「相手に断られることを恐れない人でした」
先日、昨年末に亡くなった大学時代の恩師を偲ぶ会をぼくたち教え子仲間が催したところ、奥様と娘さん、息子さんも参加してくださり、故人の話をいろいろ聞かせてもらいました。ちょっぴり泣いて、たくさん笑った夜でした。
冒頭の言葉は、宴もたけなわのころ、奥様が表した言葉です。
先生には多くの先輩・後輩を紹介していただきました。「君の先輩で変わったのがいてなあ」「面白いことやってるんだよ、その君の後輩は」と、たいてい変わり者か、面白いやつと引き合わせてくれる。
ぼくが20代半ばの勤め人だったころ、平日の深夜に電話で渋谷のスナックまで呼び出されたことがあります。出かけてみると、大学卒業後も演劇を続けるため雇われママをして生活費を捻出している先輩がいて、カウンター越しに芝居の話で明け方まで盛り上がりました。
先生はぼくら生徒によく「一人で考えるな、仲間をつくれ」と言い、専門のドイツ演劇、なかでも反ファシズムの劇作家であったベルトルト・ブレヒトの詩の次のような一節を引用しました。
「正しい道でも、君ひとりで行くな、ひとり離れていく道はもっとも正しくない道だ」
跳ねっ返りだった若き日のぼくは「付和雷同はまっぴら。自分一人でも行く気概がなくてどうする」と反発していましたが、あれから30年以上が経ち、その言葉の意味が理解できるようになった気がしています。
「互いの違いを強調するより、共通点を見つけて、それをもって連帯しようとしていた人でもありました」
これも奥様の言葉です。他人に拒絶されるのを恐れて、相手の懐に入っていこうとしない人が多いなか、先生は多くの人に、一緒に考え、行動しようと呼びかけました。
先生の紹介で知り合った先輩・後輩とは、いまもつながっています。生前「いつか恩返しを」と思っていましたが、途中であきらめました。もらったものの半分も返せないだろうから。
そこで発想を変えました。目上の先生にお礼を、とではなく、自分より下の世代のために、人と人をつなぐ役割を果たせないか、と。
マガ9が始まって10年が経ちました。ここも「変」だったり、「面白」かったり、いろいろな考えをもつ人たちの集まりです。けれども、「戦争はいやだ、殺し合いのない世界を」との一点で手をつなげたからこそ、やってこられた、しんどいときでもユーモアは忘れなかったからこそ、10年続けられた、と思うのです。
LOVE&PEACE!
11年目に入るいま、マガ9発足当初の気持ちを胸に抱き続けつつ、新しい仲間との出会いを楽しみにしています。
(芳地隆之)
「奥平康弘さんを悼む・樋口陽一」。新聞の掲載に次の一文があリました。「個にして弧ならず」。このような生き方ができたらいいだろうな~、と思っています。多様性を認め合って、障害者、健常者が共生できる社会を目指したい。その為には自らの考えをより一層発信していかなければならないと考えています。芳地隆之さんいつもありがとうございます。
「個にして弧ならず」。いい言葉ですね。個であれは連帯できる。島憲治さん、こちらこそ、いつもありがとうございます。