2011年2月11日(金・祝)13:00〜18:00
@カタログハウス本社地下2階セミナーホール
その領有をめぐって日中が対立する尖閣諸島。
ある日、1隻の中国漁船が密かにそこに接近し、武装した漁民らが上陸を果たした、
中国のねらいは何か。国際世論はどう動くのか。
緊張がにわかに高まる中、日本はどう対応するのか。
「対話」か「軍事力」か? そしてその時、あなたが選ぶ道は?
伊勢崎賢治(いせざき・けんじ)1957年生まれ。大学卒業後、インド留学中にスラム住民の居住権獲得運動に携わる。国際NGOスタッフとしてアフリカ各地で活動後、東ティモール、シェラレオネ、アフガニスタンで紛争処理を指揮。現在、東京外国語大学教授として紛争予防・平和構築講座を担当。著書に『武装解除 紛争屋が見た世界』(講談社現代新書)、『伊勢崎賢治の平和構築ゼミ』(大月書店)、『国際貢献のウソ』(ちくまプリマー新書)などがある。
東京外国語大学伊勢崎ゼミ伊勢崎先生のもとで平和構築について学ぶ東京外国語大学3年生×11人。大学で専攻する言語や分野はさまざま。それぞれの専門を活かしつつ、昨年からゼミの一環として今回のワークショップ企画に取り組んできた。
鈴木邦男(すずき・くにお)1943年生まれ。学生時代から右翼・民族運動に関わり、サンケイ新聞社勤務を経て1972年に「一水会」を結成。1999年まで代表を務め、現在は顧問。テロを否定して「あくまで言論で闘うべき」と主張。愛国心、表現の自由などについてもいわゆる「右翼」思想の枠にははまらない、独自の主張を展開している。著書に『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)、『失敗の愛国心』(理論社)、『鈴木邦男の読書術』(彩流社)など多数。。
マエキタミヤコ1963年生まれ。1986年よりコピーライター・CMプランナー。1997年からブランディング、クリエイティブディレクターとして、NGOの広告に取り組み2002年に非営利広告メディアクリエイティブ・サステナ設立。「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表、2005年「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーン実行委員、上智大学、立教大学非常勤講師、2008年より東京外国語大学平和構築学ピースアド担当助教。
今回の「マガ9学校」は、初の少人数制ワークショップです。5時間にわたって行われました。ここに当日の流れを簡単に紹介しておきます。
■いま現在の状況においてのワークショップ
まず最初に、「中国は脅威ですか? 脅威じゃないですか? その理由は?」という問いかけによって3つのグループに分かれます。同じ考え方の人が偏らないようなグループ分けがなされ、自己紹介をしつつ、「なぜそのように考えるのか」その根拠について話し合いを持ちます。「脅威である」と答えた人は少数だった一方で、「脅威ではない」とする人からも「脅威と考える要素はいくつもある」との指摘が多数。その上で「だからといってすぐさま脅威と考えたくはないし、考えるべきではない」という声が多く聞かれました。
その後、「現状の中国についての知識の共有」を行うため、伊勢崎ゼミ研究生によるプレゼン『尖閣事件についての「おさらい」と「その背景」』が行われました。
■架空の状況設定によるワークショップ
ここからがシミュレーションになります。第一の事件が発生! その事件とは、「中国の漁民(30人)、尖閣に上陸」「上陸可能な船着き場の建設を開始」「島近くに監視船が見える。武装している様子も見える」というもの。参加者は、「市民外交審議会」のメンバーという設定。市民外交審議会とは、広く外交に関する国民の意見を聴き、政府の外交政策を国民に身近に捉えてもらうことを目的として、民間人で構成された審議会です。
参加者は、ファシリテーターを務める伊勢崎ゼミ生たちが例えばの案として示した A)海上自衛隊を出す。B)海上保安庁で対応する。C)外交、政治的解決、警告のみ などの選択肢からさらに具体的な策について議論、それを代表者が発表します。「中国のメンツを潰さないような対応を」「尖閣諸島での和平会議を呼びかけてはどうか」など、さまざまな視点からの意見が述べられました。
■プロパガンダを考えるワークショップ
さらに続けて、第2、第3の事件が起こります。まずは「漁民に対して説得にあたった海保職員7名が攻撃された」という報道ビデオの上映。続いて、「尖閣の自然を守る会」の自然保護活動家が、拘束されたらしい」というニュースが、SNSを中心に駆け回るという状況。ネットを中心に草の根で広がる「キャッチコピー」が「世論形成」されていく様をリアルに感じます。
この状態を受けて、さて「市民外交審議会」のメンバーはどうするか? ヒートアップする世論を落ち着かせるために、どういう手段をとるのか? ピースアドというツールは使えるのか? この難問について、グループごとにディスカッション。それぞれのグループで議論し、最後にまとめたものを発表します。
「韓流に対抗して『漢流』スターをプロデュースすることで、対中感情を向上させる」
というアイデアを出したグループ、「愛国心を排他主義につなげるのではなく『日本人だったらそんな恥ずかしいことはやめよう』という方向に持っていく」という意見が出たグループ、さらには「そもそも市民側が政府に荷担して世論を操作するのはどうなのか?」という根本的な疑問が提示されたグループもありました。
■先生たちによるトークセッション
最後のまとめのコーナーは、伊勢崎さん、鈴木邦男さん、マエキタミヤコさんによるトークセッションです。事件2や3の状態は、現実問題ではいわば「臨界点」では? と伊勢崎さん。いくつかの「沈静化」のためのアイディアは出されましたが、ここまでヒートアップしてしまうと、それを押さえるのはなかなか難しいのでは、というコメントも。またゼミ生たちが作った「架空の報道番組」の出来が良かったことからも、「捏造というのはいとも簡単にできるんだ」ということが、はからずも証明されたという指摘もありました。作為的な「プロパガンダ」がいかに危険なものになり得るかということを、改めて実感する機会にもなったのではないでしょうか。
アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)
このような企画に参加するのははじめてだったので、どういう雰囲気なのか不明でしたが、おもしろかったです。学生さんがつくったとは思えないぐらい、スライドとかVTRとか作り込まれていて良かったです。一つ思ったのは、もっと学生主体でもよかったかと思います。なんとなく、先生方に遠慮されている気がした場面もあったので。
(匿名希望)
色んな視点からの意見が聞け、また想像もできておもしろかった。一般的に関心のない層を集めてもおもしろいかも。独自意見をあまり出せない自分の力のなさも実感できました。
(秋葉紗理)
尖閣問題のことが背景までわかり、多方面から考えられて良かった。プロパガンダの本質についての問題提起があり、良かった。もっと考えたい。
(匿名希望)
当たり前のことを当たり前にできないという発見がありました。(正しい情報を把握し、それをもとに話し合い、共有するということです。)こういった「小さな努力」を怠らず、大きな問題に対応したいと思いました。強いて申しますと、もっと話し合う時間が欲しいと思いました。
(立花英人)
楽しかったです。皆さんの素敵なアイディアに感心させられました。鈴木邦男さんのダーティでも政治力のある首相支持論、大共感です。
(飯島富子)
シミュレーションで、自分がどういう立場に立つのか?というところが正直、今いちつかめず、なかなか意見がまとまりませんでした。(隣に座ってくれたファシリテーターの学生さんに改めて聞いてようやく「そういう設定だったのね!」と理解できました。)最初に、伊勢崎さんがおっしゃっていたように、5日ぐらいかけてやりたい内容を5時間にまとめた形だったので、情報量も多く、私のアタマがなかなかついていかなかったのだと思います。欲をいえば何日かかけてガチでできたら、本当におもしろい体験ができるだろうなと思います。来て良かったです。
(前田真吹)
いろいろなシミュレーションは面白かったですね。架空のニュースもかなりリアルにできていておどろきました。「捏造」というものは、簡単にできるものだと改めて思いました。
(匿名希望)
とてもおもしろかったです。時間が短く感じました。
(谷家幸子)