マガ9スタッフで、連載コラム「風塵だより」でおなじみの鈴木耕さんは、インターネット放送の「デモクラTV」の番組にも度々出演し、沖縄の状況などを伝えています。その番組宛に那覇市在住のH.Y生(沖縄を愛するヤマトンチュ)さんから届いたメールを、ご本人の許可を得て、ここに一部紹介いたします。生々しい高江の今の状況が伝わってきます。
私は、最近3回、高江のテントに泊まったり車中泊をしたりしました。私が体験し見聞きした事を報告します。
7月22日の時にも高江に行きましたが、残念ながらテントのすぐ手前の所で、機動隊に阻まれテントまでは行けませんでした。仕方なく、機動隊が横一列に隊列を組んで人間のバリケードを作っている前に座り込みました。機動隊は時折市民を押して前進してきます。それを市民が座り込んで止めようとしていました。機動隊は何を話しかけても能面のように無表情で返答もしません。
メディアもフリーのジャーナリストも、弁護士も排除されていきました。弁護士たちが何故弁護士を中に入れないのか尋ねても一切返事しません。メディアが腕章を見せて憲法の「知る権利」を主張しても全く無言で無反応でした。後ではメディアも弁護士も入れるようになったようですが、応援部隊のチームは数キロメートル手前の検問で規制され、入ることができなかったそうです。
本来県道を封鎖する時に必要な県との協議もされていないばかりか、道路管理者の県職員が駆けつけようとしても、数km手前の検問で規制され、徒歩で入ることも許されず引き返したそうです。私たちの座り込んでいた所は前後を機動隊の人のバリケードで挟まれて袋のネズミ状態でした。「トイレに行きたい」という願いも小1時間程は認められず、我慢できなくなった女性が用を足そうと斜面の草陰に入ろうとしたら数名の機動隊員が駆けつけて連れ戻すという事までしていました。
悪性リンパ腫の病歴を持つ山城博治さんを心配して検問所から1時間ほどかけておにぎりと飲料水を持って来たおばあさん2名がいました(最初のうちは車は検問で止められても人は入れた)。涙ながらに「博治が死んでしまう。必ず戻ってくるから差し入れをさせてほしい」と訴えても機動隊員は無言でした。
そのようにして人を排除して、機動隊員はテント前にいた人たちを暴力で排除しました。体を車に縛り付けていたらしい女性の首にひもがかかかっているのにそのひもをぐいぐいと力いっぱい引っ張って失神させた者もいました。私はその現場を見た別の女性が意識もうろうとなって「首を絞めた。首を絞めた」とうわごとを言いながら横たわっているのを見ました。
また、男性が数名の機動隊員に体の上に乗られて救急搬送されているのも見ました。後で聞くと骨折していたそうです。あまりにも激しい暴力です。市民は何の武器も持たず、ただ座り込んでいるだけです。しかも年寄りや女性が多い。それに一方的に暴力をふるう。わずか200人の無抵抗な市民を800人とも1000人とも言われる機動隊で蹂躙する。本当に恐ろしい事が起こっています。毎朝、機動隊は高江周辺の道路を封鎖してダンプカーなど工事車両を搬入させます。その時には、高江区民が出入りする事も許しません。会社に出勤する事もできないし、畑に行くこともできない。そんな馬鹿な話はないのですが、そのようにして道路封鎖した後、工事車両の前後を何台もの警察車両で警備して通っていきます。
しかも沿道は150人くらいの機動隊員が数メートルおきに道の両側に立っています。まるでイラクに派遣された米軍の補給部隊の隊列を見ているようです。たった1日10台程の工事車両を入れる為だけに一体どれ程の人員や税金がつぎ込まれているのかと考えると本当に異常としか言いようがありません。8月11日の朝には、オートバイで工事車両や警察車両の前をゆっくり走ったり止まったりして搬入を遅らせようとしていた韓国籍の男性が公務執行妨害で逮捕されました。早速産経新聞が、「警官が腕に手をかけて停止を命じたら急発進し警官を引きずって軽傷を負わせた」と報じました。しかし、その現場をIWJのカメラマンが撮影していたのです。
実際には、オートバイの後ろにいたパトカーが「早く行け」と指示を出したのでオートバイが加速しかけた時に、別の覆面パトカーが急にオートバイを追い越し気味にぶつけるような角度で幅寄せし、それをよけようとしたオートバイが転倒した。男性はひょいと飛び降りたところをすぐに後ろから来た警官とパトカーから出てきた警官に草むらの方へ押しやられた。その後、警官が足を痛そうに引きずっていたというのが撮影されていたそうです(テントに泊まったときに、撮影者から直接聞きました)。
だから産経新聞の報じたような、オートバイで引きずったという事実はありません。正に「転び公妨」そのものです。しかも、テントに来ていた弁護士は「公務執行妨害は脅迫もしくは暴行要件だから、このケースは公務執行妨害では逮捕できない。道交法の指示違反ならわかるが公務執行妨害で逮捕するなんて、こんな警官、大丈夫なのか?」と言っていました。さらにIWJのもう1台のカメラが、別のオートバイが警察に職務質問されているところを撮影していたそうですが、そのカメラマンは、警官が無線で、運転手が草履履きだった事と停止命令を無視した事を理由に「逮捕します」と言っているのを聞いたそうです(この会話は録音できているかどうかはわからないといっていました)。
問題は、そのオートバイの男性も外国籍だったことです。警察が今日はだれかを逮捕すると意図が最初からあった可能性がある。その際、単独行動をするオートバイが狙いやすい。さらに、逮捕したとき外国籍の方が報道された時のインパクトが大きいから狙われたのではないか。警察は反対運動をしている人たちの情報を掴んでいて、わざと外国籍の男性を逮捕したのではないかと思いました。
男性は昨夜遅く釈放されたそうです。動画が撮影されていたため警察も嘘をつき続ける事ができなかったのでしょう。それにしても手段を選ばないやり方に怒りが収まりません。これからもよい報道を続けて下さいますようお願いします。
2016年8月13日 (H.Y生)
メールをくださったH.Y生さんは、「本土の人に沖縄で起こっていることを知ってもらうために自分ができる事をしていきたいと思っています」とも書いてくださっています。新聞やテレビなどのマスメディアが伝えなくても、IWJやデモクラTVの報道、そして現場にかけつけた市民らの声をネットで拡散することで、私たちは「今、何が起きているのか」「誰が、誰の利益のために、人々を踏みにじろうとしているか」を知ることができるのです。
マガジン9も、もちろん、伝えていきます。みなさんからの「現場レポ」もお寄せください。
(水島さつき)
芳地隆之さんの寄稿文「馬鹿な奴らが威張っている時代」( vol.565 )に対するコメントです。
>「要は自分が威張りたいだけなんじゃないの?」と思ってしまいます
底流にあるのは「マウンティング」志向か。主権が国民にあるのではなく、国会議員に。子どもは教育の主体ではなく客体に。日本の土壌は「マウンティング」でしっかり汚染されてしまっている感がある。それは何を意味するか。社会の崩壊が音を立てて始まっているということだ。自分を支えることで精一杯。国民の為、子どものため、等は二の次、三の次と言うことである。そして、そのことを他人に悟られないように常に気にしていなければならない。その結果、集団主義的傾向があちこちで強まり、排除の論理が風を切って歩き出す。多様性認める精神の萌芽は望むべきもない風景だ。これでは国民に活力が沸く訳がない。つまり権力者は、国民は従順であれと願っているのだけである。これこそ 「マウンティング」志向の最たるものである。