2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。
第4回
熱く強い想いと優しい言葉
コールを行う明日香さん
試行錯誤して、たどりついた原則
「希望のエリア」や、前回紹介した「希望まつり」に来られた方は、もしかしたら「原発の廃炉を求める抗議って、こんなに心地よく楽しいものなの?」と思われるかもしれません。政治や社会に怒りの気持ちをストレートにぶつける抗議やデモからみると、確かにかなり異色です。音楽が奏でられ、今までになかった「ゆるさ」を感じるコールも行われます。
しかし、ちょっと耳を澄ましていただきたいのです。どのスピーチからも、演奏や演技、そしてコールからも「原発は絶対になくす! 戦争を絶対にさせない! 平和な民主主義の社会を自分たちで創るんだ!」、その熱い想いが必ず伝わってくるはずです。
一例をあげましょう。いつも司会を務める明日香さんが終了間際に必ず行うコールに、「悲しい想いはもう嫌だ! 引き裂かれるのはもう嫌だ!」というものがあります。原発事故によって引き起こされた、福島の方をはじめ多くの方にもたらされた底知れない悲しみ、こんな悲しい想いを二度としたくない! 家族、友人、知り合いや近所の方がバラバラに引き裂かれるのは、二度とごめんだ! そんな悲しい想いを強いる社会は絶対に嫌だ! その想いがストレートに伝わってくる名コールではないでしょうか。
抗議行動やデモは、そこに集う方や街の方に共感していただくことが何より大事だと考えています。そのために、試行錯誤しながらたどりついた「想いは熱く、言葉は優しく」。これが希望のエリアの大切な原則です。
人を惹きつける「優しさ」が必要
抗議行動などを行う際に、不条理に対する怒りが必要なのはもちろんですが、長くたたかうためには、それ以外のモチベーションをあげる何かが必要です。それが優しさであり、楽しさなのだと私たちスタッフは考えています。雨の日も雪の日も、そして台風で中止のアナウンスを流しても、元日はお休みですと言っても、それでも人々が集う希望のエリア。なぜ人が自ら集うのか? それは原発を無くし、社会を変えたいという熱く強い想いと同時に、人々を惹きつける優しさ、楽しさがあるからだと私は考えています。
優しさ、楽しさといえば、希望のエリアを主催する団体「パパママぼくの脱原発ウォーク」には、明日香さんが作詞し、二朗さんが作曲したオリジナルソングがあります。
「きみとぼくのラブソング」
「やさしく強く」
聴いていただけると、二曲とも優しさ、楽しさ、そして本当の強さに溢れた曲ということを実感していただけるかと思います。かくいう私も、教員時代に「きみとぼくのラブソング」をクラスの授業で扱ったことがあり、子どもたちが「よい歌だなあ」と感想をくれた事もありました。私がスタッフになったのも、こうした優しさ、楽しさ、そして本当の強さに惹かれたからなのです。これは希望のエリアに集う参加者全ての方に共通なのだと思います。
ちょっとキザですが、最後にレイモンド・チャンドラーが生み出したフィリップ・マーロウの名台詞で締めくくって、筆を置く事にしましょう。
「強くなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない」
さあ、希望のエリアは、来週も熱く強い想いと優しい言葉でみなさまをお待ちしています。
(国会前「希望のエリア」スタッフ/佐藤真)
今回もスタッフの佐藤さんが原稿を寄せてくれました。これまで雨の日も雪の日も、抗議行動を続けてきた「希望のエリア」。主催側が天候などの理由で中止にしたときでも、参加者は自分たちの意思で集まり、声を上げるのだそうです。佐藤さんの文章からも、「希望のエリア」への熱い想いが伝わってくるようです。
ありがとうございます。今回原稿を掲載していただいたスタッフの佐藤です。
実は3.11の直後、「何かしなくてはいけない。でもどうすればいいんだろう?」と右往左往していた時、最初に出逢ったホームページがマガジン9さんでした。当時TwitterなどのSNSも知らなかった私は、今もトップページにある「全国デモ情報情報」などを見て、あちこちに行きました。これからもよろしくお願いします。