今回は、マガ9学生ボランティアのMがレポートを担当します。
9月19日、日本外国特派員協会において、徴兵を拒否してフランスに亡命した韓国人であるイ・イェダさんの記者会見が行われました。
記者会見には、イェダさんを日本へ呼んだ、マガ9でお馴染みの雨宮処凛さんと、反徴兵制・法改正運動に関わる安悪喜(アン・アナーキー)さんが同席しました(お二方とも20日に行われた第33回マガ9学校にもイェダさんと共に講師・ゲストとして参加されました)。
20歳の青年が、もう母国に戻ることはできず、家族や友達に会うことも難しくなると知りながら、「命を殺したくない」、「私たちには常に選択の自由と権利がある」という自らの信念を貫き、亡命を選んだということは、彼と同年代の私にとって大きな衝撃でした。記者会見においても、終始落ち着いた態度で話す様子を見ていて、彼の意志の強さや生き方が表れているように感じました。
韓国からの亡命が認められた人は他にもいるとのことですが、これまでのケースはすべて、宗教的な背景があったり、性的マイノリティであったりと、徴兵拒否の他にも複数の理由が絡んでいるもの。徴兵の拒否のみを理由に亡命が認められたのはイェダさんが初めてです。さらに、フランス政府が申請から一年という早さで難民認定を出したことは、韓国徴兵制の内包する問題の深刻さを物語っているように感じました。
軍隊内部における、いじめやそれに伴う自殺・事件。また、良心的兵役拒否者は社会のなかで犯罪者として扱われ、懲役を終えても差別に苦しむという韓国社会の現状。このような韓国徴兵制の問題はとても根深い問題です。
しかし、イェダさんの起こした行動はただ一人のプライドを守るだけでなく、確かに韓国社会へ響いています。実際に、イェダさんの亡命に関する情報がメディアで取り上げられ、記事を見た韓国の若者の中には亡命を考える人も出ているとのこと。前例ができたことで、徴兵制への不満や反対の声を挙げやすくなっていくのではと思います。
翻って、日本では集団的自衛権の行使容認が閣議決定されてから、将来的に徴兵制が敷かれる可能性があるのではと不安な声もあります。閣議決定前にデモや集会で反対の声を挙げる人々も大勢いましたが、政府は押しきってしまいました。政治に国民の声を反映させることは難しいという現実が突きつけられています。
それでも、国や政府が進めることを当たり前だと思ったり、どうせ変わらないと、声を挙げることを最初から諦めたりしてはいけない、ということを心に刻みたいと私は思います。それは、自由も幸せも、自らがその存在を知り・守り・主張しなければ、容易く手から離れ、奪われうるものだということを、イェダさんの生き方から学べたからです。(M)
自らの信念を貫き人類愛に満ちた韓国青年の剛毅な精神に感嘆する。「人が国家を形造り国民として団結するのは、人類として、人間として生きる為である。決して国民として生きる為でも何で見ない」と語った石橋湛山を彷彿させる。 そして、 韓国徴兵制の根深い問題がそのまま日本に上陸することは十分に想像できることだ。自民党日本国憲法改正草案にその下地がちりばめられているからだ。
前文3段 日本国民は、国と郷土を誇りと気概をもって自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家 族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
草案9条の3 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。
草案18条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。「政治的関係」が定めていないのだ。
これらの条文から徴兵制度を淡々と狙っていると見るのが素直であろう。