2016年5月14日(土)14時~16時半
@北とぴあ つつじホール
講師:山本太郎さん ゲスト:雨宮処凛さん
スピーカー:藤川里恵さん(AEQUITAS)/外山麻貴さん(でんわ勝手連)/奈須りえさん(ミナセン東京)
協力:集英社インターナショナル
写真:Kayo sawaguchi
2015年9月、安全保障関連法案の審議の山場。山本太郎さんは渾身の質問をしています。そして19日未明、参議院本会議で法案可決後、国会前でコールを続ける市民の前に出てくるなり「これ、もう、変えていくだけなんですよ、あとは。そうですよね!」と明るく言ったのでした。どこか遠い存在の国会を身近なものにしようと、フル稼働している太郎さんのお話をたっぷり聞き、政治と市民の関わりを考える今回のマガ9学校。参院選前の絶好のタイミングで、ゲストの雨宮処凛さんと3人のスピーカーにも加わってもらい、「政治を私たち市民の手にとりもどすにはどうすればいいか」を語り合っていただきました。
山本太郎(やまもと・たろう)1974年、兵庫県生まれ。2011年、東日本大震災の後、4月より反原発運動を開始。13年7月、参議院議員選挙に東京選挙区より出馬して当選。14年12月「生活の党」に合流、「生活の党と山本太郎となかまたち」の共同代表に。現在、原発問題、被ばく問題、子どもと放射能、TPP問題、労働問題、社会保障制度改革、表現の自由に関わる問題等に深く関わり活動中。主な著書に『ひとり舞台 脱原発-闘う役者の真実』(集英社)、『みんなが聞きたい 安倍総理への質問』(集英社インターナショナル)。
雨宮処凛(あまみや・かりん)作家・活動家。1975年、北海道生まれ。2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。2006年からは新自由主義のもと、生きづらさや不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材・執筆・運動中。東日本大震災後は脱原発運動にも取り組んで、メディアでも積極的に発言。主な著書は『プレカリアートの憂鬱』(講談社)、『雨宮処凛の闘争ダイアリー』(集英社)、『14歳からの原発問題』ほか「14歳から」シリーズ(河出書房新社)。最新刊は『14歳からの戦争のリアル』。
第1部「知れば楽しくなる!? ホントの政治の話」
山本太郎さん×雨宮処凛さん
第1部は、山本太郎さんと雨宮処凛さんの対談。「ぼくは、国会の中で浮いています! でも、浮いていたっていいじゃないか! 多様性を認める、一人ひとりの価値観を認める社会をつくりたいんです」。そんな太郎さんの言葉から、お二人の対話は始まりました。
太郎さんは3・11後の反原発運動を通じて、雨宮さんら、さまざまな分野で社会的な活動をしている方々と出会いました。雨宮さんからは、被ばく労働の問題など「原発と貧困は密接につながっている」話を聞き、「浮世離れした芸能界で生きてきたので、貧困の実態を知って、頭を殴られるようなショックを受けた」そうです。
やがて2013年には参議院選に出馬して当選。雨宮さんは、太郎さんの国会質問の作成チームの一員に。太郎さんは、質問主意書をつくるために雨宮さんたちからレクチャーを受けても、「最初は何をメモすればいいかわからないほど理解できなかった(笑)」と率直に語ってくれました。
雨宮さんいわく、「太郎さんは、協力しなきゃと思わせるのが絶妙にうまい」。雨宮さんほか、さまざまな社会問題の研究者、弁護士、活動家の方々が熱心にレクチャーをし、それに応えて太郎さんもどんどん理解を深め、国会で質問を重ねていきます。
そして昨年、参議院安保特別委員会での「稼働中の原発への弾道ミサイル攻撃のリスク」や「イラク戦争の検証」などの力の入った質問は記憶に新しいところです。さらに貧困問題に関しては、内閣委員会で生活保護と大学進学のための奨学金について質問。これまで子どもが受ける奨学金が収入として認定され生活保護費から減額されていたのが、受験料や入学金として使うのは認められるようになりました。
雨宮さんは「太郎さんがいっぱい質問をしてくれて、生活保護と奨学金は一歩前進しました。小さな変化ですけれど、制度を少しずつ変えていくしかない。こうやって直にお願いできるのは本当に便利だなと思います。太郎さんが議員になって、私たちの声が政治に届くようになった。この便利さを市民のみなさんが使ってほしいですね。そうすれば民主主義の形が変わっていくはず」と言います。
雨宮さんの言うように、政治と市民の距離を縮めるには、声を伝えられる人を選挙で当選させ、国会に送り出さなくてはなりません。
お二人の対談に続いて、質疑応答では「参議院選は一人区での統一候補がすべて決まりましたが、野党のリベラルサイドがひとつにまとまれるのか不安があります」との意見が会場から出ました。この意見に対して、太郎さんは次のように答えてくれました。
「ぼくは議員になってからも全国をまわって、あちこちの会場で話をさせてもらいますが、そこに来てくださるのは政治に関心のある方ばかり。だけど、会場から一歩出たら逆転しちゃうんです。世の中は無関心な方が圧倒的に多い。4月の衆議院補選・北海道5区では池田まきさんが健闘しましたよね。ああやって野党をひとつにまとめて、無党派層に訴えかけるには、政治家任せだと厳しいだろうなと思います。野党共闘とはいっても、おたがいによその党のことに口を挟むのは難しいので、市民運動の側がどれだけコントロールしていけるか。政治家を動かせるのは誰かといったら有権者、票につなげてくれる市民なんです」
たしかに北海道5区では、市民連合や勝手連が積極的に動いて、無党派層の7割が池田まきさんに投票したといわれています。雨宮さんも「参院選では無関心な人たちを、どうやって投票行動に結びつけていくかが最大のテーマですよね」とコメントしてくれました。
第2部「参加すれば、選挙は1000倍楽しくなる!」
スピーカー:藤川里恵さん(AEQUITAS)/外山麻貴さん(でんわ勝手連)/奈須りえさん(ミナセン東京)
スピーカー×山本太郎さん×雨宮処凛さん
AEQUITAS(エキタス) 「経済にデモクラシーを!」「アベノミクスはいらない」を掲げ、「最低賃金を1500円に」「中小企業に税金をまわせ」と訴える。ちなみにAEQUITASとはラテン語で「正義」や「公正」を意味する言葉。〈私たちは、格差と貧困が拡大し、不公正がまかり通るこの国に対して「社会正義」の実現を求めます〉と声を上げて活動中。
*公式ページ http://aequitas1500.tumblr.com/
でんわ勝手連 北海道5区補選のイケマキこと池田まき候補者を応援するため、ネットで「でんわかけ」を呼びかけたところ「イケマキでんわ勝手連30000本」が立ち上がり、14日間で約600人が参加、5万本の電話かけを行う。夏の参院選を目前にし、「一本のでんわで世界が変わる。」を合言葉に、新たな参加型選挙エンターテインメント(応援スタイル)を展開中。「あなたも見ているだけの選挙から、自分が動く選挙へ、パラダイムチェンジしてみませんか?」と現在参加者を随時募集している。
*公式ページ http://denwa-katteren.jp/
ミナセン(みんなで選挙)東京 「みんなで選挙」を合言葉に、安保法制等に反対するさまざまな市民運動と全国規模で連帯し、野党結集の選挙協力をよりいっそう推し進めるコンセプトで活動中。
*公式ページ http://minasentokyo.com/ *ミナセンTV東京 http://minasen.tv/
第2部は、政治と市民がつながって、生きやすい社会にするために活動している3人の女性が登壇。参院選に向けて「自分も何かしたい!」という人たちにも参考になるお話をしていただきました。
1人目はAEQUITAS(エキタス)の藤川里恵さん。若者の労働や雇用の問題を訴えているAEQUITASは、野党議員や経済学者をゲストに迎えた街頭宣伝、デモなどの活動を行っています。藤川さんは、そうした街宣の動画を紹介し、若者の窮状を語ってくれました。
「フルタイムで働いても食べていけないワーキングプアが若年層に拡大しています。いまの平均最低賃金798円では、1日8時間・週40時間・年52週まったく休みなく働いても年収166万円にしかなりません。お金の話をすることも、当たり前の生活ができないと怒ることも、いまや恥ずかしいことではなくなったと私は思っています。AEQUITASが掲げている最低賃金1500円は、さまざまな生きづらさを抱える若者の突破口になる可能性があります」
雨宮さんは、昨年12月に初めてAEQUITASのデモに参加。そこで藤川さんのスピーチを聞いたそうです。「日本は、最低賃金の基準に労働者の生計費が考慮されるべき生計費原則がないがしろにされています。奨学金を返しながら懸命に働いている藤川さんの『不幸比べも、がまん大会も、もういい加減終わりにしませんか!?』のスピーチに号泣して…まわりの人も泣いていました」と雨宮さん。現政権は「アベノミクスはうまくいっている」と強調しますが、参院選では経済や雇用の問題もよく考えてみたほうがよさそうです。
2人目はでんわ勝手連の外山麻貴さん。外山さんは、パワーポイントを使って、2015年統一地方選挙からスタートしたでんわ勝手連の活動を紹介してくれました。北海道5区補選のときはfacebookで「イケマキでんわ勝手連30000本」を立ち上げると、全国から「あれよあれよという間に600人がボランティアに応募してくれた」そうです。結果、投票日前日まで14日間で当初の目標・3万本をはるかに超える5万本の電話かけが実現しました。
「確かなことは言えないのですが、北海道5区補選では5万本の電話は3000票くらい動かしたという分析があります。電話かけって選挙運動のプロに言わせると、一番つらいらしいんですけどすごく楽しかったんですよ。もちろんガチャンと切られることもありますが、facebookのチャットで励まし合ってワイワイ盛り上がっていました。何よりも投票するだけ、見ていただけの選挙から、自分が主体となって参加できた実感が大きかったです」
外山さんのお話からは、参加者が泣いたり笑ったりしながら、イキイキと電話かけをしていたようすが伝わってきました。参院選では、新たな電話帳のシステムを導入して、30万本の電話かけをめざすそうです。「野党共闘を願うなら、まず市民がつながって、未来を自分たちの手で変えるんだという決意でやっていきたい」と語ってくれました。
3人目に登場したのはミナセン(みんなで選挙)東京の世話人の一人であり、東京都大田区議会議員の奈須りえさんです。ミナセンは全国で展開している勝手連で、各選挙区の野党結集を後押ししている組織。東京の場合、参院選の定数は6人なので、野党の共闘というよりも市民が共闘できる動きをつくるべく活動しているそうです。
「政治と市民の声がなかなか結びつかないのはどうしてなのかなと考えると、やはり選挙に行かない人が多過ぎる。選挙に行かないのは、情報の不足もあると思うんです。私自身も自治体の議員をしているのですが、選挙のときに候補者が有権者のみなさんに届ける言葉はスローガン的なものになってしまうことが多い。スローガンだけでは、保育園の問題も、介護の問題も、安保法制でも、個々の政策になったときに自分の暮らしにどう関わってくるのか、わかりにくいですよね。そういう政治の情報をわかりやすく届けて、市民がひとつになれるようなことをミナセン東京ではやっていこうと思っています」と奈須さん。
具体的には「ミナセンTV東京」を立ち上げて、ネット上で情報の発信を開始。また、参院選の選挙運動については「チラシ配りなど、公職選挙法を守った上でどうやったらいいのか、お伝えしていこうと思っています」とのこと。東京都はこれから知事選も控えているので、ますますミナセン東京の活動に期待が高まります。
3人のスピーカーのお話の後は、太郎さんと雨宮さんも加わって5人でトークセッション。そこでは安保や憲法といった国の形に関わる制度と、社会保障や雇用といった足元の生活の問題、「その両輪で市民が自分にできる政治参加をしていったほうがいい」と意見が一致しました。
間近にせまった参院選は、市民の願いを託せる議員を国会に送り込むチャンス。会場では、一人区の熊本と愛媛から、野党統一候補を支援している市民のメッセージも紹介されました。
太郎さんは、「みなさんが必死に働いて納めていただいている税金で、現場の声を聞きながら、いろいろな問題に取り組む仕事をさせてもらっている。感謝しかありません」と言います。さらに福島復興再生特別措置法、刑事訴訟法等改正などの問題点を指摘し、「いまの政権のもとで、とんでもない法律がどんどん生まれています。政治家をコントロールするのは市民の役割。ぼくも含めて、政治家を信じないでください」と力説。
どの政党、どの政治家でも、個別の法案や主張を見ていけば、賛成できるものもあればできない場合もあります。それを見極めるのは一人ひとりの市民。太郎さんの「みなさんが政治家を動かしましょうよ。世の中は変えられますよ。きっと変えられる!」との力強い言葉に、自分で判断し、自分にできる小さなことからでもやっていくことの大切さを改めて確認したマガ9学校となりました。
●アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)
山本議員は夢物語を語っているのではなく、現実を非常に見据えた考えだということを認識した。腰のすわった活動家の雨宮さんと、国会議員になって成長された山本さんの内輪話は、とても興味深い、内容の濃いものだった。(宇野登志樹)
選挙に向けて明るい話でも聞けたら…と思いましたが、甘かった。でも、大変なのは当たり前ですね。おいしいポジションからすべり落ちないように必死の組織が相手で、対する方は、まだ声も組織も小さくてバラバラで…お金もないし。選挙協力、マジに考えます。(匿名希望)
山本さんが3人いれば! と思いましたが、誰かがやってくれるんじゃないか、という考え方がダメですよね。それじゃだめだ! と認識を新たにすることができました。(匿名希望)
第2部の藤川さんと外山さんのお話に圧倒されてしまいました。素晴らしい活動に心をうたれました。多くの市民の方々は嫌がるものの、現実的に選挙戦略は必要で、お2人はまさにそれを実践してくださっていてありがたいです。(藤野英明)
まず一人でも、行動することから始める。そして仲間を少しずつ増やす。このことの重要性を再確認した。(匿名希望)
上からの教育講演ではなく、身近な実践に基づく、行動的なお話が多く聞けて、頼もしく参考になりました。山本太郎さんの、現実を冷静に見つつ、楽観はしないけれど、前向きな闘志を感じ、ますます信頼が高まりました。政治無関心層にいかにアプローチして広げるか、参院選まで時間がないなか、大きな課題です。(匿名希望)
パワーを得ました。政治を「コントロール」する者として、希望を持ち、前進したいです。とにかく夏の選挙に勝ちたい!!です。(真野薫)
政治に興味の薄い夫を連れていきました。寝るかと思いましたが、ところどころ聴いていたので少し驚いています。でんわ勝手連の活動を初めて知りました。(匿名希望)
第1部では、山本さんの「ブレーン」について知ることができてよかった。第2部は選挙を楽しくするための活動や考え方、ITツールの利用まで語られて内容が濃かった。(野崎宏)
第2部の3人の活動の様子が参考になりました。山本太郎さんの非正規・正規雇用、奨学金などのデータを使ってはどうかという提案など、具体性があってよかったです。(匿名希望)