コラム「法浪記」でも書いていただいていますが、昨年末に最高裁で、「マガジン9」の前身「マガジン9条」の呼びかけ人の1人でもある元東京・国立市長の上原公子さんが被告となった訴訟の、上告棄却決定が出されました。
経緯や詳細は前出のコラムでお読みいただければと思いますが、上原さんは国立市長在任中の2000年、市内の高層マンション建設を制限する条例を制定。これによって損害が生じたとする開発会社が市に損害賠償を求め、裁判所もこれを認めたため、市は利息を含め3000万円以上の賠償金を支払うことになりました。今回の上告棄却決定は、この市が支払った賠償金と同額を、上原さんが市に支払うべきとする2審判決を確定させるものです。
市民の要望を受けて行った施策によって経済的な損失が出たからといって、その負担を首長個人に求めるということが、果たして正しいのか(しかも、開発会社は損害賠償金の受け取り後、それと同額を市に寄付しており、市に実質的な損害は生じていないといいます)。上原さんは記者会見などで、こんなことが認められれば、地方自治体の首長はリスクを負わないよう「モノを言わない、行動しないが勝ち」となって、地方自治を萎縮させることになると指摘し続けています。
この損害賠償金について、上原さんの弁護団がカンパを呼びかけています(以下、弁護団の報告文より引用)。
全国の首長や首長経験者、研究者など地方自治の本旨に基づいて、景観・まちづくりに努力してこられた方々のお力を借りて、国立事件で問われた価値を問い直し、司法のこの結論で委縮するのではなく逆にそれをばねにして地方自治の飛躍をはかる意気込みで前進したいと考えます。研究者の皆さんには是非研究対象として改めてとりあげ深めていただきたいと思います。シンポジウムの開催や出版などによって地方自治からの反撃の契機にしていただきたいと存じます。
また、現実の賠償金については「上原個人に1円たりとも負担を課さない」、との決意で向き合うことといたしました。司法の無理解が「損害賠償金」と烙印を押したその金額について、私たちは、住民自治に課せられた負担として受け止め、逆に住民自治・景観行政を前進させる基金として位置づけ、国立市民と全国の屈しない住民自治の仲間の皆さんに募金をお願いすることといたしました。
カンパ口座などについては、この問題に関する情報発信を続けてきた「くにたち大学通り景観市民の会」のページに詳細が掲載されています。ぜひ、ご協力ください。
(西村リユ)