7月1日の大飯原発3号機の再稼働は、福島第一原発事故直後に「脱原発」へと明確に舵を切ったドイツのメディアでも報じられた。『シュピーゲル』は政治・経済・社会を論ずるドイツの代表的な週刊誌であり、ウェブサイトではフクシマ特集を組み、放射性物質の放出状況や原発を巡る日本政府や国民の対応についてコンスタントに報告している。『ターゲスツァイツゥンク』はリベラルな報道姿勢で知られるベルリンの地方紙である。同紙は大飯原発での抗議行動を「ゴアレーベンのような」と表しているが、ゴアレーベンとはドイツのニーダーザクセン州に位置する高レベル廃棄物処分場侯補地であり、放射性廃棄物の同地への移転に対する激しい抗議行動が続いている。両者とも報道のトーンは淡々としたものであるが、共通するのはデモの動向に対する高い関心だ。市井の人々がどう考えているか、どんな行動を起こしているか。ジャーナリズムが当然注視すべきところを、日本のメディアは黙殺する。こうしたわが国のメディアの状況はすでに世界で広く知られているのかもしれない。ここでは、その中から2紙の記事を翻訳して紹介する。(芳地隆之)
「日本は大規模抗議にもかかわらず原発を稼働」
原子力なしでは立ち行かない、というのが日本政府の立場であり、フクシマの惨事から約1年を経て原子炉の運転を再開した。多くの人々がその決定に反対している。
『シュピーゲル』(7月2日)
福島原発の大惨事から1年以上を経て初めて、日本の原子力発電所、大飯原発3号機が日曜日に再稼働した。同原発前に集まった多くのデモ参加者はシュプレヒコールとダンスで再稼働反対を訴えた。機動隊が大飯原発の警備に当たった。デモ隊はその前に原発施設へ通じる道路をブロックし、作業員を発電所内に入るのを阻止しようとしたが、大飯原発の事業会社である関西電力は、抗議行動が原子炉の運転再開に影響を与えることはないとしている。
昨年3月の事故の後、日本は国内にある50基すべての原発の運転を定期検査で停止。それ以来、再稼働に関する世論は分かれた。次の日曜日には首都東京の公園で、再稼働反対と野田首相退陣を要求する大規模デモが準備されている。
大飯原発3号機、4号機の再稼働を首相が指示したのは先月だった。原発がなければわが国は生活レベルを保てないと、彼は言った。とりわけ暑い夏の数カ月間、原子力発電がないとエネルギー不足になる恐れがあり、日本の石油消費も増えると言うのである。
金曜日にはこれまでの日本で最大規模の反原発デモが行われ、数万人が大飯原発再稼働に反対し、「再稼働NO」などの掛け声を上げた。
反対運動は長い間、既存のメディアに無視され続けたが、主催者はツイッターなどソーシャルメディアを駆使して、デモを組織した。ノーベル文学賞作家の大江健三郎や映画『ラストエンペラー』の作曲を担った音楽家の坂本龍一もこの動きに加わった。
先の土曜日、損壊した福島第一原発4号機において、使用済み燃料棒が沈めてあるプールの冷却装置に異常が生じたと東京電力が発表。翌日曜日には代替冷却システムが起動した。東京電力によれば、70時間以内に冷却装置が正常化されなければ、プールの温度が上昇し、放射性物質が放出されるという。
「まるでゴアレーベンのようだ」(一部訳)
フクシマ以来、初めて日本の原子炉が運転を再開した。原発に反対する多くの人々は再稼働に反対している。
福島第一原発の大惨事から1年以上を経て、日本の原発が再稼働した。日曜日に大飯原発3号機が運転を開始したのである。
同日、200人のデモ隊が再稼働反対のため、原発施設につながる道路を封鎖。メディアの報道によると、大飯原発を前に、太鼓を鳴らしながら、「再稼働反対」を訴えた。土曜日には650人が原発施設の前でデモを行っている。
大飯原発の前でデモを行っていたコウノ・タイスケは、デモ隊は昼夜原発を監視し続けるという。「原発がクリーンというのは嘘」とその41才のミュージシャンは言う。そして問う、どうしてヒロシマ、ナガサキへの原爆投下の後、日本は原子力を保持しようとしたのか、と。
日本では大規模デモや抗議行動は稀なのだが、毎週金曜日には官邸前に数万人が集まり、「再稼働反対」を訴えている。
福島の事故からわずか1年あまり。
原因の検証や被害者への補償、そして安全対策も十分にはなされないままでの再稼働決定。
その日本の状況は、世界の人々の目にどんなふうに映っているのでしょうか。
同時に、それに反対する人たちが「声をあげはじめたこと」が、
海外できちんと報道されていることに、心強さも感じます。
ドイツ・ゴアレーベンでの反原発アクションについては、これに参加した山本太郎さんに詳しくお聞きしました。
グリーンピースのブックレット「動けば変わる。」に収録しています。