2012年憲法どうなる?どうする?

平和国家としての国是でもあった武器輸出三原則が、国会での議論さえないままに昨年末に緩和されました。憲法審査会も動き出していますが、どのような議論がされているのかあまり聞こえてきません。国民の関心が震災や原発問題に集中している間に、国のあり方そのものがなし崩し的に変えられようとしているのでは、という危機感があります。このコーナーは、憲法改正や安全保障に関する5つの質問について、様々な分野の専門家にお聞きしています。

辻元清美(つじもと・きよみ) 1960年生まれ。早稲田大学在学中の83年に「ピースボート」を設立し、民間外交を展開。96年の衆議院選挙に社民党から立候補し初当選。NPO法、情報公開法などに取り組み成立させる。2002年に議員辞職後、2005年の衆議院選挙で比例代表近畿ブロックにて当選。社民党女性青年委員長、政審会長代理に就任。2009年、衆議院議員総選挙において大阪10区(高槻・島本)から当選。社民党国会対策委員長に就任。国土交通副大臣に就任。2010年5月、国土交通副大臣を辞任。7月に社民党を離党。9月に民主党入党。国土交通副大臣内閣総理大臣補佐官(災害ボランティア活動担当)などを歴任。

Answer

対応が遅れたのを「非常事態条項がない」せいにするのは単なる逃げ。それよりも徹底した検証と今後に向けての具体的な体制整備が急務です。

 これも、始動した憲法審査会でさっそく何人もの議員が言い出していることです。しかし私は、今回の東日本大震災でボランティア担当の首相補佐官として最前線で働いた経験から、非常事態条項をつくったからといって災害時の対応がうまくいくわけではないと思っています。

 たしかに大震災の後、国−都道府県−市町村という縦割りの構図の中で、お金や物資の流れが悪かったり、市町村自治体が機能しなくなった場合の緊急時対応についてのルールも十分に定められていなくて、あらゆる動きが遅かったり、うまくいかなかったりしたのは事実です。私自身もそれによって歯ぎしりするような悔しい思いを何度もしました。でも、それを「非常事態条項がない」せいにするのは、子どもが「勉強部屋をつくってくれないから勉強できない」というのと同じ。非常事態条項があろうがなかろうが、やらなくてはいけないことはやるという、当たり前のことなんですよね。

 必要なのは、まず今回の災害対応の検証。そして、次に大規模な災害が起こったときにどうするかについて、今回の経験を踏まえてきっちりと備えをつくるということです。それをせず、「非常事態条項がないからできない」というのは、単なる逃げに過ぎません。

 以前、憲法改正の議論において「知る権利」や「環境権」の必要性が頻繁に持ち出された時期がありました。しかしそのときにも、憲法に知る権利を入れるために憲法改正を、という人たちが「情報公開法に知る権利を入れよう」と言う案に反対するとか、環境権を言う人たちが地球温暖化対策にまったく取り組んでいなかったりということがよくありましたから。今回の非常事態条項をめぐる議論もそれと同じ。環境権ブーム、知る権利やプライバシー権ブームが過ぎ去って、今度は「非常事態条項ブーム」なんじゃないか? とさえ思いますね。

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