マガ9学校やりました。

2016年3月20日(日)14時〜16時半
@新宿NPO協働推進センター
講師:村越含博さん ゲスト:パウル・クニープさん


●後援:一般財団法人澄和 ●協力:しるしる憲法

日本国憲法を「変える」「変えない」の意見を持つためには、まずはちゃんと「日本国憲法」について知ること。憲法に何が書かれているかを読み取る力をつけることではないでしょうか。そんなシンプルな基本に立ち返っての今回のマガ9学校は、現役の公立学校の先生である村越含博さんを講師にお招きし、「憲法を教材に読んで考える」授業スタイルの「憲法ワークショップ」を行いました。いつもの座学ではなく、実際に村越さんの指導でワークショップを行い、憲法についての自分なりの表現ができるように、子どもも大人も一緒に学びあう機会となりました。憲法を自分の毎日の暮らしと結びつけて考えることができ、憲法について考える、新しいアプローチの一つとなりました。

村越含博(むらこし・ふくひろ)1976年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。現在北海道公立小学校教諭。北海道の小中学校の教員たちが集う自主研究サークル「ダボハゼの会」管理人、NPO法人共育フォーラム理事。北海道生活教育研究会所属。小学6年生への憲法の授業実践をもとに 市民講座などでも憲法のワークショップの講師を務める。共著に『ちゃんと学ぼう!憲法』(歴史教育者協議会・編 青木書店)。

Paul Kniep(パウル・クニープ)1985年生まれ。2012年ドイツのライプツィヒ大学卒業。専攻は日本学、副専攻で哲学と歴史を学ぶ。現在はライプツィヒ大学大学院に在学しており、市民運動の文化と現代日本における貧困を中心に日本学を研究。また昨年までの一年間は交換留学生として早稲田大学で学びながら、SEALDsを研究テーマに選ぶ。スポーツも好きで、テコンドーや空手なども習得。

第1部 「憲法ワークショップ」

 村越さんは、長年教育の現場で憲法の授業を実践している現役の小学校教諭。小学校6年生を対象に、北海道歴史教育者研究協議会の仲間と共同で「憲法を学び会う」授業を創り、実践を重ねてらっしゃいます。村越さんが実際に行っているワークショップの一部を、今回「マガ9学校」で、再現してもらいました。
 まずは、ウォーミングアップ代わりに、憲法全文が両面コピーされたA3用紙を折ってはさみを入れ、手のひらサイズの「憲法全文」豆本を作成します。憲法の全文というと、103条まである、膨大な量の条文というイメージがありますが、こうして作ってみるとずいぶんコンパクトで、「携帯」もできる! という実感が持てました。(*しるしる憲法さんのサイトの「craftけんぽう」のページに作り方が詳しく書いてあります。)

 ワークショップ(その1)は、〈憲法が描く国〉。憲法前文をじっくりと読んで、日本国憲法がどういう国の姿を目指しているのか、「〜〜〜な国」「〜を目指す国」という短文で表してワークシートに書きます。小学校時代の国語の授業を思い出しながら、改めて前文をじっくりと読み込んだ上で、自分の言葉で書いていきます。

 ワークショップ(その2)は、〈わたしの生活と憲法〉。自分の毎日の生活の一コマを書きます。例えば、毎朝コーヒーをゆっくりいれて味わう、カラオケで好きな歌をうたう、夫婦喧嘩をする、などなど…。それが憲法の何条に関係しているのかを、先ほどの豆憲法本をじっくりと読みながら考えます。好きな歌をカラオケで歌えるのは、21条の「表現の自由」かな? 夫婦喧嘩するのは24条の「両性の本質的平等かな」? 毎朝コーヒーをゆっくり飲むのは、25条の「健康で文化的な生活の権利」? と考えながら、自分で「これだ」と思う条文を探し、それを発表しあいます。意外な生活習慣と憲法条文のマッチングに「なるほど〜」と関心する声も聞こえてきました。

 ワークショップ(その3)は、〈日本国憲法自分語訳〉。自分の好きなモノや風景(例えばスマホに保存してある画像など)とそれに関連する、または想起させる条文を選びます。今回は、会場の参加者がスマホを使ってその場で、村越先生に画像を送って発表をしました。「この写真でなぜこの条文?」と、みんなで考えます。例えば、「色とりどりのきれい花々の写真」につけられた条文は「憲法13条」。「そのココロは?」と先生が問うと「個人の尊厳。みんな違ってみんないい」。なるほど! 参加者全員で、先ほど作った憲法豆本を、何度もひっくり返しながら、穴のあくほど条文を見つめ、探し発表していきます。

 さてワークショップを通して、自分の生活は、第3章「国民の権利及び義務」の章に書かれているということがわかってきました。日々当たり前にやっていること、実は全て私たちの「権利」として、憲法によって保障されているのです。「こんなささいなこと、憲法に書かれていなくても…」と思うかもしれませんが、憲法条文に書かれていなかったら、もしくは憲法条文によって権利が制限されたら、どうでしょうか? そんなことを気づかせてくれるワークショップでした。

第2部:パウル・クニープさんトーク&質疑応答

 さて第2部は、ドイツの大学生、パウルさんにも参加してもらい、ドイツの教育システムについて紹介していただきました。ドイツは連邦制なので、州によってカリキュラムが異なります。パウルさんは、ブランデンブルク州の出身。その経験を中心に語っていただきました。
 「小学校は、ドイツ語(国語)と算数を中心に習い学ぶための基礎をつくる期間。中学校は日常生活の為に大事なことを学ぶ期間。高校は、自分は何を将来学ぶのか、どんな社会人になるのかを準備する期間。そして大学は、研究したいことがある人が、研究したいと思った時に行くところ」と語ってくれました。
 何歳になっても、社会人を経た後で大学に入り研究する、というのはごく普通のことなのだそうです。また主権者教育ということについては、学校の授業でルソー、マキャベリなどについて教わるだけでなく、家庭の中においても当たり前にあるのだそうです。例えば、パウルさんの初デモは、5歳の時。東西ドイツ・ベルリンの壁がこわれる時に、両親と共に参加しています。高校生の時は、イラクの戦争反対デモに友だちと参加。これはクラスの仲間と20〜30人ほどで行ったそうです。また大学ではゼミの先生から「デモがあるみたいだけど、行ってみたら」とメールがくることもあるそうです。家庭、学校、友だちの間で、デモや政治や選挙の話はごく普通にすることだと語ってくれました。

 パウルさんは、日本の文化に興味を持ち、2009年に旅行者として初来日。その後も度々来日し、3・11の時は三重県の幼稚園で働いていたそうです。そして昨年は、早稲田大学に交換留学生として来日。3・11前後の日本社会の変化を見てきた彼は、脱原発デモや、SASPL、SEALDsといった新しい「市民運動」が出てきたことに興味を持ち、それを自分の研究テーマにしたいと今、取り組んでいます。
 「学校や友だち同士で政治の話ができない日本人にとって、デモは、そこで新しい友達と出会い、いろんな政治的な問題について話すための大切な場所。そんな新しいデモのスタイルができて良かったと思う。困っていることを解決するためのアクションは、どんどんやったらいい。それも自分たちが、楽しい!と思う方法でね」。そうエールを送ってくれました。

 村越先生、パウルさんを含めた質疑応答のコーナーでも、参加者と双方向での意見交換が活発になされました。マガ9学校のアクティブラーニング、憲法への新しいアプローチが一つ、見つけられたという実感がありました。「さっそく、私の地域での集まりでも、これを持ち帰り、実践してみますね!」。そんな声も聞こえてきたマガ9学校でした。

koe

●アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)

憲法を自分の生活にひきつけて考え、読んだのは初めてでした。期待を大きく超える経験ができました。ありがとうございます。(匿名希望)

一緒に考えあう、というスタイルの講座が良かった。パウルさんの話ともつながりますが、一人ひとりが自分の考え、意見をもつこと、表明すること、それらをもとに社会に参加していくことが、小さなことでも大事だと思います。そのためのひとつの体験の場として、今日のようなワークショップのスタイル(一緒に考えあう)が大事だなと思いました。(井上晶子)

日常生活との関連でみていくと、人権規定に収れんする。「権利」を考え直すきっかけになると思った。(匿名希望)

大変面白かったです。とくに村越先生の教育実践をふまえたワークショップ型授業について、すぐに参考にできそうな具体的なものだったのがよかったです。パウルさんの「自分の意見が大事」という言葉も印象に残りました。(小幡久美子)

こんな先生がたくさんおられたらいいのになあ! 憲法と楽しく遊びながら、憲法と親しくなれるワークショップです。小学校から自分たちで考え、意見を交わす活動が大事という意見も納得です。(堀美保子)

身近な生活などは憲法で保障されていることがわかり、友達や家族とじっくり考えてみたいと思いました。(匿名希望)

パウルさんに、ドイツではナチスについて、どのように子どもたちに伝えているのか教えていただいて、勉強になりました。(寺田幸一郎)

憲法の勉強と言われてドキドキしましたが、生活すべてが憲法と直結できるんだとわかって嬉しかったです。私でも憲法の語り部になれるかも…と思わせて下さいました。(丹野眞由美)

示唆に富む2.5時間でした。こういう授業をする自由が引き続き保障されるよう何か力になれれば。(大久保太郎)

憲法前文、各条文をあらためて読んだことで、いくつかの発見がありました。特に、この憲法が将来の国民のことも考えていると実感して、その大切さを再確認できました。(さかしたとも)

 

  

←「マガジン9」トップページへ   このページのアタマへ↑

マガジン9

最新10title : マガ9学校やりました。

Featuring Top 10/46 of マガ9学校やりました。

マガ9のコンテンツ

カテゴリー