こんにちは。
前回は、ちょっとグロテスクなビデオを使ったネスレ社への企業キャンペーンをご紹介しましたが、今回はちょっと違う切り口のキャンペーンをご紹介します。 その前に…。
この「カエルの公式」でも頻繁に取り上げてきた非暴力・不服従行動について画期的な判決がオランダの裁判所で下されたので、ご紹介したいと思います。「裁判所がこんな理由で、こういう判決を下すのか」とオランダ裁判所と日本の裁判所の抗議活動への意識の違いに驚かされます。ぜひ、詳細は下記のブログをご覧ください。
「抗議活動はご自由に –オランダ裁判所で驚きの判決」 (グリーンピース・ジャパン 事務局長ブログ)
Facebookに対して
グリーンピースが働きかけた理由は?
さて、今日の本題。 みなさん、Facebookを使っていますか?
全世界で10億人以上、日本でも1000万人以上の利用者がいると言われるFacebook。今回は、このFacebook社へのグリーンピースの働きかけを紹介します。
「Facebookって何か製造しているわけでもないし、ソーシャルネットワークが環境を破壊しているとは思えないのですが…」と思う方も多いのではないでしょうか。
グリーンピースが問題視したのは、ソーシャルネットワーク利用者の増加などで急速に広がるクラウドコンピューティングが使用する電力量。クラウドとは、データを自分のパソコンや携帯電話ではなく、インターネット上に保存するサービスですが、私も含めGoogleやFacebook、twitterなどを通して多くの人が利用していると思います。
このクラウドというシステムは、莫大な量のデータを扱うので、大規模なデータセンターが必要です。データセンターとは、コンピューターを集めた巨大な施設。特に利用者が急成長しているFacebookやGoogle、そしてAppleなどは、データセンターの増設を急ピッチで進めてきましたし、現在も進めています。
クラウドが使う電力は世界の国々で第5位
以下のグラフは、電力使用量を国別に並べたもの。上から5番目オレンジ色が、クラウドコンピューティングを支えるため、世界中のデータセンターと通信設備で使われる電気の量です。2007年時点で、すでにドイツ1国よりも多くの電力を使っていることがわかります。
(グリーンピースのレポート「How Clean is your cloud?」より)
グリーンピースは、自然エネルギーへの移行を目指す
そこで、クラウドコンピューティングのような新しい産業に自然エネルギーの採用に積極的になってもらうことで、新しい未来社会の構築に役立てようというのがグリーンピースのキャンペーンの狙いです。
そんな2010年2月、Facebook社がアメリカのオレゴン州に新しいデータセンターを建設するというニュースが流れました。しかも、そのデータセンターの電力は、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力で賄うことになるというのです。
そこで、グリーンピースはFacebook社に対して、オレゴンにおけるデータセンターの建設見直しと、100%自然エネルギーでデータセンターを運営してほしいと訴えたのです。
Facebook社に働きかけるツールは
Facebook!
このキャンペーンに利用したツールがFacebook。Facebook社に働きかけるのには、Facebookユーザーが直接Facebookを通じて、創設者のマーク・ザッカーバーグに働きかけるのが一番効果的だと考えたのです。
こんなビデオも制作しFacebookでたくさんシェアされました。マーク・ザッカ―バーグ氏にデータセンターを自然エネルギーに転換してほしいとユニークに訴えるビデオです。
さらに、「Facebookに自然エネルギーに転換してほしい」と願うユーザーがFacebook史上最高の1日当たりのコメント数(当時)を投稿するという記録にも挑戦し、記録を塗り替えました。
これ以外にもカリフォルニアでテレビコマーシャルを行ったり、以下の図のように他企業との環境への配慮比較ランキングを発表したりして、Facebookだけではなく、業界全体にエネルギー問題を考えてもらうように働きかけたのです。
(“How Dirty is Your Data?” 2010年2月グリーンピース発表)
ついにコラボレーションが実現!
そして2011年12月にグリーンピースとFacebookは共同でプレスリリースを発表し、Facebookは今後のデータセンターを自然エネルギー100%でまかなうことを目指すと宣言するに至りました。日本でも以下のように報道されています。
「フェイスブック社、グリーンピースと協力して自然エネルギー100%を目指す」(オルタナ) グリーンピースは、Facebookの決定を歓迎して新たなビデオも制作しています。 さらにその後、すでにご紹介したランキングを通じて他社にも働きかけを続けてきたグリーンピースは、Google、マイクロソフト、アップルなどの方針にも影響を与えていくことに成功します。
企業の「電源責任」が問われる時代に
あまり日本ではニュースにならないですが、このようなグローバル企業の先進的な調達方針変更は、数年後のグローバルスタンダードになることが予想できる動きです。日本の企業は、紙製品、鉱物などの調達方針について敏感になってきました。しかし、すでにグローバルな視点でみれば、電力の調達方針という企業の「電源責任」が問題になっている点に注目です。
「ただの反対活動」ではなく、厳しい意見の対立から新しい方向性を創造できる、それが「企業とNGOとの良い関係」だと思っています。
11月16日にセミナーを開催
グリーンピースがどのようにFacebookなどを動かしてきたのか。11月16日に、実際にFacebookなどのキャンペーンを指揮したグリーンピースの担当者が来日し、東京で講演会を行います。ぜひ、ご参加ください。
詳細はこちらをご覧ください。
「IT 企業が自然エネルギーに切り替える理由」(PDF) 次回は、国内の企業へのキャンペーンのご紹介です。お楽しみに。
前回の「ネスレ」キャンペーンとは、またまったく違った手法によるキャンペーン。
やみくもに敵対するのではなく期待や要望を伝え、よりよい方向を見出していく、
「企業とNGOとの良い関係」づくりの一例といえるかもしれません。