平和国家としての国是でもあった武器輸出三原則が、国会での議論さえないままに昨年末に緩和されました。憲法審査会も動き出していますが、どのような議論がされているのかあまり聞こえてきません。国民の関心が震災や原発問題に集中している間に、国のあり方そのものがなし崩し的に変えられようとしているのでは、という危機感があります。このコーナーは、憲法改正や安全保障に関する5つの質問について、様々な分野の専門家にお聞きしています。
辻元清美(つじもと・きよみ) 1960年生まれ。早稲田大学在学中の83年に「ピースボート」を設立し、民間外交を展開。96年の衆議院選挙に社民党から立候補し初当選。NPO法、情報公開法などに取り組み成立させる。2002年に議員辞職後、2005年の衆議院選挙で比例代表近畿ブロックにて当選。社民党女性青年委員長、政審会長代理に就任。2009年、衆議院議員総選挙において大阪10区(高槻・島本)から当選。社民党国会対策委員長に就任。国土交通副大臣に就任。2010年5月、国土交通副大臣を辞任。7月に社民党を離党。9月に民主党入党。国土交通副大臣、内閣総理大臣補佐官(災害ボランティア活動担当)などを歴任。
Answer
改憲発議に「3分の2以上の議員の賛成」を求めているのは、「多数の横暴を許さない」という憲法の理念。日本の国のあり方そのものを変えてしまいかねないこの動きに、今後も反対の声をあげていきます。
96条議連自体は、一部の「改憲」で凝り固まった議員がリードしているだけで、義理で参加している人も多いという面もありますが、96条からまず変えていこうという動きがあるのは事実だと思います。憲法審査会でも、初日からすでに「96条改憲」についての意見が出ていました。
しかし、そもそもなぜ憲法改正の発議に「議院の総議員の三分の二以上の賛成」が必要、と定められているのか。それは、多数の横暴を許さないという憲法の理念です。先ほどの「改憲は国民の大多数の声があって初めて議論すべきこと」という話とも関連しますが、過半数の議員の賛成で発議が可能になってしまったら、政権交代のたびに憲法改正の国民投票が行われるということもあり得ます。それでは政治の根本が安定しないし、よくないということで3分の2という定めが設けられているのに、なぜそれを外す必要があるのか。日本の憲法は硬性憲法というあり方を選択しているわけですが、それを変えてしまうということは、日本の政治のあり方、社会の成り立ちそのものを変えてしまうことにもなりかねない。それは手をつけてはいけない部分だ、と私はずっと主張してきたし、今後も引き続き言っていくつもりです。
「3分の2のままでは憲法改正へのハードルが高すぎて、時代に合った憲法ができない」という政治家もいますが、それはどう考えても安易すぎる。過半数の議員だけの賛成で、普通の法律の改正と同じように発議ができるというのは、やはりおかしいと思います。憲法というものをそんなに軽く扱っていいのでしょうか? 憲法は政府と国民との契約で、いわば国の「重し」ともいうべきもの。それがころころ変わるような国なんて、国際社会からの信用もとても得られないのではないでしょうか。
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