安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定を行う前日、6月30日。参議院議員会館にて開かれた、「国民安保法制懇」の緊急記者会見に行ってきました。
「立憲主義の破壊に抗う」ことを掲げて、憲法、国際法、安全保障などの分野の専門家、実務家らが設立した「国民安保法制懇」。この日の記者会見では、〈集団的自衛権の行使を認める閣議決定の断念を求める〉声明文が発表されるとともに、出席した法制懇メンバーらがそれぞれの観点から、憲法解釈の変更という手段で集団的自衛権の行使容認が進められようとしていることについて、反対の意を表明しました。
中でも、個人的に印象深かったのは、伊勢崎賢治さんの発言。シェラレオネやアフガニスタン、東ティモールなどで紛争後処理と平和構築にかかわり、国連PKO部隊を統括指揮した経験を持つ伊勢崎さんは、こう言い切りました。「安倍総理に、自衛隊の最高司令官を名乗る資格はありません」
なぜか。通常、PKOなどの活動に参加する軍隊は、軍事業務協定で現地の法律による訴追を免除されているため、現地で何らかのトラブルを起こした兵士は母国へ召還され、(多くの場合は現地法よりも厳しい)軍法で裁かれることになります。しかし、軍隊ではない自衛隊には軍法がなく、一般の刑法にもそれに準ずる定めはない。つまり、PKOなどに参加した自衛隊が現地で何らかのトラブルを起こしても、それを裁ける法律はこの世のどこにも存在しない、のだそうです。
「現地法でも軍法でも裁かれない、それで現地感情が収まるはずがありません。それでも、これまで自衛隊をPKOに送りながらなんとか問題が起きずに来たのは、ひとえに現地の自衛隊が最大限に配慮してトラブルを避けてきたからに過ぎないんです。まともな国なら、こんな無責任な軍隊の出し方は絶対にしない。それなのに、さらに集団的自衛権の行使を容認するという現政権は、何か起こったときの責任を自衛隊に押し付けたまま海外派遣を続けるつもりなのでしょうか」
数々の紛争地の過酷な現場で、自衛隊や他国の軍隊とともに活動してきた伊勢崎さんからの言葉。これは「だから軍法をつくるべき」だという、短絡的な話ではありません。伊勢崎さんはこれまでにも、憲法9条を持っている=海外での武力行使ができない日本は、やみくもに軍隊を送るのでなく、例えば非武装の停戦監視団に参加する、中立のイメージを利用して和平会議を設定するなど「平和の国ブランド」を生かした活動をすべきだ、と繰り返し指摘しています。
それでも、どうしても「軍隊を送る」ことが必要だと政権がいうのなら、自衛隊を軍法も持つ「軍」とするための憲法改正の是非を、国民の前で堂々と問わなくてはならないはず。それさえもせず、無責任に自衛隊派遣だけを続けようとする政府への、強い怒りが伝わってきました。
今週の「森永卓郎の戦争と平和講座」でも、集団的自衛権を行使した結果、自衛隊員が命を落とすだけではなく「殺す側」になる可能性が指摘されています。昨日から続く官邸前での抗議行動では、元自衛隊員という男性の「安倍首相は戦争する事がどういうことかわかっていない」という発言も聞かれたとのこと。最初に最前線に立つことになるだろう彼ら、彼女らのためにも、この状況を食い止めたい、と思います。(西村リユ)
自衛隊は海外では軍とみなされてます。
国内では隊。
今までは、まさに自衛隊の慎重な行動にて「法」を必要とする局面に至らなかった。
邦人救出でも何でも、今後、銃を持って海外に行くならば、
まず、自衛隊を軍とする憲法改正が必要でしょう。
それをはしょって派兵したら、相当にマズイ事態が起こります。