今から60年近く前、マーシャル諸島ビキニ環礁で米国が行った水爆実験で、日本のマグロ漁船が被曝、乗組員一名が命を落とした「第五福竜丸事件」。その陰で、実は他にも数多くの漁船や貨物船が被曝していたこと、そして実験で大気中にばら撒かれた放射性物質が、海を越えて日本の全土にまで降り注いでいたこと…。長い間、まるで「なかったこと」であるかのように忘れ去られていたその事実を、丹念な聞き取り取材や調査を通じて掘り起こしたのが、3年前に公開された映画『放射線を浴びたX年後』でした。
マグロ漁船の甲板でキノコ雲を見たと語る元乗組員、漁師だった家族や親族が相次いで亡くなっていったという遺族の証言、そして調査から明らかになる、被害を「なかったこと」にしようとする日米両政府の姿――そこに映し出された内容は、あまりにも衝撃的でした。
その続編となる映画『放射線を浴びたX年後2』が公開されます。
今回、主人公となるのは、被曝したマグロ漁船の「地元」である高知県・室戸市出身の女性。マグロ漁師だった父親の死の真相を知るために、元乗組員や遺族たちへの聞き取りを続ける姿が描かれます。「酒の飲み過ぎで若死にした」と言われ続けてきた父。その命を縮めたものは、本当はなんだったのか──。
前作を見たときにも感じたことですが、これだけの大事件が、しかも報道規制があったわけでもないというのに、多くの人の脳裏から遠く消え去っていたことに驚かされます(映画の中でも映し出される当時の新聞には、「原爆マグロ」「雨に当たると被曝」といった見出しが堂々と掲載されています)。
日米両政府などが早期の「決着」を図ったことはもちろんですが、それだけではなく一般の人たちの間にも、「嫌なことは早く忘れたい」「なかったことにしたい」という思いがあったのではないか。そして、今の私たちの中にも、おそらくは同じ思いがある。福島第一原発事故から5年近くを経た今、強くそう感じます。
このままいけば数年後、あの事故は多くの人にとって「大変だったけれど、もう済んだこと」として、あるいは「福島県の一部だけでの問題」として記憶されることになってしまうのかもしれません(実際には、何一つ解決していないにもかかわらず)。そうならないために、そして再び同じようなことを起こさないために。かつて何があったのか、再度きちんと向き合っておきたいと思います。
この『放射線を浴びたX年後2』、11月21日(土)からポレポレ東中野で公開予定ですが、11月11日(水)に渋谷にて特別試写会が行われます。この試写会に、配給会社ウッキー・プロダクションより、マガジン9の読者・5組10名様を招待していただきましたので、ぜひふるってご応募ください。
(西村リユ)
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映画『放射線を浴びたX年後2』
特別試写会にペア5組10名様ご招待!
ドキュメンタリー映画『放射線を浴びたX年後2』の特別試写会に、配給会社ウッキー・プロダクションよりマガジン読者を抽選でご招待くださるそうです。件名を「11/11試写会応募(マガジン9)」とし、本文にお名前・人数・ご住所・年齢・職業・お電話番号・メールアドレスを明記の上、試写会招待係までメールで直接ご応募ください。
日時:11月11日(水)19:00開映(上映後、伊東英朗監督によるトークショーあり)
会場:渋谷・映画美学校試写室(東京都渋谷区円山町1-5)
ご応募締め切り:2015年11月8日(日)23:59
※当選発表は、11月9日(月)18時までに当選メールの送信をもって代えさせていただきます。
お問い合わせ先:ウッキー・プロダクション
TEL:03-5213-4933 Mail:yus@solid.ocn.ne.jp
(マガジン9では、試写会招待についてのお問い合わせを受け付けていません。ご了承ください)
【映画について】
父は なぜ死んだのか?
半世紀前の太平洋核実験 漁師たちが伝える無言のメッセージとは――?終戦直後の1946 年。太平洋上で、米国による核実験が始まった。しかし多くの漁船が、その後100回を超える実験期間中も、近海でいつも通り操業を続けていた―。闇に葬られたビキニ水爆実験の真相に迫る前作『放射線を浴びたX年後』から3年。高知県室戸市ほか各地での継続取材は、新たな展開を迎えていた。安全や核をめぐって国のあり方があらためて問われる今、かつて日本の繁栄を支えた海の男たちのメッセージに、地方TV局のディレクターが迫った渾身のシリーズ第二弾! (2015年/86分/監督:伊東英朗/製作著作:南海放送)
▼2015年11月21日(土)よりポレポレ東中野にて公開!
→映画『放射線を浴びたX年後2』公式サイト