12月18日、日本の自衛隊は、米国以外で初めて、海上配備型迎撃ミサイルの実射訓練に成功。宇宙空間で標的を迎撃したというニュースが入ってきました。続いて、12月24日に政府は、外国から突発的に弾道ミサイルなどが発射された緊急時に現場指揮官の判断で迎撃する基準を定めた【緊急対処要領】の一部変更を閣議決定しました。国内ではさほど大きな話題になっていないこれらのニュースについて、お隣の韓国より以下のような原稿が届きましたので、ここに紹介いたします。
金承國(Kim Seung Kuk)
1952年忠清南道生まれ。韓国銀行勤務(1970〜1975年)、崇実大学講師(1987〜1995年)、Han Korek新聞記者(1988〜1993年)等を経て、1995年崇実大学で 博士学位(哲学博士)を取得。その後、明治大学客員研究員(1996〜1999年)、ユネスコ研究員等を務める。「反戦反核」「アジアの宗教と平和」など著書や論文多数。近刊に「北朝鮮の核問題」。現在、NGOピースメーキング代表。ソウル在住。
日本のミサイル迎撃実験に反対します
日本の防衛省は12月18日、ハワイ沖で海上自衛隊のイージス駆逐艦“こんごう”に配備された海上配置迎撃ミサイル(SM3)を利用した弾頭ミサイルの迎撃実験を行いました。米国との緊密な連携とその指導の下に断行された今回のミサイル迎撃実験は、北朝鮮の中距離弾道ミサイル“ノドン1号”を想定したものです。
朝鮮半島および東アジアの平和に逆行するMD構想
日本は日米同盟の再編とともに、北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するミサイル防衛(MD)構想を推進してきました。2007年3月にパトリオット・ミサイル能力改善3型(PAC3)を配備し、2008年1月初めからSM3搭載イージス駆逐艦4隻を実戦配備する計画です。しかし、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威を口実に強行されている日本のMD構想は、どんな理由であろうとも、正当化されるものではありません。
SM3迎撃実験に成功した直後の12月19日付『毎日新聞』によれば、日本政府は北朝鮮がミサイル発射を準備する段階で事前に迎撃命令を出すことができる「MD運用の緊急対処要領」の改訂方針を明らかにしました。これはMD構想の真の目的が、対北朝鮮先制攻撃と朝鮮半島の軍事覇権にあることを示唆しています。このような体系の構築が米朝関係の正常化、朝鮮半島の非核化に正面から逆らうことになるのは言うまでもありません。
また、日本のMD構想は東アジアの限りない軍拡競争を招くということから、決して許されるべきではないと思います。日本はすでに先端の軍事技術をもっており、年間430億ドルを国防費に計上している世界4位(平成18年度版防衛白書)の軍事大国です。MD体系構築のため、2012年までに計上されている予算は1兆円以上です。朝鮮半島における平和協定の締結、東アジアの安全保障と相互軍縮が切実に求められているこの時に、私たちは日本のMD構想を受け入れることはできません。平和憲法に反する日米MD構想の即刻中断を
2006年、日米両国は日米同盟再編案を最終的に承認しました。同案によれば、両国は日米同盟の適用範囲を全世界的に広げ、自衛隊と在日米軍の相互運用性(interoperability)を拡大し、日本が地域の安全保障で一定の役割を果たすことに合意しました。
日米同盟の再編に向けて、日米両国は横田基地へのMD共同作戦センターの設置に同意しています。また、両国は海上自衛隊のイージス艦が北朝鮮弾道ミサイルを追跡・迎撃する際、日本が探知した北朝鮮戦闘機の情報を米軍に提供することにしています。しかし、北朝鮮の弾道ミサイルが日本を標的にしていない場合、すなわち日本に対する武力攻撃でない場合、在日米軍への標的迎撃情報の提供は武力行使を直接支援することになり、集団的自衛権の発動を禁止している日本国憲法に背くことになります。また、「MD運営の緊急対処要領」は、北朝鮮あるいは中国の弾道ミサイルが日本に向かっているのか確認できていない段階でも、日本の防衛大臣がSM3迎撃ミサイルの発射命令ができるとしている。これも明らかに憲法違反です。
私たちは、日本の平和憲法の枠組みを越え、強行されようとしている日本のMD構想と、その運用を中止することを強く求めます。あわせて私たちは、平和憲法が日本の軍国主義の復活を防ぐ最後の安全弁であるという認識の下、同憲法を護るため、引き続き戦うつもりです。
こんごう」は、2008年の1月に佐世保に配備されることが決まっています。
そして首都圏をはじめ、次々と配備が進む計画があります。
近隣諸国からの非難を浴びる中、
これらの迎撃ミサイルの配備を続けることが、果たして国益になるのでしょうか?
社会保障の問題でゆれる今、税金をそこにつぎ込むべきなのでしょうか?
私たち国民が真剣に議論するべきではないでしょうか?