マガ9学校やりました。

12月4日(土)15:00〜17:30
@カタログハウス本社地下2階セミナーホール

テーマ:子どもの本と戦争~児童書における戦争プロパガンダ~

講師:山中恒さん(児童文学作家)×石坂啓さん(漫画家)

山中恒さんの最新刊『戦時児童文学論 小川未明、浜田広介、坪田譲治に沿って』(大月書店)には、作家や子どもたちの内面まで国家が介入し、荒廃をもたらしていった様子が、膨大な資料と共に紹介されています。私たちは「この歴史から学ぶべきだ」と思うのですが、さて現在はどうでしょうか? 過去を検証しつつ、今目の前で起こっている「表現の規制」についても、語っていただきます。

山中恒(やまなか ひさし) 児童読み物、ノンフィクション作家/1931年北海道小樽市生まれ。早稲田大学在学中に早大童話会に所属し、卒業後から児童文学の創作をはじめる。『山中恒児童よみもの選集』で巌谷小波文芸賞、『とんでろじいちゃん』で野間児童文芸賞、第38回エクソンモービル児童文化賞を受賞。映画化された作品に「転校生」、「さびしんぼう」(大林宣彦監督)他。戦時下を描いた作品に『ボクラ少国民』シリーズ(辺境社)、『すっきりわかる「靖国神社」問題 』(小学館)、『アジア・太平洋戦争史』(岩波書店)、『戦争ができなかった日本〜総力戦体制の内側』(角川書店)など多数。

石坂啓(いしざか けい) 漫画家/1956年愛知県生まれ。故手塚治虫氏に師事し、漫画家デビュー。漫画、エッセイの他、著書に『学校に行かなければ死なずにすんだ子ども』(幻冬舎)、『悪』(大月書店)など。山中恒氏とのコンビでつくった児童文学作品に『メタネコムーニャン』(小学館)など多数。『マガジン9条』発起人の一人。『週刊金曜日』編集人。

 今回の「マガ9学校」は、大月書店さんとのコラボ企画であり、『戦時児童文学論』の発刊記念イベントでもありました。

 第1部は、山中恒さんの講演です。ご自身がなぜ児童文学の創作を始めたのか? その動機や早大童話会に入り小川未明の作品を初めて読んだ時に受けた「ショック」や、その後の山中文学の方向性についてなど、ユーモアたっぷりに語ってくれました。またこの本のテーマでもある、「なぜ児童文学作家が戦争協力の作品を書いたのか」についても、するどい批判が繰り広げられました。スライドを使い、戦争中に作られた「子ども向けの劇画や紙芝居」も映し出され、当時の子どもたちが、何をどう「教育」されていったのかが、生々しく語られました。

 第2部は、漫画家の石坂啓さんが登場です。山中さんと石坂さんのコンビで作った『メタネコムーニャン』(小学館)の編集者で、現在は評論家の野上暁さんが司会に入ってのトークセッションが行われました。戦前戦中の表現規制から、今話題になっている「漫画・アニメの表現規制」=東京都青少年育成条例の改正案に話が及び、ちょうど会場にいらしていた藤本由香里さん(明治大准教授)から、この法案再提出の経緯や問題のポイントについて、わかりやすくお話がありました。

 第3部は、質疑応答の時間です。会場の参加者から寄せられた質問、「戦時中に戦争協力した作家や音楽家たちは、戦後良い作品を書けばそれでいいのか?」、「改正法案が通ったら、『源氏物語』はどうなるの?」、「戦時下でも、こっそりと子どもたちが歌っていた体制批判の替え歌はあったの?」など多岐にわたった話題について、時間いっぱいお話しくださいました。また、石原慎太郎や裕次郎と山中先生との意外な接点もわかり、驚きでした。

 「公による表現の規制」は、決して終わってしまった過去の話ではなく、私たちは「過去の歴史」からちゃんと学ぶ必要があることを、改めて考えさせられた講演でした。この講演の模様は、後日DVDになります。第1回、第2回の『マガ9学校のDVD』と同様にカンパでお分けすることになると思いますので、もうしばらくお待ちください。

koe

アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)

対談は、活気にあふれ楽しめました。物心ついた頃から「反戦教育」をされてきましたが、“今まで知らなかった話”が多く、そして現在も、また戦争に向かって言論統制をされていくようで「過去のことだから」と言い切れないと思います。
(高橋由為子・イラストレーター)

あいつは少しおかしい」と言われるような存在であり続けるのはけっこう大変ですが、価値あるマイノリティーが果たす役割は大きいと思いました。

(小池隆夫・元教員)

「漫画を読むこと」に、こんなにも理解のある大人がいることに、びっくりしました。私は漫画が好きです。親に何度も捨てられるような、どうしようもない漫画をいくつも持っています。ということは、こういうものを読んで大きくなった私は、「健全ではない」ということになるのかなと思うと笑ってしまいます。戦争を知らない私たちが、言論を害される恐怖をどう伝えていくのか、きちんと考えていきたいと思いました。
(学生)

戦争中は、漫画を一切読ませず、それに変わる劇画によって戦争を美化していった過程がわかった。
(菊地裕美子・地方公務員)

大ファンの山中恒先生に会えて、感激しました。BLの質問にも石坂先生にお答えいただき、うれしかったです。いろいろがんばろうと思います!
(主婦・匿名希望)

とっても楽しい講演会でした。歴史は繰り返す。どんな時であっても「あのときなぜ止められなかったのか」と後悔しないように生きたいです。
(北村洋・団体職員)

山中さんのお話は人間的でした。石坂さんがラジカルな人であることが、判りました。今回の都の条例は、絶対通してはなりません。言論・出版の自由が殺されます。
(都職員)

戦争中、なぜ多くの作家が戦争賛美のうずの中に巻き込まれていったのか、山中先生の本を読んで、考えたいと思います。自分だったら、どうだったのかも含めて。
(匿名希望)

 

  

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