12月8日(土)14:00~17:00
@カタログハウス本社 地下2階セミナーホール
東京電力福島第一原発事故は、国や企業、学者らの無責任体制を明るみに出しました。危険性を認識しながら十分な対策を取らず、被害補償や健康被害の調査も消極的。被害者たちの困難は周知の通りです。しかし、この無責任体制は今に始まったことではありません。おしどりマコさん、ケンさんは、福島の被ばく問題を中心に取材を続けるなかで、水俣病やアスベストなど、過去に起きた健康被害にもそっくりな無責任体制があることを痛感したそうです。今後、同じ事が繰り返されないために、私たちは何を知っておくべきか。アスベスト訴訟問題に携わる澤田慎一郎さんと、福島で子育て中の秋葉有里子さんをゲストに招いてお話を伺いました。
おしどり●マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。 ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。 2011年の福島第一原発事故以降、東電や政府の記者会見に通いつめ、福島などでの取材活動も続けている。「マガジン9」でコラム「脱ってみる?」連載中。
澤田慎一郎(さわだ・しんいちろう)全国労働安全衛生センター連絡会議・事務局次長。主にアスベスト健康被害問題に取り組む。2009年に京都精華大学人文学部環境社会学科卒業。2012年4月から千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻にも所属。Twitter→@sawadyi
秋場有里子(あきば・ゆりこ)埼玉県東松山市出身。現在は、福島県小野町でコミュニティハウス「おのほっぺ」を運営。放射性物質の測定会、勉強会、ママのしゃべり場などで情報発信を行う。Twitter→@onohoppe
第一部は、おしどりのお二人の司会のもと、澤田慎一郎さん(全国労働安全衛生センター連絡会議・事務局次長)からアスベスト問題のなりたちと、原発問題との共通点をお聞きしました。
マコ レベル7の原発事故は日本で初めてでしたが、経済性を優先したために大勢の人が救われなかったのは水俣病やアスベスト被害、その他の薬害問題なども同じです。原発事故のあと、水俣病裁判の経験者が福島県飯舘村を訪れてアドバイスをしたといいます。水俣病を巡っては、いくつかの裁判が起きていますが、勝訴したケースもあります。その”勝ちパターン”に共通しているのは、住民側に立つ医師がいることだそうです。裁判の証人として医師に出廷してもらい、国・企業側の医師と対決してもらう。国・企業側の医師は「この程度で健康被害は起こらない」と言いますが、医学的見解できっぱり否定することができれば、裁判は勝ちやすいのだそうです。ただ、裁判に出てくれる医師を探すまでが難しいとか。
澤田 私はアスベスト被害者の救済や補償などに携わっています。行政の手続きや裁判の支援ですね。今、マコさんがおっしゃった水俣の例は、アスベストにも関係するところが少なくありません。
マコ 澤ちゃんが関わっているのは、大阪の泉南アスベスト訴訟だよね?
澤田 大阪府南部、泉南市というところで起きたアスベスト問題です。かつて泉南には従業員10~15人ほどの小さな石綿紡織関連工場・作業所が200軒ほど密集していました。綿とアスベストを混ぜて、糸や布に加工していたといいます。それらは、戦前は飛行機や船など軍需関係のエンジンの断熱材。戦後は自動車、鉄道、造船関係に使われており、泉南は国内シェア8割を占めていました。ところが、現場で働いていた人のなかに、肺がんや中皮腫などにかかる例が出てきました。アスベストの危険性を知らず、マスクもせずに作業していたためです。
このとき、国はすでに危険性を認識していました。1940年代、内務省(当時)が大阪、奈良のアスベスト工場で健康被害の調査を行い、早い時期から被害は確認されていたのです。なんだか原発問題と似ていますよね。その頃、イギリスやドイツでは、国がアスベストの健康被害を補償し、使用を規制強化していました。しかし、日本のアスベスト輸入のピークは74年。ヨーロッパが規制強化していた時に、日本は輸入強化していたのです。
マコ 危険性を知っていながら、どんどん輸入していたと。
澤田 そうです。だから、日本の役所や官庁の建設では、87年にアスベスト使用を禁止しています。しかし、一般のビルや住宅で禁止されたのは10年以上もあとの2000年代なんですよ。05年に兵庫・尼崎の大手機械メーカー「クボタ」の工場周辺住民に被害が出ていることが発覚し、社会問題になったことも影響して徐々に規制強化が進み、ようやく完全な使用禁止になったのは2012年3月でした。
アスベストには、青、茶、白と種類あって、危険性がそれぞれ違います。もっとも危険なのは青、次が茶、そして白。企業側は「白はリスクが少ないから管理すれば大丈夫」と言いますが、仮に初期の管理はできたとしても、いつまで持続できるのか。建物にアスベストを使って、地震で崩壊したらどうなのか。実際、阪神淡路大震災では、がれき撤去に従事していた労働者に中皮腫になった人がいます。管理使用なんて幻想だと思います。
マコ 労働者は労災保険があるからまだしも、ボランティアはどうなるんだろうね。
澤田 ボランティア保険に入っていればいいのでしょうけれど。ボランティアでは労災補償は受けられません。アスベストの補償には基本的に、労災とアスベスト救済法の2つがあります。仮に被害者が亡くなった場合、労災は遺族に1000万円ほど補償されますが、アスベスト救済法では280万ほどしか補償がなく、差が激しいのが現状です。しかも、05年のクボタショックの時は、まだ労災しかなかったため労働者以外は救済されませんでした。しかし被害は工場周辺の一般住民にも及んでいるわけです。それで、06年にアスベスト救済法ができました。この法律の理念は、ざっくりいうと「民事責任は置いておいて、遺族には280万円を払いましょう」というもの。確かに迅速性は画期的ですが、なぜその金額なのか。水俣病の政治解決金は250万円前後だったそうですから、それと同じくらいにしたのかもしれません。
ちなみに、中皮腫はほぼ間違いなくアスベストが原因ですが、肺がんはほかの原因も考えられます。仮に被害者が喫煙者であれば、病院でアスベストと関係のない肺がんとみなされ、補償にたどり着けないことも考えられます。
マコ 関西は空気中のアスベストが多いそうですね。以前は大型車のブレーキにもアスベストが使われていて、それを吸ったバスやトラックの運転手も労災になるとか。
澤田 ただそれ自体は、乗客として乗ったときに怖がるほどでもありません。アスベストは水道水にも含まれていて、みんなある程度は吸っています。問題はどれだけ濃いアスベストに、どれくらいの期間にわたって接していたかなんです。
マコ 泉南は小さな家族経営の工場が多くて、お母さんが赤ちゃんを連れて働いていた例もあるそうですね。
澤田 泉南アスベスト訴訟原告の岡田春美さんは、娘の陽子さんが0歳から2歳の頃まで、勤務先のアスベスト工場に連れて行っていたそうです。春美さんが働いていた工場は、他の人の顔も見えないくらいホコリが舞っていたそうです。春美さんは、「このホコリは大丈夫ですか?」と当時の社長に聞いたのですが、社長はアスベストを口に入れて「食べてもだいじょうぶ」と返してきたそうです。泉南アスベスト問題が原発問題と違うのは、「大丈夫」と言っていたのが御用学者や大手企業だけではなく、小規模零細企業の社長だったことです。彼らが危険性を知っていたかはかなり怪しい。そのような社長も家族と一緒に働いていましたから。
春美さんの娘の陽子さんは現在、「石綿肺」という病気にかかっています。アスベストの被害は本当に怖いです。私は、2011年11月に別の被害者の方と会う機会もありました。その方はすでに中皮腫を患っていたのですが、見た目は元気そうでした。しかし、その1ヵ月後に容体が急変し、翌12月に亡くなりました。基本的に、肺が冒されていく病気ですから被害者の方は徐々に痩せていき、肺活量が低下して亡くなっていきます。
マコ 泉南のお母さんのことを本で読んだら、「国がちゃんと危険だと言っていたら、子どもを連れて行かなかった」と言っている、と書かれていました。原発事故のあとは、いわき市のお母さんが「危険性を知らずに水やガソリンの列に子どもと一緒に並んでしまった。あの時、高濃度の放射性物質が飛んでいたことはあとから聞いた」と言っていました。ちゃんと知っていたらできたことがあるかもしれないのに……。
そういえば、2011年の4~5月頃、東京でも水道水が汚染されてペットボトルのミネラルウォーターが不足したことがありましたよね。あの時、議員会館のコンビニではミネラルウォーターが山ほどあって、議員がケース買いしていたの。公的機関だけアスベストを使わないのと同じ、国の体制を象徴しているなと思う。
澤田 普通の感覚なら、危険性が分かった時点で予防策をとる。それでも被害が出た場合は救済と補償、そして原因究明調査をするのが基本でしょう。ところが、水俣病やアスベスト、原発事故のいずれも、政府は危険性を知りながら黙認。情報を偽って経済を優先し続けてきました。水俣病は1956年に最初の患者が出たのに、排水を止めたのは68年。そこで初めて政府が「チッソの排水が原因だった」と公式見解を出しました。
今、福島で原発事故が起きてしまって健康被害も懸念されますが、水俣やアスベストと同じことを繰り返さないで欲しいというのが私の思いです。でもそれが難しい。原子力ムラという言葉がありますが、「アスベストムラ」もあるんですよ。既得権益を持つ役人、学者が結託して規制強化を回避しようとしていました。
マコ あちこちに「ムラ」がありそうですね。自動車ムラ、携帯電話ムラ…ムラ同士の相関関係もあるでしょう。
澤田 泉南アスベスト訴訟の大阪高裁の判決文に、こんな一文があります。「弊害が懸念されるからといって、工業製品の製造、加工等を直ちに禁止したり、あるいは、厳格な許可制の下でなければ操業を認めないというのでは、工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害するだけではなく、労働者の職場自体を奪うことにもなりかねないものである」――。人権救済の最後の砦である司法がこういう見解を出すのです。泉南アスベスト訴訟は今、最高裁で争っていますが、この判決文を原発やほかの社会問題にあてはめると、かなり恐ろしい。現代における裁判所の姿勢を考えさせられます。
第二部は、福島で子育て中の秋場有里子さんに、現地で行われている子どもの甲状腺検査について語っていただきました。秋場さんは、18歳で甲状腺機能亢進症と診断され、ホルモン数値管理や手術による治療を続けてきました。そして現在、住んでいる福島県小野町は、福島第一原発から38キロほど離れたところにあります。中学3年生の娘さんの体調変化に、懸念を感じているそうです。
秋場 娘がやたらと寒がるようになったのは、2011年の2月頃でした(「寒がる」は甲状腺機能障害の一症状である場合がある)。私のように甲状腺の病気のある親から生まれた子どもは、同じ病気を持つことがあると聞いていたので、注意深く育てていたつもりです。すぐに病院に行ってエコー検査や血液検査を受けました。そのときは「今のところ何ともないですよ」と言われて安心したのですが、その後、震災が起きました。夏になり、みんなが暑さに苦しんでいる時も、娘の寒がりは収まりませんでした。震災ストレスもあるのかな、と思って10月くらいに再び病院に行きました。そのときの医師は「若干、(甲状腺の)色が……でも正常範囲内だ」と言いました。
ところが今年3月、また受診してみると、診察室に入った段階で医師が、「ごめん。これ以上なにもしてあげられない」と。診察拒否ですよ。震災前のように血液検査をしてほしいと頼んでも、「国の指示で県の一斉検査が始まるから……ね、わかって」と言うばかりでした。
マコ 甲状腺の専門医は、エコー検査だけではがんくらいしかわからない。甲状腺機能障害については血液検査が必要だと言っていますよね。2011年8月、福島で子どもの甲状腺検査の結果を返す説明会を取材した際、放射線医学総合研究所の医師は、「血液検査をしないのは、つきつめると医療経済の問題。定期的に血液検査をすると大変なお金がかかるでしょう。エコー検査なら、機械を使い回せばいいわけだから」と説明していました。
秋場 甲状腺機能障害は他の病気と似た症状があって、診断を間違えられることも少なくありません。例えば甲状腺機能低下症はうつ病や認知症と間違えられやすいと言われています。ちゃんと検査をしてもらわないと、子どもが被ばくして病気になっても、治療が遅れてしまいます。
マコ 学校給食では、いわゆる「陰膳方式」(食事全体を一括して分析する)の検査が行われていますよね。牛乳以外の給食を丸ごとミキサーにかけて放射性物質の有無を調べるのですが、これだとたとえ汚染された食品が混ざっていたとしても薄まって検出されてしまいます。本来は、食材ごとに測って汚染物を取り除かなければならないのに……。そもそも、給食がセッティングされて、子どもたちが食べている時に検査して翌々月くらいにプリントで結果が発表されている時点でおかしいんですよ。もし線量の高いものが出ていても、それを知るのは食べ終わったあとだもん。
秋場 11月の給食便りでは「来月から24年度産のコメの取り扱いが始まります」と書かれていました。農協がセシウム検査をしているのですが、検出限界は20ベクレルだそうです。高いですよね。
マコ 高いね。福島県庁の食堂には、「検出限界1ベクレル」って書いてありますよ。食品中の放射性物質は国が管理しているから安全だと思うかもしれませんが、子どもたちの給食が20ベクレルで県庁が1ベクレルって、アスベストの使用禁止の話にそっくりですよね。国は危険性を知っていながら黙認した。ちゃんと危険だって知らせてくれれば避けられるはずの被害が、野放しになっているのです。
*
第三部は会場からの質疑応答と、おしどりさんを交えてのグループトーク。この日は衆議院解散総選挙と最高裁裁判官国民審査の約1週間前ということもあって、選挙や司法についての話題でも盛り上がりました。原発も水俣病もアスベストも、被害を止められるかどうかは政治にかかっています。参加者1人ひとりの真剣さが伝わるマガ9学校でした。
●アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)
今まで具体的に話を聞いたことのなかったアスベストについて澤田さんのお話が興味深かったです。様々な問題がある中で全ての事柄に同じ量で関わっていく事は無理ですが、自分の視点を大切にして具体的に動いていくこと、継続して続けて行く考えて行くことの大切さを改めて感じました。参加者同士のセッションはとても有意義でした。(田崎彩)
原発だけでなく、アスベストや水俣病について知ることができて良かったです。(磯部浩司)
澤田さんが話してくれた東京高裁のアスベスト判決文は、国の原発政策をまだ推進したい人たちが言っていることと同じだし、水俣病もその他の公害問題に対する国の姿勢が全く変わらないのだと思った。アスベストを作らないと労働者の職場がなくなるというようなことを言っているのだが、労働者がまず健康被害を受けるのだからそれは本当におかしなことだ。原発作業員の方たちが一番被ばくをしながら働いていることと同じではないだろうか。(永添泰子)
水俣病もアスベスト問題も原発問題も同じような構造を持っていることが実感できた。政府の被害者への対応も本当によく似ている。
「困っていることをみんな同時に並行してやればわかりやすいかも」というマコさんの視点はさすがです。(匿名希望)
アスベストや水俣病について知りたいと思っていたのでいろいろと勉強になりました。(石田清美)
明るいお二人に、いろんなことを教えてもらいました。お話をお聞きしておそれずに、かまえずに、楽しく明るく反原発の思いを友達に伝えていきたいと思いました。(匿名希望)
アスベスト被害について、知らなかった実情を聞き、後手後手に対応を遅らせている国や企業のやり方に憤りを覚えた。水俣、アスベスト、原発事故について、一人の日本国民として自分は何ができるのか、もっともっと考えながら選挙に向かったり、生きて行動していかないと、と強く思いました。(匿名希望)
このコメントの中身は、マコさん、ケンさんに届くでしょうか?
泉南アスベストの判決を見て、某新聞に投稿しましたが、文章が下手で不採用でしたのでこちらに書かせていただきます。ここに出てくるラジウムの内部被ばく説に関心がおありの場合は、このお医者様に取材アタックしてくださるとありがたいです。
http://www.yamaguchi-hosp.jp/media/sanyo09.7.28/sanyo09.7.28.html
12月25日大阪泉南市のアスベスト被害国家賠償請求裁判で、大阪高裁は画期的な判決を出した。アスベスト排出業者側に資力がなく、十分な賠償を得られてこなかった人たちにとって朗報である。政府は、ハンセン氏病判決の時と同様の、英断をすべき時が来た。これ以上の裁判の長期化を避け、重度患者やご高齢の方が手厚い保護を受けられることを望む。
私は、日頃よりアスベストと放射性物質の関係を考えていたが、今回の判決が、このことと関連していたわけではないが、2009年に岡山大学地球物質科学研究センターの中村教授を中心とするグループが、アスベストに起因する肺癌や中皮腫が放射性物質であるラジウムによる内部被ばくであるとする説を発表した。発表当時は、新聞各社が報道したのに、東日本大震災と、福島第一原発の事故後はこの説に関する報道など皆無であった。なにか不都合なことがあったのだろうか?
中村教授のグループは、イトカワの微粒子や、ロシアの隕石の分析も手掛けていた。それも非常に重要なことなのであるが、生命や健康に関わる重大な研究テーマが、脚光を浴びないのも不自然な気がする。今回の泉南アスベスト被害の判決を機に、アスベストによるガンなどの発生メカニズムを科学的に解明し、被害発生を防止する対策に役立てる策を講じるべきである。
承認ありがとうございます。ひとつだけ追加させてください。
こちらのブログで、このラジウムホットスポット説を分析された方がおられて、悪性の中皮腫を起こすラジウム濃度は、0.224 Bqと言われています。
http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/40061480.html
「しかし、全体としてみれば、病巣周辺に100万のフェリチンが形成されていたとしても合計の放射能は0.224 Bq にすぎない。悪性中皮腫が、このように僅かな放射能によっても高率で発生するとすれば、もはや内部被曝において Svという単位は何らの意味も持たないことになる。人工の、もっと高い放射能の(本物の)ホットパーティクルなら、なおさらそのリスクは高いということになる。」
典型的な低線量被ばくだということになります。
上告を決めた後にちょっと書き換えましたが、これもボツでした。マコさん気がついてくれましたかね。
「昨年12月25日大阪泉南市のアスベスト被害国家賠償請求裁判で、大阪高裁は画期的な判決を出した。アスベスト排出業者側に資力がなく、十分な賠償を得られてこなかった人たちにとって朗報であったに違いない。政府に、ハンセン氏病判決の時と同様の、英断を期待したが、1月7日厚生労働大臣は、原告団の願いを踏みにじる形で上告を決めた。
私は、日頃よりアスベストと放射性物質の関係に関心を寄せ、2009年岡山大学地球物質科学研究センターの中村教授を中心とするグループの研究成果に注目していた。アスベストに起因する肺癌や中皮腫が放射性物質であるラジウムによる内部被ばくであるとする説であるが、発表当時は、新聞各社が報道したのに、東日本大震災と、福島第一原発の事故後はこの説に関する報道など皆無であった。
厚生労働省、環境省、文部科学省は、こぞって無視しているともとれる。WHOは、類似の放射性物質であるラドンと肺がんの関係には神経をとがらせているのに、アスベストという厄介者とラジウムの関係を追求しようとしない。
関係各省は、安易に司法の判断に頼って時間を浪費することなく、過去の不作為については謙虚に反省をし、最新の科学的所見については積極的にこれを取り入れ、これ以上の被害者を出さないことを最重要課題とすべきでないか。」
何度もすみません。岡部医師が東京で話をされます。ぜひとも突撃取材をマコさんお願いします。
2/1(土) 16:20~17:15
http://www.tm.depe.titech.ac.jp/Asbestos_Research_Group/2nd_meeting.html
悪性胸膜中皮腫の外科治療 (岡部和倫/山口宇部医療センター)