6月18日~21日の4日間、沖縄へ行ってきた。「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し海兵隊の撤退を求める県民大会」に参加しようと思ったのだ。
16日に梅雨明けしたばかりの沖縄は、まるで肌に太陽を沁み込ませるような暑さに煮えていた。怒りが熱となって地上に降り注いでいるような気がした。
そのルポを書こうと思ったけれど、先週の「三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記」に詳しいし、迫力いっぱいの動画も臨場感にあふれていた。だから「県民大会」の様子はそちらを見てください。三上さんに感謝。
でも、被害者の遺棄現場や、工事中止で静かに凪いでいた辺野古の海、キャンプ・シュワブのゲート前での山城博治さんとの再会、そこから北上しての東村高江の座り込みテントの状況、そして、23日の「沖縄 慰霊の日」の式典準備に忙しい本島最南端激戦地跡の「平和の礎」と、ぼくはできる限り走り回ってきたのだった。
いずれ、それは別の形で書いてみようと思う…。
自宅に帰り着いて早々、世界は大揺れになった。
例の「イギリスのEU(欧州連合)からの離脱の是非を問う国民投票」の結果が衝撃的だったのだ。ぼくも実は、なんだかんだ言っても、結局、イギリスはEUに残留するだろうと思っていた。それは、多くのジャーナリストや政治学者、エコノミストたちも同じだったようだ。
だが結果はご存じのとおり…。
イギリスの国民投票結果が明らかになった日の世界のマーケットは大混乱、為替レートの乱高下も凄まじい。
「異次元緩和」とかいう目くらましの金融政策と、それによる円安、株価維持でなんとかカッコをつけてきたアベノミクスは、この激動の中で、ほとんど崩壊してしまった。もはや打つ手はない。
毎日新聞(6月25日付)に、こんな記事があった。
(略)民進党の岡田克也代表は24日の記者会見で「世界経済に及ぼす影響や、EUの統一がどうなるか大変深刻な問題だ」と懸念を示した。日本経済への影響には「けん引車だった円安・株高が逆回転し、離脱の問題がさらに拍車をかける。アベノミクスのうたげは終わった」と述べた。
さらに岡田氏は、安倍政権が公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の株式投資比率を50%に引き上げたことに触れ、「すでに5兆円ほどの損失が出ていると言われている。(損失の拡大で)場合によっては年金の引き下げにもつながりかねない」と指摘。「株式の運用割合をもとに戻す決断が必要だ」と政府に対応を求めた。(略)
岡田氏の言説に、ぼくは疑問を持つことも多いけれど、この「アベノミクスという虚しい宴が終わった」という認識には同意する。そして、我々の老後の暮らしの最低の支えである「年金」を弄ぶ安倍政治には、はっきりとNO!を言わなければならないところまで来ていると思う。
誰かの川柳に、こんなのがあった。
年金で バクチ打つなよ 安倍首相
まさにそのとおり。
日銀総裁の黒田東彦氏と二人三脚で金融政策をいじくり、あげくの果てにはマイナス金利などという禁断の奥の手を使い、それでも上向かぬ景気に焦る安倍首相は「リーマン・ショック前に似ている」と、“裏官僚”の言うがままに妙な数字を並べ立て、サミットで大恥をかいた。
だが選挙戦では、その恥も掻き捨てて「景気は上向き、賃金は上がり、有効求人倍率も上昇し、雇用者は大幅に増えたではないか」と、またしても官僚ペーパーを棒読みでまくし立てる。どれをとっても、国民の感覚とは遠く離れている。
雇用者の増大? パート等の非正規労働者は増えたがそれに反比例して正社員は減っている。実質賃金はずーっと下がりっぱなしだし、若年層が減れば有効求人倍率が上がるのは当たり前だ。
地方での有効求人倍率の上昇を誇らしげに言い立てるが、地方は人口が急速に減っている。人口が減れば、仕事を求める人の数も減る。そうなれば求人倍率が上がるのは、小学生でも分かるリクツだ。いつまでこんなごまかしを続けられると思っているのだろう…。
だが、参院選の各マスメディアの事前調査では「改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2をうかがう情勢」だという。
調査結果を報じる新聞を読みながら、ぼくは暗然とする。ほんとうに、それでいいのだろうか。
ぼくが小学生のころ(もう数十年前の古代史です)、学校で「選挙標語」のコンクールがあった。そこで最優秀賞になった同級の女子生徒の標語はこうだった。
【母さん投票、わたしは留守番】
むろんぼくも応募した。一応入選作だった。
【よく見、よく聞き、それから一票】
どちらがいいかは、その時のぼくにだって分かった。ぼくのはリクツっぽいだけで、ちっとも面白くない。負けたな。ふ~ん、あの子はそんなことを考えていたのか…とほのかな恋心(というのはウソ)。
人の頭って不思議なもので、時折、ふとしたことで妙に古い懐かしい記憶が呼び起こされる。こんな小学生のころの標語が甦ったのはなぜだろう。そう、選挙のせいなんだ。
選挙前だから、書きたいことを書く!
マスメディアが一斉に報じたように、ほんとうに「改憲勢力が3分の2獲得の情勢」なのだろうか?
安倍首相は「アベノミクスを最大限にふかす」などと豪語している。しかし“ふかす”のに必要なエンジンはもはやポンコツ。そんなものはうまく作動するはずもない。
財政と金融政策の破綻はどうするつもりなのか。緊急時の応急措置であるはずの「異常な金融緩和」を、どう収束させるのか。その終わりが見えないならば、政府の借金は積み上がる一方だし、いずれ国家財政は破綻し、国債は暴落、円の価値もどん底へ落ちるだろう。
こんなことは、別にエコノミストや学者じゃなくても、少し考えれば分かる道理だ。アベノミクスとは、ひとことで言ってしまえば「中央銀行がひたすら紙幣を刷り続け、国家の金繰りをたすけているという、まさに悪魔の政策」なのだ。それによって、なんとか株価の高止まりを演出し、あたかも景気がいいように見せているに過ぎない。
大企業の景気が良くなれば、その利益がしたたり落ちてきて、末端の労働者にまで恩恵が及ぶ、というのが安倍首相お得意の「トリクルダウン理論」だったはずだ。まったく「労働者は大企業のおこぼれで我慢しなさい」というあからさまな財界優遇策。だが、円安で儲けたはずの利益は、労働者にしたたり落ちるどころか、大企業が「内部留保」として溜め込み、その額は実に300兆円に達する勢いという。大企業を肥らせただけの結果である。
しかし、国民に恩恵をもたらさないアベノミクスでさえ、イギリスのEU離脱ショックで、ほとんど崩壊した。
円相場は一時ドル100円を割り込み、株価など1200円もの大暴落。アベノミクスが吠え立てていた「景気回復」は元の木阿弥。アベノミクスが「張り子の虎」であったことに、ぼくらはもう気づくべき時に来ている。
こんな状況の中でも、原発再稼働路線は止まらない。田中俊一原子力“推進”委員長の下で、すでに稼働40年を超える高浜原発1、2号機の最長20年の延長を認めるという、最大の愚挙が行われた。
だが、その原発再稼働も、改憲も、安全保障政策も、沖縄米軍基地問題も(沖縄以外では)ほとんど選挙の争点になっていない。というより、安倍自民党はこれらを争点から隠し、もっぱら経済問題に一点集中、アベノミクスというポンコツ政策を言い立てて、有権者の目をごまかそうとしている。
そういえば、甘利疑惑はどこへいったか。「保育園落ちたの私だ」に端を発した待機児童問題や、あまりの賃金の安さに介護職員が集まらないという悲鳴を上げる介護施設の問題など、たくさんの身の回りの問題さえ、安倍首相は「一億総活躍」だの「女性が輝く社会」だのと、空虚なお題目を唱えるだけで、何の具体的な政策を示さない。
それでも「改憲勢力3分の2」なのか。
もしそれが現実化し、選挙後に安倍極右内閣が「それ、改憲だ!」と喚き始めたとき、「そんなこと、選挙の時には言わなかったじゃないか」と批判してももう遅い。
イギリスでは国民投票が終わった後、「こんなはずじゃなかった」「政治家はウソをついていた」「国民投票をやり直せ」などという声が高まって、騒然としているという。ことに、EU離脱を煽った政治家たちが大きな“ウソ”をつきまくっていたことが、その後、次々と明らかになってしまったのだから始末に悪い。
イギリスでは国民投票後、ネットの検索サイトで「What is the EU(EUっていったい何?)」という項目が2番目に来ているという。何のための国民投票だったのか、という疑問の声が上がるのは当然だろう。大声で喚く奴らに、まんまと乗せられてしまった国民の嘆き節。
もし日本で、参院選の結果が「改憲勢力が3分の2議席獲得」になって、国民投票が実施されることになった場合、イギリスと同じことが起らないと誰が言えようか。
「改憲なんて聞いてないよ」「憲法のどこを変えるのか、安倍サンは言わなかったじゃないか」「第一、選挙戦で自民党は『憲法論争』は避けていたぞ」「公明党は『9条改憲反対』じゃなかったのか」…。もう遅い。
安倍首相は、党首討論でも選挙演説でも「改憲」にはフタをしてほとんど触れず、「アベノミクスをふかす」という、ポンコツエンジンを“空ぶかし”するばかり。エンジンどころか、もう完全なガソリン切れじゃないか。どうやって“ふかす”ことができるのか、そんな材料はどこにあるのか! もう「空虚な宴」は終わったのだ。
そういえば『宴のあと』という三島由紀夫の小説があったな。これも政治がらみの小説だった…。
隠された争点を、真っ昼間の光の中にさらけ出せ!
朝日新聞デジタルが、6月25日に「1人区、ここまで伸びるとは」とのタイトルで、次のような記事を配信していた。枝野幸男民進党幹事長の記者会見での発言だ。
(参院選の)1人区が苦戦しているとは受け止めていない。率直に言って、半年前は1人区でうちが戦えるところは無い状態だった。うち(の公認)ではない新潟、沖縄、岩手(の3選挙区)と、あとは1人区のどこで戦えるんだろうという状況だった。
だがもうすでに10選挙区くらいは互角か互角に近いところまで追いついてきている。岡山も含めて出遅れのところでも、十分に届くところまで来ている。半年前の状況を考えたら、ここまで伸びてこられるとは思っていなかった。(岡山市で記者団に)
一強多弱と言われる政党状況の中で、野党協力が少しずつでも実を結べば嬉しい。各党の思惑はいろいろあるだろうし、特に民進党の煮え切らなさ(原発問題など)にはイライラすることも多いけれど、とにかく、これ以上安倍政権をのさばらせておいては、この国は安倍首相の願いどおり、「(旧い)日本を取り戻す」ことになってしまう。
「改憲」については、リベラルな人たちの間でもいろいろな意見があることは承知だが、少なくとも安倍晋三首相という極右政権の下での「改憲」など、ぼくは絶対に許容できない!
まだ時間はある。
安倍に一泡吹かせたい。
ぼくは、できる限りの発信をする。できるだけ、集会などにも参加する。それが多分、ぼくのような高齢者にできる、この国への最後の恩返しじゃないかと思う…。
「憲法改正は争点にしないが、秋から審議に入る」なんて「見積書には入れないが後で請求はする」と言っているようなものでサギではないか!民間企業なら手が後ろに回る(古い)かつぶれるようなことがなぜ政治では堂々とまかり通ってしまうのだろう?
(その1) 憲法改正、選挙公約になく選挙戦では一言も触れようとしない。 せこい桝添、姑息な安倍。民意の誤用は民主主義を破壊する危険性を秘めている。だから危険なのは安倍である。しかし、国民総出でバッシングされたのは桝添だ。そこえ、下記の寄稿文が目に入ってきた(伊藤塾「塾便り通信」2016年7月1日・152号)。
(その2) 「今回の選挙で自民党が憲法改正を表立って争点にしないと批判する人がいます。ですが、それは間違いです。自民党は4年前に憲法改正草案を発表し、個人の尊重を否定して国防軍を創る、そうした国ずくりを目指すとはっきり国民に示しています。これは今の憲法とは全く逆の方向を目指すものです。自民党はこれまで選挙では争点にしていなかった秘密保護法や戦争法を強行に成立させました。しかし、これはともに自民党改正草案の中にあることを実現しただけです。つまり着実にゴールに向かって政策を進めているのです。これは国民に対して誠実な態度です。こうした国ずくりを目指すことに賛成なのか反対なのか、その選択が全ての選挙では求められているのだということをしっかり自覚することが大切です。選挙は自分にとって何が幸せなのかを改めて考える良い機会です。」
(その1)について,不足がありましたのでこの原稿にて御検討下さい。 (その1) 憲法改正、選挙公約になく選挙戦では一言も触れようとしない。 せこい桝添、姑息な安倍。民意の誤用は民主主義を破壊する危険性を秘めている。だから危険なのは安倍である。しかし、国民総出でバッシングされたのは桝添だ。そこえ、下記の寄稿文が目に入ってきた(伊藤塾「塾便り通信」2016年7月1日・152号)。これは伊藤塾長が日々感じたことを「塾長雑感」として伝えているものです。