2015年6月27日(土)
SEALDs(シールズ 自由と民主主義のための学生緊急行動)
「戦争法案に反対するハチ公前アピール街宣」
集会開始の15分前に、渋谷のハチ公前広場へ着いた。マスコミの取材用脚立が目立つし、記者やカメラマンがわさわさいるものの、「どこで集会をやるんだろう?」と思った。いつものような渋谷の雑踏。ネットで見たことのあるSEALDsのプラカードを持った青年に「どこで集会やるんですか?」と聞く。「そこに街宣車が停まります。こっちのエリアに入ってください」と教えてくれた。ほぼ一番前の位置をキープ。ほどなく、「WAR IS OVER if you want it」と書かれたブルーの布を張った街宣車がやってきた。16時すぎ、ついさっきまで隣にいた学生たちが車の上にいる。
学生たちのスピーチが始まる。ふと後ろを振り返ると、SEALDsのメンバーを見つめる多くの人と多くのプラカード。「戦争法案絶対反対」「Youth Against FASCISM」……群集がそこにいた。大学生もいる。でも中高年もいる。わりと秩序が保たれた〝大人な感じの群集〟がいた。いや、そうじゃなくて、そこに集まった人たちは彼らのパワーに身じろぎができなかったのかもしれない。
さて、その感想を書きます。
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私が強く感じたのは、彼らの言葉の力。デモでも国会前でも、以前のSASPL(SEALDsの前身)のときも、彼らがするスピーチはすばらしい。みんなスマホを見ながら話すんだよね。原稿はプリントアウトしない(今回は、一人の女の子が紙をもって読んでいましたが)。これは、「大人」にとってはショッキングな姿でした。
SEALDsは、コールやデモで流す音楽、パンフやポスターが確かにおしゃれ、今ふうです。デザインもいい。みんな男の子も女の子もかわいいし、ふつうの子にみえます。SNSの使い方も上手です。
でも、それより重要なのは、言葉です。スタイルじゃなくて、言葉です。彼らの話すスピード、口調、そして本音でストレートに訴えかける力。きちんと 勉強して、それについてどう思うか? 大人が心の中で、それはないだろう? と思っていることも、「それはないだろう?」と言えるその真摯さ。おかしいでしょ、と思っていることを、マイクを通して「おかしいでしょ!」と叫ぶ素直さ。
そのとおりだよ、そうだよ、と私たちに思わせるものがあるのです。文章もすごくきちんとしているし、そのうえ、彼らの日々の暮らしでの疑問がきちんと語られている(別コラムのアピールの文章をご覧ください)。
2週間前、国会前抗議活動のスピーチで「私はデートをキャンセルしてきた」と言っていたSEALDsの子。それを、ヒップホップミュージシャンのECDが聞いて、「衝撃的だった」とツイートしていました。それがよくわかります。あれは、人前で何か演説する口調ではないのです。ふつうの会話、それでも彼女が肌で感じたことを、一所懸命考えたことを「そうでしょ?」と語りかける。普段しゃべりです。なのに、いや、だからすごくよかった。彼女はちょっと特別ですが…。他の子たちはもう少しスピーチ口調です。ラップ調の子もいます。
で、ハチ公前に話をもどすと、それが、政治家という手慣れた人たちの言葉を対比することで、本当に見事にうきぼりになったのです。
SEALDsもどんどんスピーチ慣れしてきているとは思うのです。上手になってはいるのだけど、それは政治家とは違う。だから政治家の言葉がまったく心に響かないんですよね。 政治家で一番よかったのは、一番素人に近い社民党の八王子市議会議員でした。山本太郎さんもどんどん上手になっているけど、それが逆に、SEALDsに並ぶと、すごく手慣れた政治家の言葉に聞こえてしまうのです。
いっしょにいたマガ9スタッフと、SEALDsのスピーチを一番前で聞きながら泣きました。彼らのあのスピーチがあるかぎり、絶対この運動は広がっていくでしょう。聞く価値があるからです。
私は、この言葉の力に希望を見ます。
今回、SEALDsが戦争法案に反対する野党各党の政治家を呼んできて、菅直人さんや志位さんまでひっぱりだしたことはすごいことだと思います。だけど、(残念ながら)政治家はまったく魅力がなかった。うそっぽかった。
その一方で、政治家と関係を結べたことが、SEALDsを守ることになるのではないかと思います。政治家だけでなく、渋谷に集まった私たち一人ひとりが彼らと共に行動しなければ、彼らを守れない、民主主義を守れないのだと強く思います。ああ、だから、私の背後の〝大人な感じの群集〟たちは、身じろいでいたのでしょう。
関西、長野、札幌、滋賀、高知、そして沖縄。若者たちはいま、動き始めています。大人が身じろいでいてはいけないのです。
ここに、彼らのスピーチを採録することはしません。生で聞いてほしいから。彼らのそばで聞いてほしいから。ずっと国会前で立っているのは足腰にはつらいけど、デモで歩き続けるのもつらいけど、「本当に止める」まで私も頑張りたい。学生たちにあおられて、ちょっと青臭いことを書きます。
「路上にでて、言葉の力で民主主義を! This is what democracy looks like.」
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国会前での金曜夜の抗議行動に、「安全保障関連法案に反対する学者の会」と連携したことも、とても上手なやり方だと思います。名のある学者たちをも引っ張り出すことに成功しました。学者たちは、政治家よりも話に実があります。小林節さん、小森陽一さん、樋口陽一さんや山口二郎さんなどのスピーチは傾聴に値し、先生たちの熱さにも胸を打たれます。あそこで抗議行動の参加者として頭数になっていると一流の学者たちのスピーチが聞けますよ。ぜひ行ってみてください。
(気仙沼 椿)