のスピーチエリア、そしてファミリーエリアに時々ドラム隊の人達が回って来ては、コールを盛り上げてくれていたのですが、ドラム隊も集団で参加することが少なくなり、「寂しい」と言う声が上がりはじめて、それでは、と始めたのが音楽集会でした。
音楽集会にはいろんな方が参加して下さいました。
こぐれみわぞうさんと大熊ワタルさん率いるジンタらムータ、いなばっちさん率いるサンバプラネッタ(のちに名前をサンバ・ナ・ファに改名)、トランペット奏者の松平晃さん、さいたまんぞうさん、などなどジャンルにとらわれず、いろいろな方が参加して下さいました。そして希望のエリアへ移行して、後のSEALDsに参加することになる、わかこちゃんも音楽隊の一員だったことがあるのです。
ブラス隊長とロックンローラー
希望のエリア音楽隊を語る上でこの二人を外すことは出来ません。ブラス隊の隊長、山内さんと愛と平和のロックンローラー浦邉力くんです。
抗議行動を続けているある夜のこと、トランペットを携えてひとりのダンディーなおじ様が現れました。いつの間にか現れて抗議が終了すると音もなく黙って去って行かれるダンディーなおじ様は、スピーチをするわけでもなくコールに合わせてトランペットを奏で、時にはステージに上って子どもの曲や季節に応じた曲、そして福島を思い、福島民謡などを演奏していました。そして今や希望のエリアブラス隊の隊長として無くてはならない存在になっています。
山内さんは今、8月15日までの間、国民平和大行進の通し行進者として広島へ向かって歩いておられる最中です。
愛と平和のロックンローラー浦邉力くんは文字通りロッカーを絵に描いたような風貌です。尖り頭に皮のライダース、黒いブーツ姿で、ブルースハープやギターを弾きながら歌う彼の訳詞による“Stand by me(主権在民)”は、今や抗議行動のテーマソングのようになっています。力くんはパレードやデモでシュプレヒコールをするコーラーとしてもとても優秀で、彼から飛び出す言葉は参加者のみならず街行く人の胸にもしっかりと刻まれるようです。コーラーは1つの才能で、その時々の時事や街の雰囲気、街行く人の雰囲気をとっさに切り取って言葉に込めるのです。希望のエリアの明日香さんや力くんは、まさにこの才能に秀でているのです。
また、パレードやデモ行進にドラムが加わった事がそれまでのデモの歴史を大きく変えることになったわけです。
音楽隊にはこの他、世界的ドラマーのコブさん、ハーモニカの岡部さんや、ロックギター&スネアドラムのミスター、アコーディオンのこずえちゃん、何でもこなすノボさん、タムタムドラムのケミちゃん、スネアの築地の師匠、郷司さん、毛里さん、埼玉のフライパン王子こと小泉さんや縦笛のまさみさん、などたくさんのメンバーがいて、金曜の夜を盛り立ててくれています。
(国会前「希望のエリア」スタッフ/校長こと二朗)
紹介されていたロックンローラー浦邉さんが歌うテーマ曲は、歌詞の‟Stand by me”の部分を「主権在民」に替えたもの。歌詞もユニークで、毎回エリアの参加者がわっと盛り上がります。音楽、スピーチ、手話など、それぞれができることを持ち寄って自由に参加できるのが、希望のエリアの素敵なところ。ぜひ、いっしょに参加してみてください。